短編 怪談

無邪気な子供~コンビニ店員シリーズ05【ゆっくり朗読】322

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本日土曜日、バイト先コンビニの女子高生と映画を見に行くことになった。
当然浮かれてんのは俺だけで、あっちはたまたま漫画が原作の映画を見に行く相手がいなかったってだけ。
生粋の漫画ヲタな俺は、たまにその子とジャソプの話題で盛り上がったり、
漫画貸してあげたり借りたりとかあったわけ。
俺はもともと寂しく一人で行く気だっただけにウハウハだった。
漫画の会話(のみ)なら気まずい雰囲気にもならんしね。

映画館に着いてエレベーターを降りた俺は、速攻で閉めるボタンを押しかけた。
目の前に並んでいるカップルが、Mとこないだの女子高生だったからだ。
ま、こんな事もあるさ、バイト先の常連さんと他所で会うなんて地元じゃよくあると、やっぱり冷静な大人な俺。
世話にもなってるし、そこまで避けなくてもよかろうと話し掛けると、同じ映画を見に来てる事が判明。
チイッ!話し掛けるんじゃなかった!
女子高生同士意気投合してしまって会話に混ざれなくなるし、
Mはなんか「わざわざ自分から行く事もないだろ馬鹿だな」とか言ってる。不吉な事言うな!
もうチケット買っちゃったんだよ!

やや混みだったが、座席はなんとか横一列に四人。
俺、バイト先女子高生、女子高生、Mの順で座る。俺通路側。
情け程度に時々話し掛けてくれる女子高生に返事をしているうちに上映時間に。
照明が落ちて無駄に長いCM。
客席には土曜日だけあって、子供から大人まで大勢だった。
子供がCMにナイスリアクションを繰り出しているが、不快になるほど煩くはない。

これなら安心して見れるな、と思った頃だった。
4,5歳の子供が数人、場内を走り回りだした。オイオイオイ親何やってんだよ。
CMくらいで飽きちゃう子供ならDVDまで待ってろよとか思いつつ、子供を気にするが、
俺以外の人はあんま気にしてないようなので、俺も華麗にスルー。

本編が始まっても、子供の笑い声と走る声は止まらない。
いい加減誰か怒れよと思いながらも、自分は黙って画面を見ていた。

そのうち、はしゃいだ子供等が、画面の前にまで出てくるようになりやがった。
流石にこれは聴講室の係員が注意に来るだろうと内心笑ったが、その気配は無い。
サボってんじゃねえぞと舌打ちしかけて、自分の目を疑った。
スクリーン前に子供が立っても、映像に影が出来ないのだ。
子供は確かに、映像と光の間で飛んだり跳ねたりしているのに。

あれ?これもしかしてアレですか?
暖房で熱いほどになっているはずの場内で、一人寒気を伴う汗びっしょりになる俺。
隣のバイト先女子高生は画面に釘付け(勿論映画本編に)で、
好きな役が出るたびに、隣のMの連れ女子高生に「可愛いですよねー」なんて言っている。
見えてないのは確実だ。
Mの連れのほうも相槌を打ったりしてるくらいで、やっぱり本編に夢中。
Mも見えない上に、ここで怖いからって助けを求めたら俺かっこ悪い。
子供だし!そうだよ、例え他の人に見えて無くても、映画館で騒ぐ子供くらいいるさ!
そう言い聞かせて前に向き直った俺は、情けなくも悲鳴をあげそうになった。というかチビりそうになった。
前の席の客席に座る人の丁度間に、子供が乗り上げて俺の目の前に顔を乗り出していた。
その顔は憎しみに満ちたような顔ではなくて、どこにでもいる普通の笑い顔の子供。
動けなくなっている俺を見た子供は、「ふふふ」とか笑って更に近付いてくる。
このままだと得体のしれないマウストゥーマウスジャマイカ!とか思ってる場合じゃない。
咄嗟に顔を通路に背けると、通路にも子供が可愛らしいポーズで立っている。しかもこっちも割と近い。
いい加減洒落にならなくなってきた俺は、顔を下に向けたがこれがいけなかった。
椅子と椅子の間に、体育座りした子供がニヤニヤ笑いながら見上げてくるではないか。

気を失うかと思ったが、意外にもそれはなく、
映画が終わるまで、子供の笑い声と時々身体に触れる小さい手の感触に耐えて、とにかくずっと目を閉じていた。
映画の内容ほぼ音だけで把握。
気になるとこだけ薄目で見ようとかすると、目の前の子供が「ばあ!」とかやってきて泣きそうになる。
女子高生が隣にいなかったら多分漏らしてたねww

照明が点いて周りの客が動き出してから、ようやく子供の声も姿も見えなくなり、
映画見た疲労感の50倍以上に疲れている俺。
女子高生達はなにやら映画の内容で盛り上がっているが、
俺はそれを聞いて「へーそんな事もあったのか」と、ふらふらしながらついていくのが精一杯。
Mは珍しく(女子が居るからか)気を利かせて全員の飲み物を買ってきたりして紳士wだった。

Mに話し掛けるタイミングを見計らっていると、
連れの方の女子高生が「Tさん凄かったですね」と話し掛けてきた。
うん?映画の話じゃないの?と思いながら聞き返す。
「え?映画?」
「違いますよ、Tさんの周りに集まってたじゃないですか」
・・・(゚Д゚)ハァ?
この女子高生も電波か!いや、流石にここまで来たらそうは思わなかったが。

この後、駅まで歩きながら聞いた話では、
Mとその女子高生は別に付き合っているわけではなく、単に心霊とかオカルト好きなので一緒にいるらしい。
この間の朝も、別な学校の女子高生が来れる時間に合わせて来たので、時間が早かったとか。
彼女にはMみたいな妙な力はないらしいが、『それ』が居る事と大体の位置がわかるとMが説明した。

女子高生二人はちょっと前を歩きながら、やっぱり映画の話に戻っていた。
その辺で、流されて相槌しか打てなかった俺もようやく落ち着いてきて、
「っつか今日のアレなんとかできなかったのかよ」と聞くと、
「は?何言ってんの?映画よりよっぽど面白いもん見れるのに、わざわざ止めるわけないじゃん馬鹿だな」
( ゚д゚)ポカーン
その言葉が聞こえていたのか、Mの連れのほうの女子高生が振り返って「M!」と怒る。
ああ…やっぱりオナノコは優しいね…
「今日のだったら映画の方が面白いよ!」

ちなみに、地縛霊っぽいのだったらしく、憑いてきてはいないそうな。
映画はレンタル出たら借りようと心に決めた。

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