就職した後、会社の寮で知り合った友人から聞いた話だ。
53 :怖いお話ネット:2024/06/15(土) 16:45 ID:78Y3KPq
彼は、すりガラスに強烈なトラウマを持っているらしい。寮のトイレの扉にある小さな窓もすりガラスだったが、彼は金を出してでも交換して欲しいと言ったくらいだ。ある日、飲み会の二次会で、どうしてそんなにすりガラスが嫌なのか聞いてみた。彼は酔っ払っているように見えたが、その話題を振ると急に静かになり、「聞かない方がいいよ」と言った。逆に気になって、頼み込んで話してもらった。
昔はテレビでよく怖い話をやっていた。特に印象に残っているのは、病院で働く主人公の家に夜中、入院中のばあさんが訪ねてくる話だ。ばあさんは自力で歩いてくるはずがないのに…。当然、ばあさんはすでに亡くなっており、最後のお礼を言いに来たのだという結末だった。それ自体は大した話ではなかったが、再現VTRのすりガラス越しに見えるばあさんが異常に怖かったのだ。
再現VTRのすりガラス越しのばあさんの姿が、彼の心に深く刻まれた。それ以来、すりガラスが気になり始めたという。家でも祖父の家でも、すりガラスを見るたびに黒い影が見える気がした。その影がだんだんとはっきり見えるようになり、風呂場でもすりガラスの向こうに黒い影が立っているように感じた。その日から、彼は黒いガムテープを貼り始めた。祖父にも頼み込んで、障子の下についていたすりガラスをすべて交換してもらった。
しかし、ある日、祖父は外したすりガラスを手に取り、「こんなもん何も怖くないぞ」と言いながら彼に渡した。彼もその時は勇気を出して見てみることにした。すると、すりガラス越しに大小さまざまな影が彼らを取り囲んでいたのだ。驚いてすりガラスを落として割ってしまったが、あの影たちはすりガラスの前に立っていたわけではなく、すりガラスを通して見える存在だったのだ。
一瞬の静寂の後、一緒に話を聞いていた先輩が「良く出来た話じゃねーか!怪談の才能あるよ!」と笑った。その場の空気は和んだが、話を聞き終わった後、私はトイレに行った。トイレの小窓もすりガラスだった。意識してしまったのが悪かったのか、私にも何か見えた気がした…。