短編

カガさまのお迎え#1045

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医者だった祖父が、とある山中の無医村に赴任したときの話。

156 :「カガ(蛇)さまのお迎え」:2016/05/24(火) 14:57:09.92 ID:c1JcRuu/0.net

祖父と祖母の家に預けられる形で、当時六歳の俺も一緒にその村で暮らすことになった。

喘息持ちの俺の転地療法も兼ねていた。

初日から村を挙げての大歓迎だった。

鎮守の神だという蛇(カガ)を祀る神社で盛大な祭りが催され、『神様のご加護』『神様の目印』として、玄関先と裏口に巨大な鈴のついた幣束がとりつけられた。

診療所兼住宅として与えられた建物は真新しく、わざわざ整地した土地に新築されていた。

俺の喘息の発作はみるみる落ち着き、村の者は「カガさまのおかげ」だと口々に俺に説いた。

人懐っこい村の子供たちともすぐに打ち解けたが、すぐに不可解な噂を耳にすることになる。

「ヒデくんは良いのう、カガさまがお迎えにくると母ちゃんが言いよる」

その意味を祖父母に問いただしたが、祖父母は顔を曇らせて、「お前は何も心配するな」とだけ。

そういえば毎夜、日が暮れるなり家全体が締めつけられるような、ギギギ……という家鳴りが気になる。

祖父母には「新築の木造家屋はそういうものだ」と説明されたが、一度気になると恐怖しか感じない。

だがやがて俺と祖父母は、《カガさまのお迎え》の本当の意味を知るところとなる。

台風の近づいたある晩のことだった。

血相を変えた父と兄が、祖父母と俺を迎えに来た。

困惑する祖父を父が殴りつけ、声を殺して「すぐに逃げろ!」と俺たちを車に押し込めた。

翌日上陸した台風により、山肌を押し流すような地滑りがあり、集落は土砂に飲まれた。

ただ一軒だけ無事だったのが、祖父母と俺たちのいた診療所。

だがその姿は異様なものだった。

すべて窓や出入り口が、中から脱出できないように外側から閂(かんぬき)と鎖で固められていたのだ。

勘の良い人にはわかったと思う。

俺たちはカガさまへの供物で、鈴や幣束は生贄の目印だ。

供物の俺たちに逃げられたカガさまの怒りか否か、村人たちの住居は一軒残らず土砂に飲まれていた。

俺たちを生贄にした安心感からか、村人たちは車で小一時間の避難所へ行くこともなく、皆自宅で亡くなっていた。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1463021094/]

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