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短編 山にまつわる怖い話

廃墟・弥彦山気象観測所(新潟県)【ゆっくり朗読】3100

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仲間が免許を取ったということで、地元だと結構有名な心霊スポットの旧・弥彦山気象観測所に行ってみることにした。


弥彦山気象レーダー観測所

先輩の話によると、施設自体は二階のそこそこ大きな建物で、一階の一部が土砂崩れかなんかで埋まっていた。

外装は白なのに内部は真っ黒になっていて、二階一番奥のフロアの天井に何かの器具をぶら下げるような大きなフックがあるらしい。

このフックの話は俺が言うまでもなく地元だと有名だけど、首吊りに何度も使用されているらしい。

俺も一度だけ新聞で見たことがあって、確か女の人がここで自殺をしたという記事を見た記憶がある。

またその施設の近くには観測用に使われていた大きな鉄塔がある。

鉄塔の直ぐ下は五〇から六〇メートルはある崖で、ここから飛び降りると下の山の森で、死体なんてほぼ上がってこないのは有名な話らしい。

まぁ前置きはそんなところで、実際こういう話が本当なのかと仲間四人と行ってみた。

場所は先輩から聞いているし問題はなかった。

が、行った早々トラブル発生。

旧・気象観測所は山の奥にある施設なので、どうしても弥彦山の山道を通らなくてはならないのだが、この道は冬の間は封鎖されていたのである。

ご丁寧にも工事現場に置いてあるような進入禁止のバリケードも置いてあった。

仕方がないので俺達はそのバリケードをずらして、車一台が通れるくらいの幅を開けて無理矢理進んでいった。

バリケード付近までは民家も若干あり明かりがあって心強いことだったが、バリケード以後は明かりは全くのゼロで、車のライトを消したら真っ暗な状態となる。

おまけに両脇には木が密集していて、本当の山道に入ってきたことが分かる。

進むにつれて明かりは車のライトのみの状況は変わらず、木の量だけはどんどん増えていった。殆ど両脇が木。

そして山道ということもあってか、結構急カーブとかが激しくて運転している仲間は初めてのドライブで随分ビビっていた様に思えた。

この状態で進みながらしばらく経つと、道が分岐している所に出た。

ここが目印で、この辺りに旧・気象観測所の施設は有るらしい。

路肩に車を止めて下り、懐中電灯を辺りに向けるとそいつあった。

施設に着くにはちょっとした山を登らなくてはならない。

またこの施設の左側に例の鉄塔も建っていた。

とりあえず俺達はこの「ちょっとした山」を登り始めた。

木々が進行方向に生えているので、小さい木は倒したり、大きい木は避けて登っていった。

すると仲間の一人が、「あぶねー!」と大きい声で叫んだ。

俺は突然の声に驚いたが、よく足下を見てみると……とりあえず、下は崖でした。

木が本当にいっぱい生えていて全く先が見えないのでマジでビビった。

と言うか、この施設は山の切り崩しの上にあるようで、周りは全部崖です。土砂崩れでも有ったのか?

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こんな状況を繰り返しながら、何とか登り切った。

目の前には例の施設がある。

施設は草のツタが窓、壁からグルグル覆っていて、さながらバイオハザードの館みたいな強烈なイメージがあり、土砂崩れの影響か土が二階まで達していて玄関と思われる物だけが一階部分として姿を見せていた。

まぁ二階からも入れるようだけど、やっぱり一階から進みたいとみんなで決めて、ツタが絡まっている玄関のガラスがないドアを開けて入った。

入って早々、凄い嫌な感じがした。それに変な臭いがする。

……と思ったら、入って直ぐにぼっとん便所があった。

これですな、臭いの正体は。

トイレは男子用の便器が四つ、大便用のトイレが二つありかなりの荒れ具合だった。

トイレの隣は結構大きな20畳くらいのフロアがあり、何もなかった。

唯一、フロアにはドアがあったが、土砂崩れの影響かドアが全く開かないので無視。

また床がこれも土砂崩れの影響なのか、盛り上がっていたり陥没していたりして、とても真っ直ぐは進めない。

続いて玄関まで戻り、二階へ上がる階段を登った。

折り返しの階段となっており、登り切ると宿直室と思われる二段ベットが一つほど置いてあった。

他の部屋はコンクリートむき出しだったのに、この部屋だけは床が木だった。

更に前に進む。

が、この二階は一階よりも床の状態が悪く、進むのはとても困難だ。

床の状態が平らなコンクリートを選んで進む事になる。

大きなフロアを通過中、先ほどの臭いが段々酷くなってきた。

つーか、なんだこの臭い……あまりの臭いの強烈さに頭痛と吐き気がしてくる。

便所の臭いじゃなかったのか?

もう今までに体験したことのない「臭い」というより「悪臭」に鼻がどうにかなりそうだ。

そして、いよいよフックが天井にあって首吊り自殺が頻繁にあると有名の部屋へ。

あー分かった。つーか、臭いの正体。

だってさ、人死んでんじゃん。

白色のダウンジャケットなんて着てるから黄ばみって言うか、何かヘンテコなのしみ出ているから白って言うかクリーム色って言うか、ある種、迷彩服じゃん。

それにさ、ブラブラしている下には何か変なのあるし。

足から汁みたいなの滴ってるし。

髪の毛長いって事は女の人?

顔見たいけど垂れ下がっててサッパリわかんねーよ。

人間て、こんなにクビ長いっけか?

つーか、懐中電灯持ってる自分もそろそろ手震えているし。そろそろ引き上げ時か?

……と、冷静ではいられず、大声で叫びながら本気で逃げた。

崖とかも気にせず、ほんとは鉄塔の方も見たかったけど、そんな余裕無しでした。

本気で逃げると、もうみんな車の中でガタガタ震えていた。

今まで本物死体なんて見たこと無かったから、多分俺は本気で震えていたと思う。

急いで車を飛ばしてそこらの警察に行きたかったけど、地理感覚がないので地元まで帰って地元の警察に事情を説明した。

なんか色々聞かれて、バリケードの事とかコッテリ怒られた。

結局帰宅したのは午前四時半頃。

家に着いてシャワーを浴びたが、どうもあの臭いが鼻から取れなくて何度も自分の体を洗った。

でも臭いはまだ鼻に残っている。

臭いと共にあの女の人がぶら下がっている情景が出てきて、酒に酔ってもいないのに吐いた。

529 名前:あなたのうしろに名無しさんが:2001/04/26(木) 16:51

(了)

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