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短編 山にまつわる怖い話

コダマ【ゆっくり朗読】2600

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昔、山で仕事をしてた時のこと。

692 :コピペでおま:03/11/19 13:18

仕事を終えて作業道を歩いて下っていたら、上の方で妙な声がした。

「ホゥ」とか、「ウォ」みたいに聞こえるんだけど、呼ぶ時にそんな声(山でよく通る声)を出す人もいるから、誰かいるのかな?と思って上を見たら、尾根の方に小さな人影が見えた。

逆光でシルエットしか見えないんだけど、こっちを見てる様子。

俺も「オオゥ」みたいな声で答えたんだけど、じっと動かない。

と思ったら、こっちに手を振ってジャンプし始めた。

ワケわからんしこっちも疲れてたから、「降りるぞー」ってそのまま林道へ降りた。

先に降りてたおっさんが、「誰かいたのか?」と聞くので説明すると、ちょっと嫌な顔をした。

「コダマかも知れん」と言う。

「何それ?」と問うと、

「人に化けて悪さをする。昔は『コダマを見たら、その日は家に帰って一歩も外へ出るな』って言われてた。

夜中に呼ばれたり、戸を叩かれても、絶対返事をしてはいけない。今はそんなことないかもしれないが…」

おっさんは、ひとしきりそんなことを言った後、
「念のため、今晩はお前も外へ出ない方がいいぞ」

俺はその頃、駅そばの飲み屋へ毎晩のように通っていたけれど、やっぱり気になって、その夜はおとなしく家に居た。

が、別に名前を呼ばれたり、戸を叩かれたりはしなかった。

次の日の朝、仕事の続きをしに作業道の入口までくると、おっさんが先に来ていた。

いつもは先に来て、さっさと足拵えを済まし、火を焚いて待っているのに、なぜか軽トラの中でタバコを吸っている。

俺が近づくと降りてきて、作業道の入口を指差した。

ウサギ2匹と鹿の死体が、重なって置かれていた。

内臓が抜かれている。一目見て吐きそうになった。

「今日は山へ入らない方がいい」

そう言われたが、俺も仕事をする気にならなかったので、これ幸いと引き返した。

その後も、その山の仕事を続ける気にならなかったので、おっさんに頼み込んで、他の仕事師に代わってもらった。

おかげで年末にかけて金が足らなくなり、飲み屋に行く回数も減ったけれど、

おっさんから、「代わりの仕事師が大けがをした」という話を聞いて本気でゾッとした。

何かに気をとられていて、倒れてくる木の下敷きになったらしい。

もしかして、『コダマ』に呼ばれたのか?

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