友人を通じて知り合ったミカさんというスピリチュアル好きの女性がいる。
93 ：怖いお話ネット：2024年6月10日(月) 14:45 ID:4B8h7J2L
ミカさんの話は常に現実離れしていて、その主張は驚くほどぶっ飛んでいる。たとえば『地球は平面』だというのだ。
地球は球体だと教えられてきた僕にとって、その発想は新鮮で、まるで脳みそをかき混ぜられるような刺激を感じた。彼女の話を聞いていると、その奇抜さに飽きることはなかった。
しかし、しばらくして僕はミカさんに対して微かな不快感を覚えるようになった。
彼女は僕の言ったことを全く覚えていないのだ。１時間前、いや数分前の話すらも忘れてしまっているようだった。
最初は、ミカさんが自分の話に夢中で、こちらの話を聞いていないのだと思っていた。
そう考えると少し気が楽になったのだが、真相は全く異なっていた。
最近になって分かったことだが、ミカさんは『感受阻害症候群』という難病にかかっていたのだ。
この病気は、五官から入力された刺激が脳に記憶として定着しないという奇病である。
そのため、ミカさんは他人の話を覚えることができないのだ。
この事実を知った時、僕は彼女に対する見方が一変した。彼女はただ自分の話に夢中なわけではなく、自分の意思とは無関係に、他人の言葉が彼女の記憶に留まることができないのだ。
この病気のために、彼女はいつも自分だけの世界に閉じ込められているのだと理解した時、彼女に対する同情と理解が芽生えた。
だが、それでも彼女の奇抜な話を聞くたびに感じる脳の刺激は変わらない。
それはまるで、スピリチュアルな世界と現実の狭間で揺れ動く不思議な感覚だった。
