深夜、私は家の玄関のドアを叩く音に起こされた。眠い眼をこすりながら玄関に向かい、扉を開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。
黒縁の眼鏡をかけ、ポマードの匂いが漂う七三分けの男だった。
私は彼を見て、心の中で不快感を覚えた。
男は、厚生省から来たと名乗り、私が国民年金に加入していないことを指摘した。
私は当時大学生で、学生であれば支払わなくてもいいのではないかと反論したが、男は20歳を過ぎたら支払うべきだと主張した。
その圧迫感に耐えかねて、私はドアを閉め、男を追い返した。
しかし、その夜、私は通り魔に襲われ、金属バットで殴打された。
そのせいで、私は一生車椅子を手放すことができなくなった。
後日、重度障害者年金の手続きをしようとしたところ、国民年金に加入していなかったため、補償を受けられないと告げられた。
その時の担当者は、以前の厚生省の男だった。彼は冷笑するように言葉を投げかけ、私は彼のポマードの匂いを思い出した。
その匂いは、私を襲った犯人が使った金属バットからも感じられたのだった。
捜査官は、バットが近くの学校から盗まれたものだと言っていたが、学校の私物にしてはポマードの匂いが付いていることが不自然だった。
私は、その事実に気付き、厚生省の男が犯人だったのではないかと疑い始めた。
解説はこの下にあります。
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解説
この物語の核心は、主人公が受けた通り魔の襲撃と、その後の障害者年金の申請に関連する厚生省の男の行動にあります。
物語は、主人公が国民年金に加入していなかったために、障害者年金を受け取る権利を失ったことを描いています。
しかし、注目すべき点は、主人公を襲った通り魔の犯人が未だに捕まっておらず、唯一の手がかりである金属バットからポマードの匂いがしたことです。
この匂いは、主人公が以前出会った厚生省の男と同じものだった。これは偶然ではなく、厚生省の男が主人公を襲った犯人である可能性を示唆しています。
さらに、男が年金に関する事務を担当していたことから、彼が主人公に対する復讐の動機を持っていたとも考えられます。
主人公が国民年金に加入していなかったことで、男は主人公に経済的な打撃を与える機会を得たのです。この物語は、表面的な事件の背後に隠された深い陰謀と、それによる主人公の運命の変化を描いています。