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会うと良くないことが起きる…【ゆっくり朗読】3431

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彼女とデートの日、待ち合わせ場所へ向かう途中、携帯が鳴った。

彼女からだった。

「今日は行けない」と言う。

「もう会わない方がいい」と言う。

理由を訊いたが答えない。

しつこく訊くと、「会うと良くないことが起きる」と言う。

「私は生きてちゃいけないの」と言う。

納得できなかった俺は、「会おうよ」とごねた。

「死んじゃうかもしれないんだよ」と彼女が言った。

「死んでもいいから会ってよ」と俺は言った。

ここで引き下がって、納得できないまま生きるのは耐えられないと思ったから。

慌てた感じで彼女が、「そんなこと言っちゃだめだよ!」と言った。

「本当に死んじゃうんだよ!」って。

三十分ほどやりとりの後、彼女が折れた。

来てくれることになった。

しばらくして、また携帯が鳴った。

「やっぱり行けない」と言う。

「今、どこにいるの?」

「東京駅」

「じゃあ、あとは乗りかえるだけじゃん」

「できないの」

「ハァ? 何で?」

「悪い人が中に入って邪魔するの」

理解できなかった。

俺に会いたくなくて、そんなことを言ってるのかな、とも思った。

「じゃあ、そこにいて。俺がそっちに行くから」

「来ない方がいいよ」

「そこにいて。すぐ行くから」

俺は改札を抜けて、登り電車に乗った。

東京駅に着いた俺は、彼女に電話をかけた。

「着いた。今どこ?」

「○○って喫茶店の前」と駅構内の店名を言った。

「わかった。すぐ行く」と答えて、俺は走った。

見なれた店の前に彼女がいた。

ほっとした。

なんか悲しそうに、「何で来ちゃったの?」と言われた。

「会いたかったから」と答えた。

彼女が笑った。

その店に入りコーヒーを飲みながら話した。

彼女は妙に周囲を気にしていた。

しばらくして、彼女の携帯が鳴った。

中学の友達からだった。

数年ぶりの連絡だという。

三人で一緒にゴハンでも食べようということになった。

有楽町で待ち合わせ、食事をした。

その友達曰く

「なんとなく久しぶりに会ってみたくなった」

とのことだった。

食事を終え、三人でぶらぶらした。

彼女はときどき周囲を気にしていた。

さほど遅くならない内に、別れて帰途についた。

別れ際、彼女が俺の手を握って、「気をつけてね」と言った。

「よくないことがあるかもしれないから」って。

俺は本気にしなかった。

六日後、彼女が死んだ。

事故だった。

もし、彼女が言っていたことが事実だったのなら、俺が殺したようなものかな。

俺が殺したのかな、と思った。

確かに、よくないことが起きた。

俺自身が死ぬよりも、よくないことだった。

(了)

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