部落ではないのだが排他的な地域で、回りの地域から少し恐れられてる村の話。
その村の奇妙な印象と独自の宗教感を話す。
俺の母方の血筋はちょっと変なんだ。
今から話す話は、恐怖体験したというより数年に渡って母方の血筋の実家に通った時に感じた奇妙な印象を書こうと思う。
これは俺の祖母の母親の法事でその地域に行った時の印象。
そこは漁村で三方を山に囲まれた小さな集落。
人口は二〇〇人ちょいぐらいだったと思う。
となり町まで車で20分ぐらいかかって、ちょうど陸の孤島の印象があった。
十歳、一二歳、一五歳の三回ほどそこに通ったことになる。
ここで感じた変な印象というのはまず住民の視線だ。
普段は何ともないんだがじっと見つめられると、なぜだか恐怖を感じてくるんだ。
ヘビに睨まれたカエルの気分になる。
それが小さい子供でもそうなんだ。うまくいえないが、いたたまれなくなる感じだった。
この地域は女性の人口が多い、女の子が生まれる割合が多いようだ。
それとこの地域の女性は総じて容姿が良い。ブスな女性が全くいないのだ。
ずば抜けて美人が多い訳ではないがとにかくブスがいない地域。
そのため婿養子を取る家庭が多いみたいだった。本家筋にあたる家はとくにね。
この地域の職業は主に漁業だ。
それで地域で独自の「海神」を祀ってあった。
二十人ほど入れる感じの建物の奥に祀られていた。
数年に一度ご神体のご開帳があって自分も1度だけ見た。
高さ三十糎ぐらいの三角形のような石。
色は濃い緑で翡翠のような感じだったが、正直綺麗な色合いではないものだったよ。
この海神様も独特なもので竜神や神道系も神ではないらしい。
遠くの海からこの地域にやってきたそうで、その姿も決まった姿がないと、しいて言えば軟体動物のような姿らしい。
時に人の姿に変化することもあるそうだが海神様の本当の姿は不定形な姿なんだそうだ。
また海神様のお世話をする家が持ち回りで五家が決まっていて、実をいうと祖母の血筋の家系が五家のひとつに当たる。
五家が十年ほど持ち回りで神官を務めるみたいだ。
葬式なんかは一度、隣町の寺の坊さんを呼んで対面上葬式をあげるが法事などは五家の一家が行なっていた。
五家は仏教でも神道でもないようなので、葬式のときだけはよそから坊さんを借りているんだと思う。
ただ坊さんが帰ったあとは五家の神官が独自の葬式を取り仕切っていた。
聞いたことないような呪文とか儀式。
印象としては神道に近い感じだが我々が普段目にするような神道の儀式とは明らかに違った。
海神様のお祭りかただが江戸の中ごろまでは生きた人間を生贄として海へ投げ込んでいたそうだ。
それをやめるようになってから数年に一度、行方不明者や事故死者が出るようになっている。
たしかにこの村は今でも行方不明者や事故死者の比率が多い。海神が生贄を欲して奪っているのかもしれない。
五家についてもう少し語ろうかと思う。俺自信の血筋にも……
五家はこの漁村の有力者であり、持ち回りで海神様の神官を務める家柄。
この漁村の村長は五家の血筋のものが必ずなるみたい。本家、分家関わらずね。
ただお約束事があって持ち回りで神官を務めてる時期の家からは村長を出してはいけないことになってるらしい。
神官を務める五家は海神様との約束で必ず繁栄する。
村の人間は五家の人間に逆らえない。
けど五家の人間の横暴がひどくなったり血筋の者が繁栄しても海神様に寄進を怠ったりすると海神様の怒りで一族もろとも死に絶えるみたいだ。
海神様が一度怒ると怒りを静めさせるの困難らしい。
今の五家も全部が全部ずっと続いてきてる訳ではなく滅んだ家系のかわりに新たな家系が加わったりしている。
一家が滅ぶと海神様のお告げで新たな一家が選ばれるらしい。
この地域の人間は物凄く感が鋭い。中には霊感みたいなものが鋭い人も結構いる。
その中で力が強い家が五家に選ばれてきてるんだと思う。
感が鋭い人間が多いのはこの村は何世代も閉鎖的だったため、実質村全体が親戚同士のような血が濃い状態なためだと思う。
俺や母が、親戚の人に聞いた。
実は今の家系で霊的な問題を何十年も抱えてて、それで自分たちルーツを理解したかったのもある。
住みたいとは思わない。
三度足を運んだが根本的な嫌悪感をあの地域に感じる。
親戚などはよくしてくれるのだが体があの村を拒否している感じだ。
とくに海神様が受け付けない。
個人的には神ではなく魔物の類ではないのかと思っている。
(了)