短編 恐怖の実話

御守【ゆっくり朗読】

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先日、背筋が凍るような体験をしました。

怖い話&不思議な話の投稿掲示板  投稿者「NO NAME」 2017/08/26

本来であれば2chなどのオカルト板に書くべきだと思うのですが、どのスレに書いたらいいのか分からなかったので、こちらで報告させて頂きます。

もし私の体験談に目を通していただき、更にその手のことに詳しいようであれば、是非とも助言をお願いします。

数年前、私がまだ高校生だった時に「しげる」と言う友人がいました。

しげると言う名前は本名ではなくあだ名で、そのあだ名の由来は

「彼の父親の名前がしげるだったから」

「髭が生えていたから」

と言った理由からだったと思います。

クラスのほぼ全員が、しげると言うあだ名で彼を呼んでいました。

性格は独特で、クラスでただ一人、携帯電話を持っていなかったり、妙に古臭い言い回しを使ったり、目立とうとしている訳ではないのに面白がられる、そんな人でした。

ただ根は真面目で、少なくとも誰かを貶めたり不用意に怖がらせるような人間では決してありません。

そんな彼と高校生の時から私は、友人としての関係を持っています。

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昔話が続いてしまい恐縮ですが、今回の出来事の発端となる話を書かせていただきます。

数年前、私が高校二年生の時に沖縄へ修学旅行に行きました。

私の通っていた高校は、二年生の段階で修学旅行を済ますカリキュラムになっており、生徒は「アメリカ・シンガポール・沖縄」の三つの中から好きな場所を選んで行くことになっていました。

私としげるは沖縄を選び、同じ班に入って行動を共にしていました。

昼は観光名所をバスで巡り、夜になれば教師に内緒で生徒同士集まり、様々なレクリエーションを楽しむ、
そんな修学旅行でした。

一日目の夜は飛行機に乗った疲れもあってか、私たちの班は部屋の電気を消して直ぐ布団に横になりました。

ただやはり遊び盛りの心を抑えることが出来ず、寝たまま皆でお喋りを始めました。

恋愛話に始まり明日の予定の談義を経て、やがて各人による怪談話が開かれました。

私を含めた班の四人は、そこまで怖い話に詳しくなく、どこかで聞いたことのあるような話を一つだけ話し、後はしげるだけが、怪談を口にすると言った流れになりました。

しげるの話し方はとても上手く、怪談の内容もぞくりとくるようなものばかりで、しげるが話し終ると「おぉ…」と笑いの籠った感嘆の声が周りから漏れたりしました。

私も「怖いなぁ…」と唸りながらしげるの怪談を聞きつつ、「何だかこのままだとしげるに怖がらされているようで腹が立つから、何か仕返しをしてやろう」とよからぬことを考えていました。

そうこうしている内に夜が更けていき、気付いた時には二日目を迎えていました。

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二日目の観光も終わり、ホテルの廊下を一人歩いて部屋を目指していると、床にお守りが落ちていることに気付いたんです。

