短編 洒落にならない怖い話

雁姫様の鏡【ゆっくり朗読】2700

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昔修学旅行中に先生から聞いた話

653 本当にあった怖い名無し 2012/04/06(金) 10:03:27.63 ID:r4TyE58u0

先生が小学四年生まで住んでいた町はド田舎で、子供の遊び場と言ったら遊具のある近所のお宮だったそうだ。

そのお宮には元々祭られている神様とは別に雁姫様と言う幼い姫君が祭られていた。

雁姫とは、昔ある藩からある藩へ幼くして嫁いでくるはずだった姫なのだが、嫁ぐ道中で病により亡くなり、この地に葬られたらしい。

ところでこの土地の子供達の間では【雁姫様の鏡】と言う遊びが流行っていた。

内容は雁姫役の子供を中心に、数人で円を作り手を繋いで歌いながらぐるぐる回る、あわぶくたったにーたった……の様な遊び。

歌の歌詞は姫役と周りの子で、歌うパートが異なっていて、確かこんな感じだったと思う。

「一つお進みください雁姫様」

「ここはどこぞ?」

「ここは常世でございます」

「二つお進みください雁姫様」

「ここはどこぞ?」

「ここは浄玻璃鏡の間」

「三つお進みください雁姫様」

「ここはどこぞ?」

「ここは鳥辺野石灯籠」

「四つお進みください雁姫様」

「ここはどこぞ?」

「ここはうつし世鳥居の間」

そう歌い終わると姫役の子は十二を数えその間に他の子は逃げたり隠れたり。

まあ一種の鬼ごっこだわな。

で、その遊びには一つルールがあってお盆と姫の命日にはやってはいけなかった。

でもお盆はともかく姫の命日が二月とか十二月とか曖昧で命日はあまり気にせず皆遊んでいたそうです。

その日は冬とは言えぬ程暖かい日で、先生は友人達とお宮の境内で駄菓子をつつきながら漫画の回し読みをしていました。

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暫くして駄菓子も無くなり漫画にも飽き、先生達は【雁姫様の鏡】をして遊び始た。

一度目は友人アキラが鬼(姫)、次はヒロキ、次は先生と何事も無くいつものように楽しく遊びは進められて行ったのですが異変はケンタが姫役になった時に起きました。

ケンタが十二を数えている内に先生とヒロキは一緒にお宮の階段の裏側に素早く潜り込んで息を潜めていました。

その間アキラをケンタが追いかけているのを見て二人してほくそえんでいたそうです。

暫くするとアキラとケンタはお宮の裏側へ消えていきました。始終アキラとケンタの楽しそうな悲鳴が聞こえます。

どれ位そうしていたでしょうか?先生とヒロキはいつまで経ってもケンタが見つけに来ないので痺れを切らし外へ出ました。

もう賑やかで楽しそうなアキラとケンタの声が聞こえません。

先生はさては二人して先に帰ったなと思ったそうですがそうではありませんでした。

突然後方からヒロキの耳を劈くような悲鳴が聞こえました。先生は急いでヒロキの元へ駆けつけました。

そこではケンタが蹲って何やらぶつぶつ喋っています。

先生はどうしたのかとケンタの肩に手を置くとその瞬間ケンタがもの凄い勢いで振り返り、先生を突き飛ばしました。

振り向いたケンタを見て先生は絶句しました。ケンタの顔が歪んでいる……

いいやあれはもう一つの顔が重なっているような異様な顔。

次の瞬間ヒロキが大声で「逃げろ!」と叫びその声で正気を取り戻した先生はヒロキと共に全力疾走で近所の民家まで逃げたそうです。

さてその後なんですが先生とヒロキは逃げ込んだ民家から家に連絡して親に向かえに来てもらい、事の一部始終を話したのですが全く信じて貰えなかったようです。

それもこれもその後アキラとケンタは何事も無かったように其々の家に帰宅し後日二人して先生とヒロキの家を訪ね

「何で先にかえっちゃうんだよ心配したんだぜ」といつもの元気な姿を見せたからでした。

その後先生は東京に引越し、何時しかその地域の子供達とも疎遠となったのですが、先生は今でもはっきりとケンタの歪んだ顔とつぶやいていた言葉が忘れられないそうです。

さぶらいびと……うしろみたち我も共に……はかなくともてなされしに……

(了)

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