短編 工事現場の怖い話

死に仏

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俺は小さい建設会社に勤務してるんだが、その現場で体験した怖い話。

209: 本当にあった怖い名無し 2016/05/16(月) 21:48:26.80 ID:dL1QaBqy0.net

一昨年、地元の小山を造成して団地にすることになって、鉄塔立てる基礎工事を頼まれたんだよ。

これ、鉄塔自体は電力会社の下請けが立てるんで、うちがやるのは車通れる道をつくるのと、鉄塔の土台だけ。

難しい仕事じゃないんで、トントン進んで三つ目の土台にとりかかったときだ。

木を伐って斜面を平らにし、コンクリ打つんだが、重機が変なものを掘り出したんだよ。

それが仏像だったんだよな。

一木造り(いちぼくづくり)っていうのか、丸太を粗く彫ったものだった。

監督が「ああ、まずいなあ。遺跡じゃねえだろうな」って言ったが、その仏像は古いものには見えなかった。

造りは完全に素人仕事だったし、長年埋もれてた木とも思えなかったんだよ。

ともかく運び出そうとして、傷つけるとマズいかと思って人の手で持ち上げた。

そしたらすげえ軽かったんだ。中が空洞になってたんだよ。

その仏像の両目が穴になって突き抜けてた。

ともかく道に出して転がしてみたら、裏側はたんに木の皮を剥がしただけみたいだったが、中央にノミでなんか彫ってあって、土が詰まってた。

洗ってみたら

《昭和十三年八月十三日 俗名○○○○ 享年四十七》

ってあったんだ。

何だこりゃって思うだろ。像は150センチないくらいで、両脇中央に溝があって、右側に蝶番の金具がついてた。

これは中を開けられるんだと思って、監督立ち合いで工具突っ込んでこじ開けてみたんだよ。

したら何があったと思う?

出てきたのは毛の塊で、動物のだと思う。

で、毛の中にそくっと一体分の骨があったんだ。

これは犬とか狸とかだと思ったな。

猫よりは大きかった。

それと荒縄が朽ちたのも出てきたが、動物を縛ってたのかもしれない。

臭いはほとんどしなかったな。

長い年月で毛も乾いてたし。

それが出てきたあたりを慎重に掘ってみたんだが、後は何も出てこなかった。

それで監督が「こりゃ、廃棄でいいな」って言ったが、いちおう帰りに会社までトラックで運んだんだ。

それにしてもよ、そこらは道もない丘の中腹で、誰がこんなものを何のために埋めたのか不思議だよな。

俗名○○○○ってのも意味がわからん。

実際にいた人の名前だんだろうか。

まさか仏像の中に入ってた動物の歳ではないだろ。

四十七歳まで生きないだろうし。

それと八月十三日ってのはお盆の中日ってことだよな。

あと考えたのが、動物の頭蓋骨があったのが、ちょうど仏像の目が開いてるあたりで、もしかしたらそこにちょうど動物の目がくるようになってて、もし動物が生きてたのなら、外が見えたのかもしれないってこと。

そう思うとなんだか気味が悪くなった。

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ま、こんなことがあって、翌日起きたら目が開かないのよ。

すごい目ヤニが溜まってまぶたがくっついてたんだ。

普段はそんなこと全然ないんだが。

しかも両目の鼻に近いほうがかなり痛んだんだ。

こりゃ草に負けたかなんかで、目医者にいくべきか考えてたら、携帯に会社から連絡が入って、すぐ来いってことだった。

目の調子が悪いって話をしたら、会社のバスで迎えに来るって言う。

そんなVIP待遇は受けたことがないんで驚いてたら、社長が乗ってて、それから昨日現場にいたやつらのとこを全員回ってバスに乗せたんだよ。

でなあ、なんとみながみな俺と同じく目ヤニが溜まった状態で、タオルで押さえたりしてた。

バスは会社には行かないで、二時間くらいかけて他の市の大きな神社に着いたんだよ。

その間、説明は一切なし。社長は口をへの字にして押し黙ってるだけだった。

だから俺らもお互いに話しないで、かなり気詰まりな雰囲気だったな。

ただなあ、昨日掘り出した仏像に関係があることじゃないかとは思うよな。

けどよ、仏像だったから、着いたのが神社ってのはちょっと意外だった。

神社は早朝だったから参拝者はまばらだったな。

神主たちが何人も出てきて、俺らは拝殿の中に通されたんだよ。

そこには白木の椀が人数分並んでて中に水が入ってた。

で、膝ついて上半身裸で両目を洗わせられたんだ。

そっから長い長い祈祷が三時間ほども続いた。

終わると、新しい水で目を洗って俺らは立たされたんだが足がしびれて大変だった。

でもよ、しくしく痛んでた目はもう何とも感じなくなってたんだ。

それから年配の神社のたぶん一番偉い人が出てきて、俺らの前で

「ご苦労様でした。死に仏を掘り出したのはご災難でしたが、すべて忘れてください」

こんな内容のことを言ったんだよ。

たしかに死に仏って言ったけど、生き仏ってのは聞いたことがあるよ。

まだ生きた人なのに、仏様みたいによくできた人物って意味だろ。

けども死に仏ってのはなあ。

当然仏様ってのは死んだ人のことだし、意味不明だよな。

忘れてくださいって言われても無理だから、こうやって今書いてる。

翌日から目ヤニは出なくなり今もなんともない。

ただ、工事の計画は変更になって鉄塔はだいぶ左寄りになり送電線がそこだけ変に曲がってるんだ。

仏像はその後見てないから、どうなったかはわからん。

(了)

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