そう、お守りです。

何とは無しに拾っていました。

床は絨毯が敷かれていたし汚いと言った印象が薄れていたのでしょう。

『御守』と書かれたお守りでした。

赤や青などで彩られており、いかにも沖縄と言う感じがします。

その時私は、「これをしげるのバックにこっそり入れて怖がらせてやろう」と地味な計画を練りました。

このお守りをしげるの鞄に忍び込ませ、彼がお守りの存在に気付いて驚いた時に種明かしをしてやろう、と。

早速部屋に戻り、しげるが出かけたタイミングを見計らって他の三人に自分の計画を伝えました。

彼らも「それは面白そうだ」と乗り気になり、「急げ急げ」と笑いをこらえながら、しげるのバックの内側のポケットにお守りを入れました。

さて、その後しげるが部屋に帰ってきて五人でトランプゲームをしながら、「しげるはいつお守りに気が付くのだろうか」とにやけながらその時を待ちました。

結論から先に言うと、しげるは修学旅行中にお守りに気が付きませんでした。

途中から私たちも、お守りのことなんかすっかり忘れて人生最後の修学旅行を満喫し、最終日を迎えて本土に帰り、そして高校を卒業して数年が経ちました。

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しげると偶然会ったのは今年の六月でした。

場所は私たちが卒業した高等学校で、二人とも教育実習の申し込み及び説明会の為に母校へやって来ていたのです。

スーツ姿のしげるを見た時に私は「あっ」と声を出して、顔を綻ばせながら彼の元へと近づきました。

彼もこちらに気付き、破顔したまま手を振ってきました。

連絡先を知らない旧友に会うことが、これほど嬉しいものだとは思いもしませんでした。

彼は二十歳の時の同窓会に顔を出していたそうですが、その時の私は丁度インフルエンザにかかってしまい参加出来なかったので、こうしてしげると顔を合わせるのは卒業以来と言うことになります。

彼は昔と全く変わらない様子で私と話してくれました。

しかし今回は、教育実習の説明会に参加するとのことだったので髭を剃ってきたらしいです。

「じゃあここに来るまでは相変わらず髭を生やしていたのか」と私が笑うと、しげるも「その通り!」と歯を見せて首肯しました。

その後も「大学生になって流石に携帯を買った」とか「俺は地方の国立大学に入学した」と言った情報を交換し合って、長話に花を咲かせました。

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「あ、そうだ」と、しげるがポケットに手を入れたのはその時でした。

「ちょっと手を出して」と頼まれたので言われた通りに手を出すと、彼は私の手に例のお守りを置きました。

実はこの時まで私は、このお守りのことをすっかり忘れていたので、「何これ?」と顔を上げてしげるを見ました。

彼は先ほどまでの笑顔と打って変わって無表情で私の目を見ながら、「これはお前のものだ」と静かに言いました。

その瞬間、これが修学旅行の時にいたずらで入れたお守りだと言うことを即座に思い出し、鳥肌が立ちました。

声を失い、私は黙ってしげるの顔を見ていました。

しげるは何事もなかったかのように懐から携帯電話を取り出すと、さっきまでの調子と同じように「今の内にメアドを交換しておこうか」と明るく提案をしてきました。

私も少し間を空けてからスマートフォンを取り出し、互いのメールアドレスを確認して、その日は別れました。

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以上で私の体験は終わりです。

霊的なものを期待していた方はごめんなさい、傍から見ればとても地味な内容です。

そして「これのどこが怖かったんだ」と思う方もいるかもしれませんが、私の考えを述べておきます。

しげるは修学旅行の時も、高校生活の時も、お守りの存在に気付かないで日々を送っていました。

それなのに、今更そのお守りを私に返してきたのです。

それもたまたま会ったと言ってもいいような環境で、です。

私は、教育実習の説明会でしげるに会うとは思ってもいませんでした。

彼は常日頃から、そのお守りを持っていたのでしょうか?

そもそも彼はいつお守りの存在に気が付き、どうやって私がそれを鞄に入れたと知ったのでしょうか?

もし彼が、例えば同窓会などで「修学旅行の時あいつあんないたずらをしていたんだぜ」と事実を知り、更に私が教師を目指していると言うことを聞いて、教育実習説明会の日に会うかもしれないからお守りを持っていこう、と思っていたのならそれはそれで構いません。

むしろそうあって欲しいです。

ですが、彼が「これはお前のものだ」と言った時、表現が正しくないのかもしれませんが、彼が彼じゃないような錯覚を覚えました。

しげる以外の何者かが言っているような、そんな気がしました。

大袈裟ですが、生気を感じなかったのです。

もしあのお守りに何か悪いものが憑いていて、それがしげるに乗り移っていたとしたら、罪悪感で胸が押し潰されてしまいそうです。

しかし彼の身内に不幸があったと言う話も聞きませんし、その後のメールのやり取りでも、彼は充実した学生生活を送っているそうです。

私もその受け取ったお守りを近くの神社で処分してもらい、何も変わらない日常を過ごしています。

今も私としげるは友人です

(了)

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