夜の集会所のドアから漏れる光と点検票

短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 怪談 n+2026 オリジナル作品

消灯確認票 iwa+

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週に二度、小さな集会所の閉館を任されていた。

夜の利用者が帰ったあと、机を拭き、忘れ物を確かめ、部屋の電気を消す。鍵を掛ける前に点検票の四つの欄へ印をつける。会議室、和室、調理室、廊下。それで終わる仕事だった。

点検票は事務机の引き出しに一冊ずつ入っている。部屋を一つ確かめたら、一つ印をつける。全部終わってからまとめて書かないようにと、昼の担当者に言われていた。私は板に票を挟み、ポケットにボールペンを入れて回った。

秋の金曜日、利用があったのは会議室だけだった。将棋の会の人たちが帰り、湯飲みを洗って、畳の部屋と調理室を見た。どちらも電気は点いていない。私は入口から覗いて、二つの欄へ印を入れた。

会議室の窓を閉めるとき、向かいの家のテレビが見えた。窓は磨きガラスで、人の姿は分からないが、青や白の光が動いていた。こちらの電気を消すと、その色だけが机の表面に残った。

廊下へ戻って、会議室の欄を塗った。点検票の、和室の四角が白かった。さっき確かに斜線を引いたはずなのに、紙の繊維まで何もついていなかった。ペンが書けなくなっていたのだと思い、板の端で試した。

そのとき、和室の襖の下から、黄色い光が出ていた。さっきは真っ暗だった。忘れていたのかと思って開けると、畳が端まで見えた。座布団を重ねたところだけが、細く影になっている。

天井の照明は消えていた。窓も、黒いままだった。スイッチを上げると、蛍光灯が点き、畳の色が少し白くなった。下げると黄色い部屋へ戻った。私はもう一度上げて、何か見落とした物がないか、押し入れまで開けた。

座布団、低い机、扇風機。どれも昼間と同じ位置にあった。座布団の下に小さな照明が隠れているのかと思って、重ねた端を持った。いつもの重さだった。四隅の紐が垂れ、畳の上で揺れた。

持ち上げたその下も明るかった。座布団を戻すと、同じ場所に影ができた。光がどこから来ているのか確かめるため、板を畳へ置いた。影はできなかった。板の裏へ手を差し込んでも、自分の指が全部見えた。

事務机へ戻り、昼の担当者に電話した。話し始めてすぐ、向こうで椅子を動かす音がした。彼は、電気をつけたまま戸を閉め、先にほかの部屋を終わらせてほしいと言った。漏電なら危なくないかと聞くと、電気は触らなくてよいと言った。

私は和室の蛍光灯をつけて襖を閉めた。点検票の和室の欄は、白いままだった。調理室へ目をやると、戸のガラスに廊下の照明が映っていた。こちらは扉を開けても暗く、流しの縁が窓からの光を拾っているだけだった。

会議室も確かめた。机を一つずつ触り、窓の留め金を押した。向かいの家のテレビが消えていた。鍵の箱を持って廊下へ出ると、和室の襖の下が白くなっていた。蛍光灯をつけたのだから、その色でよかった。

私は待っている間、引き出しに残っていた記入済みの点検票を見た。前の担当者が書いたものは、和室だけ、同じ欄に二本の線が引かれていた。他の部屋は一本だ。印刷の四角を強く横切った跡が、下の紙にも残っていた。

電話が鳴った。昼の担当者が、今から来ると言った。道が混んでいて二十分ほどかかるので、正面の玄関で待っていてほしいという。私は鍵の箱と板を抱えて、靴を履いた。玄関のガラスには、廊下の照明が映っていた。

外へ出る前に、和室から物を擦る音がした。座布団が畳を滑るような、乾いた長い音だった。私は玄関の靴を脱がずに、廊下の途中まで戻った。襖の下の光が、先ほどよりも細くなっていた。

座布団を持ち上げたとき、ずらしてしまったのかもしれなかった。襖を少し開けた。蛍光灯は点いたままだったが、座布団が一枚ずつ、畳の上へ並べられていた。五枚とも、襖に向かって横一列だった。

私は声をかけた。誰も返事をしなかった。並んだ座布団の中央が、一枚ずつ、ゆっくり凹んでいった。最後の一枚が沈むと、和室のスイッチが上から下へ倒れた。天井の照明が消え、黄色い明るさだけが残った。

座布団の上に、人はいなかった。けれど畳に、五つの影があった。座っている人の、膝から下の影だった。私は襖を閉め、点検票の和室の欄へ線を引こうとした。ペン先が紙につくたび、廊下の奥で座布団が鳴った。

線は書けた。四角の中へ黒く斜めに一本引かれたので、ペンを上げた。その線の端が、薄くなっていった。濡れた紙にインクを吸わせたように、白く戻った。板を傾けても、紙は乾いていた。

和室の襖が内側から押された。私は玄関へ下がり、戸を開けたまま担当者を待った。板を抱えた腕が軽くなり、胸元で挟んでいたペンがなくなっていた。落とした音は聞こえなかった。道路で車が停まり、彼が大きな紙袋を抱えて降りてきた。私の票を見て、線を消したかと聞いた。書いても消える、と答えた。

彼は紙袋から、古い布の座布団を一枚出した。色は揃っていなかった。私に道路へ出るよう言い、靴を脱いで廊下を進んだ。和室の襖を開け、敷居のところで屈んだ。聞こえてきたのは、座布団を置く音と、彼が息を吐く音だけだった。

彼は蛍光灯をつけずに廊下へ戻ってきた。和室の欄に線を引き、その上からもう一本引いた。今度は消えなかった。襖の下の黄色もなくなった。彼は私に、鍵を掛けるよう言った。

次の勤務から、閉館には二人で入ることになった。和室の座布団は六枚になり、一枚だけ色が違った。私は数を確かめてから襖を閉める。部屋が暗いかどうかも、今は入口から確かめる。

ただ、その夜、担当者を外から待っていた間のことが、票には残っていない。道路に立つ私の隣で、誰かが板を持っていた。顔は見えず、和室の黄色に似た色が、足元のアスファルトを照らしていた。

その人は、私のボールペンを握っていた。玄関から担当者が戻ると、私に返して消えた。受け取ったペンの軸には、布の繊維が何本も挟まっていた。今も握るところが少しだけ沈み、親指を離すと、ゆっくり元の形へ戻る。

[志那羽岩子 ◆PL8v3nQx6A]

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