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短編 集落・田舎の怖い話

一座様(いちざさま)【ゆっくり朗読】3100

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今月のゴールデンウィークに田舎へ二年ぶりに帰ったんだ。

641 本当にあった怖い名無し 2012/05/09(水) 18:29:51.19 ID:FyNX6icV0

どれくらい田舎って、自販機までバイクでも十五分かかるようなド田舎。

外灯さえない。月明かりで十分歩けるんだ。

で、三日のゴールデンウィーク初日。朝一で田舎に着いた。

ド田舎だから他所の車で他者ってわかるんだよね。

で、近所のおばさんやらおじさんに挨拶しながら家で飯を食べた。

久しぶりに帰ってきた安心感からか酒が進んだ。

一服しようと外に出てタバコふかしてると離れた所から、笛……というか仏壇の鐘の音を加工したようなお囃子みたいなものが聞こえてきた。

「お!祭りか!」とボーっと聞いてたら、一人、山の方へフラフラ?というかリズムに乗って歩いてるのが見えた。

あんだけ浮かれてお祭りとかオレみたいな酔っ払いどーしようもねぇ、って思いながら部屋に帰って寝てしまった。

かなり寝たのかな?座敷で寝てて背中いてぇ……って起きたら親父とおかんがバタバタ騒がしいのよ。

「何?」って聞いたらおかんが

「ヨシオ君がいなくなったんだって!川か、山に入ったかもしれないから大変なのよ!」

ってヨシオ君の家に大急ぎで行った。

親父も「消防団の人と協力してさがさにゃあ……お前も酔いが覚めてるんならこい!」と強引に家から出された。

てか酒残ってるんですけど。

ヨシオ君は二軒隣の家に住んでる子で今年二十八歳になった男の子。

物心ついた時は「気持ちの悪い野郎だな……」くらいにしか思わなくて大して付き合いもなかった。

学校でも会わなかったし。

今思えば発達障害か何かで特別学級に行ってた子だった。

いつも意味なく「キヒヒぃ!」と笑ってた。

たまにご近所挨拶の時に話しかける程度だったが……

よくポケットからパインの飴玉を出してくれたのは覚えてる。

ヨシオ君の家に行くと両親がアタフタしてた。

何でも一家の裏で一緒に山菜取りしてて目を離した隙にいなくなったそうだ。

オレも酔ってたからとはいえ、山に誰か入っていくのをみたからもしかして……と伝えた。

警察と消防に電話しようとしてもなぜか頑なに拒否。

まぁ迷惑がかかるって思ったんだろうね。

ともかく、消防団と自分らで裏の山に入ることになった。

一時間探して駄目だったら警察と消防に電話する事になった。

この時昼のニ時だったかなぁ、一時間、必死に山の中をみんなで大声だして探したけど勿論見つかるわけもない。

山って言ってもそんなにデカイ山じゃないし、ヨシオ君も事故に合ってないなら大騒ぎするから分かりそうなもんだがなぁ……

って思ってると消防団の人が

「駄目だ!警察に連絡しよう!益田君!電話してくれるか?」

ですよねー!と思ってポケットを探ったけど携帯置いてきたし。

そういやぁ落としたら今夜、スマホで色具チャンネル見れねぇしって置いてきたんだった。

携帯ないですって言いかけた時、三〇メートル先くらいから「おったぞぉ!!」って声がした。

みんな急いで行くとヨシオ君が猫のようにうずくまってて寝てた。

やれやれ……両親もみんなも安心して家に連れて帰ったんだ。

で、ヨシオ君のお母さんから

「益田君、ありがとうね。もうひとつお願いがあって……ヨシオ君、ドロだらけでお風呂入れてあげてくれないかな?益田君介護の仕事してるんだよね?」

そーです。オレ介護の仕事してます。

断る事もできずにヨシオ君をお風呂に入れてあげた。

というか一緒に入ったんだが……

マジでビビッた。

ヨシオ君の太ももの内側にマーク、というか絵が描いてある。

書いてあるというかヨシオ君が木の枝かなんかでガリガリ書いて傷になってた。

何これ超怖い……

ビビッて、ヨシオ君がやったの?と聞くと

「僕じゃない。知らない。テレビみたい」の一点張り。

張り倒してやろうかと一瞬思った。

一応、ヨシオ君のおかあさんに伝えて風呂から上がった。

途中、ヨシオ君のお父さんから

「ヨシオ君が山に行くときどんな感じだった?」と聞かれて

「酔ってたからよくワカランですけど踊ってるような?感じでしたよ。笛っつーか鐘の音みたいなのも聞こえてたし……祭りと間違えたんですかねぇ……」

と、ふとお父さんの顔見たら目を少し見開いた感じで「そうか」と一言。

どうしたんです?って聞いたら「いいから帰りなさい!」って軽く怒鳴られた。

クソおやじめ。張り倒すぞ?

