友人から聞いた話をしよう。10年以上前の話になる。彼はK高校に入学し、寮生活を始めた。当時、その学校は運動部が強かったが、相当荒れていたらしい。大きく分けると、ヤンキー、助っ人外人、スポーツ推薦の脳筋、いじめられっ子、普通の人の五つに分類される。友人は陸上部で、普通の人に分類されていた。
ある日、クラスのいじめられっ子が学校に来なくなった。彼は運動が苦手で、理由もなくボコられていた。その日は寮にいる彼を呼びに行くことになった。誰かが呼びに行くと、彼は素直に学校に来た。教室で授業を受けていたが、どこかおかしかった。いつもと違う、ニヤニヤしていて気味が悪かった。
寮では、彼が何かに取り憑かれたんじゃないかという噂が立った。夜、暗い廊下を歩いていると、誰もいないはずなのに肩がぶつかるような不思議なことが起こったという。友人も一度、「ごめん」と振り返ったが、誰もいなかったことがあった。
日に日に、いじめられっ子は気持ち悪くなっていった。ニヤニヤして急に笑い出したり、DQN達に殴られてもずっと笑っていた。やがて、DQN達も不気味に思い、手を出さなくなった。先生も異変に気づき、クラスメイトに「あいつ、大丈夫なのか?」と尋ねるようになった。
数日後、体育の授業でサッカーが行われた。その中で、いじめられっ子にボールが渡った。彼は運動が苦手だったはずなのに、急に素早いドリブルを始め、次々と相手を抜いてシュートを決めた。クラスメイトは驚きのあまりポカーンとしていた。さらに驚いたのは、彼がゴール前でロングパスを空中でボレーシュートして決めたことだった。彼は誰よりもスポーツ万能になっていた。
また別の日、彼は剣道の先生に勝負を挑んだ。先生はギリギリで勝ったが、「負けかけた…」と青ざめていた。先生たちは彼の様子がおかしいと感じ、病院に連れて行き、入院させた。後に聞いた話では、彼は精神的におかしくなっていただけでなく、足も疲労骨折していたという。運動していない身体で無理なプレーをしていたからだろう。
1ヶ月以上経って彼が学校に戻ってきた時、元の弱々しい姿に戻っていた。クラスメイトが「お前、大丈夫か?」と聞くと、彼はヘラヘラ笑っていた。彼は凄いプレーをしたことを全く覚えていなかった。ただ、唯一覚えていたのは、寮に戻った時、部屋を開けると白い服を着た女がいたことだけだった。
以上が友人から聞いた話だ。終わり。