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短編 r+ 怪談

シゲジの話 r+1199

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川本という男がいる。アウトドアが趣味だと豪語するが、その実態は、キャンプと称して女を口説き、酒と肉で雰囲気を盛り上げ、あわよくば一晩を共に過ごすのが目当ての男だった。

川本は特にダム湖のそばがお気に入りらしい。人気が少なく、夜の静寂と星空が手頃に「ロマンチック」な雰囲気を演出してくれるからだ。

その夜も、川本は新しく引っ掛けた女を連れ、小さなダム湖のほとりにテントを張った。飲み物と肉を楽しみ、すぐに二人はテントの中へ。夜は深まるが、湖面には満月がぼんやりと映り、あたりは静まり返っていた。

しかし、不意に何かがおかしいと気づく。対岸の薄闇の中に人影がある。ぼんやりとこちらを見つめるその影は、林の間からまるで動かない。「覗きか」と軽薄に笑い飛ばした川本は、酔った勢いも手伝い、影に向かってわざとらしく大声を上げたり、派手に動いて見せたりした。

一夜を満喫し、二人は疲れ果てて眠りについた。しかし、真夜中。冷たい風が川本の頬に触れ、目を覚ます。薄暗いテントの中、入り口が開いている。ぼんやりとした意識の中で、それに気づいた瞬間だった。

闇が、動いた。

いや、闇そのものが実体を持ち、川本の目の前でうごめいている。巨大な影のような何か。頭に長い髪が垂れ、白っぽい顔はのっぺらぼう。目も鼻もなく、ただ口元に細い横の切れ目が一筋。そこから、低く湿った「クッ…クッ…クッ…」という音が漏れる。笑い声とも、呼吸音ともつかない、不気味な響きだった。

息を殺し、必死で動かないように努めた川本は、その巨顔が次第に遠ざかるのを見た。しかし、それを見ていたのは自分だけではなかった。隣で寝ていた女が突然悲鳴を上げたのだ。

その声に反応するように、巨大な顔が再び近づく。そして、押し殺した笑い声のような音とともに、女の悲鳴が途切れ、代わりに「パキッ」「メキッ」という硬いものが砕ける音が響いた。

川本は恐怖で体を固め、ただ音が去るのを待つことしかできなかった。やがて、笑い声は静寂の中に溶け込んでいき、再び何も聞こえなくなった。

明け方。恐る恐る隣を見ると、そこには首を失った女の体が転がっていた。血の跡はなく、異様な静けさがその場を支配していた。川本はテントを持ち帰り、女の遺体をその場に放置して逃げたという。

話を終えたシゲジは得意げに語ったが、聞いていた女たちは明らかに引いていた。
「最悪!」
「キモすぎる!」
そんな罵声を浴びながらも、シゲジはなおも言い訳を続けた。

その話を聞いて以来、どうにも落ち着かない。というのも、川本がよく使うダム湖は、たまたま俺の地元の近くだったからだ。最近、その湖の近くで行方不明者が出ているらしい。あの影の正体は一体何なのか──考えるだけで背筋が寒くなる。

[118 名前:ノブオ ◆x.v8new4BM [sage] :04/07/30 15:43 ID:H2N3QmhC]

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