イライラしたのと疲れ、ヨシオ君のせいで休みつぶれたという残念さからまた酒を煽って寝た。

翌日、仕事があったので朝一で帰宅した。

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で、その次の日の夕方、仕事終わってコンビニで立ち読みしてたらおかんから電話。

「ヨシオ君、今日事故で亡くなったよ」

マジか!! 一瞬、信じられなかった。

ガチでショックだった。人間って簡単に死ぬんだなと……

話によると両親が例の山に入った事がきっかけで、施設へ入れようという事になって施設に相談に行く途中、走行中にヨシオ君がドアを開けて電柱にぶつかって……という事だった。

しかもチャイルドロックしてたはずなのにその時に限って外れてたそうだ。

無論、通夜にはいけなかったが葬式に出た。

葬式は淡々と終わってお弁当を食べている時、ヨシオ君のおかあさんが挨拶にきた。

神妙に礼をして弁当のから揚げを食べようと箸を持った瞬間、ヨシオ君のおかあさんが

「益田君、ちょっと……いい?」と声をかけてきた。

思わず「俺じゃないっすよ!」と言いかけたわ。

おかあさんが

「あの、ヨシオくんなんだけどね……太ももの傷、お風呂入ってるとき掻いてた?」

と聞いてきた

「いや、かいてないと思いますよ?痛そうだったし……」と言うと

「そう……ヨシオ君ね、病院で見たとき、掻きむしってて……変なマークも掻き毟った傷で分からなくなるくらい……」

そういうとウッウウ……と泣き始めた。

オレのおかんがやさしく肩を抱いていた。

ちょっと泣きそうになった。

そんな俺にヨシオ君のお父さんとおばぁちゃんが近づいてきて

「益田君、ちょっといいか?」と式場の外に連れて行かれた。

あまりの気迫にシバかれると思った。

お父さんは

「単刀直入に言うが……お前、山から笛が聞こえてきたって確かか?」

と真面目に聞いてきた。

「多分、聞こえたと思いますよ。鐘の音っぽいのも……」

というか早いかおばぁちゃんが突然手を握ってきた。

ばぁちゃん、ビビったじゃねぇか……

そして小さい布袋をオレの手の中に握りこんでいた。

「何すかコレ?」と聞き返すとお父さんは

「よく聞けよ、これから三年、山に入るな。どんな小さな山でも。あと、神社も駄目だ」
オレは意味が分からなかったので何かあるんですか?とビビりながら聞いた。

話はこうだ。

オレの田舎の周辺の山には《一座様(イチザさま)》というモノノケのたぐいがいて、季節の変わり目になると人を招き入れて山に還すとの事。

それは「実体」がなくて今まで誰も見た事がない。

でも、あらゆる方法で山に引き込むそうだ。

縁のある人間を引き込むためにわざわざ身内を引き込んだり、恋人を引き込んだり……

決まって《お囃子のような音》が聞こえるそうで、縁がある人間には聞こえるそうだ……

でも一応、助かる方法としてその音の聞こえた近くの神社の水を飲み、その山で死んだ獣の骨、土、少量の糞、枯れ木を燃やした灰を、その山で取った小石と一緒にいれて肌身離さず三年持つ。

三年後、その山に埋めると助かるそうだ……

おばぁちゃんはなぜかそのヨシオ君の入った山で取れた物でお守りを作っていた。

どうやらヨシオ君がそううい事にならないようにいくつか作っていたそうだ。

実際、ヨシオ君は今年の初めから山から音が鳴ると言っては、外に出ようと両親を困らせたそうだ。

お守りも「肌身離さず」というのがヨシオ君には無理だったらしい……

話を聞いて「どんだけオカルトなんだよ」と鼻で笑ったが、鳥肌が止まらなかったのも事実。

ヨシオ君のおかあさんはそういうオカルトの類は大嫌いなんだとか。

なんでも昔、ヨシオ君がおかしくなったのは霊の仕業と言われて、お金をかなり巻き上げられた事を悔やんでるらしい。

そんな事がこのGWに起こった出来事だ。

お守りは首から下げて持ってるが、三年はキツイな……

でも夜寝る時、あの鐘の音が頭から離れないからマジで怖い。

(了)

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