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短編 ほんのり怖い話 n+

★黒い電車の夢

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これは、中学時代の同級生から聞いた話。

彼が親友Aと喧嘩別れしたまま、その親友が亡くなったという悲劇的な出来事が始まりだった。彼の後悔は深く、日々その思いに苛まれていた。数日後、奇妙な夢を見たのだ。

夢の中で、彼は学園内を同級生たちと「Aがいない」と探し回っていた。同級生たちとすれ違う度に「いた?」「いない」「そっちは?」「こっちもダメ」「どこ行ったんだ?」といった会話が交わされる。夢はまるで現実のように鮮明で、10年経った今でもそのメンバーは誰か覚えているほどだった。

やがて同級生たちは、「もうAはいないよ」「もうダメだ」「見つからないよ」と諦めの言葉を口にし始め、「帰ろう」「仕方ないよ」と次々に帰り始めた。しかし、彼は「私だけでもAを探す!」と決意を示した。

その瞬間、夢は色を失い、白黒映画のような世界へと変わった。彼は大きな駅のホームに一人立っていた。その駅は、彼が通っていた学園の最寄り駅に似ていた。ぼんやりと懐かしさを感じていると、真っ黒な電車が音もなくホームに入ってきた。その電車は吸い込まれそうなほど黒く、艶なしアイアンのような質感だった。

何故だか分からないが、その電車に乗れば「Aが見つかる」と強く確信した。電車からは大勢の人々が降りてきて、人波に飲まれそうになりながらも、彼はドア付近までたどり着いた。乗ろうとしたその時、どこからともなく「え、B?なんでここにいるの?」という声がした。驚いた彼が振り向くと、そこにはAがいた。

「A!居た!良かった、探してたんだよ!」と叫びながら、彼はAの手を取った。Aは無言で彼を人がいないホームの端まで引っ張っていった。そして「何でBがここにいるの?」と強く問いかけた。

「探しに来たんだよ、みんなも探してる。帰ろう?」と彼はAの細い手を握り返した。しかし、Aは「帰れないよ」と呟いた。「何言ってんだ、ほら帰ろう!」と宥めるように言う彼に、Aは涙を流しながら「ごめん、帰れないんだ」と言った。

その瞬間、彼はふと「あ、そうだ、Aは死んだんだった」と思い出し、目が覚めた。

夢占いで『電車』『ホーム』『学校』『親友』の意味を調べたが、しっくりこなかった。ネットで「夢 電車 意味」を検索すると、「夢の中に出てくる黒色の乗り物に乗ると連れて逝かれる」というページに行き着いた。その説明が一番納得できたのだ。

しばらくして祖母が亡くなった。伯母が「夢で亡くなったおじいちゃんが出てきて、おばあちゃんとドライブしていた」と言った数日後、祖母は息を引き取った。

さらに数年が経ち、久しぶりに同級生のCと会った時、Cも同じ夢を見たと言った。カラーシーンでの夢の話をすると、Cもその場面を覚えていた。「Bちゃんもその辺りにいたよね?」と、夢の中の彼の位置まで覚えていたのだ。

夢の中で何かに乗る際は、色を確認しようという結論に至った。助けてくれた親友に感謝しつつ、彼はこれからもその教訓を胸に生きていくという。

これは、そんな奇妙で恐ろしい夢の話だ。

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