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身代わりになったコロ【ちょっといい話】r+1113

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これは、ある投稿者の体験談をもとにした話だ。昔、漫画にもなったという。

六歳の時のことだ。幼いその子は突然高熱を出して倒れた。その日、母方の祖父が危篤状態に陥り、両親と兄たちは祖父が入院している田舎の病院へ向かった。子どもの風邪は「大したことはない」と軽く見られていたが、熱が続いているため、彼は家で留守番をすることになった。両親は隣家の人にもしもの時の面倒を頼んでから家を出たのだった。

その時期、家には父方の親戚から預かった小型犬のマルチーズ「コロ」がいた。親戚が旅行で不在になる間の世話を頼まれたのだ。コロは幼い彼によく懐いており、特に手がかからない犬だった。

しかし、風邪を引いた彼の状態は日を追うごとに悪化していった。用意された食事をほとんど口にできず、体力は奪われていくばかりだった。当時はまだ携帯電話もなく、家の固定電話の使い方もわからなかった。両親からの電話にも「大丈夫」と強がり、隣家を訪ねてもタイミング悪く不在だった。その日は一人で布団に入り、弱った体を横たえた。

気づくと、彼は見知らぬ草原に立っていた。寝巻き姿のままで、頭はぼんやりしていたが、不思議と恐怖心はなかった。「夢だろうか」と思いながら、彼は方向も定めず草原を歩いた。

しばらくすると、遠くからコロの鳴き声が聞こえた。振り返ると、白い小さな影が駆け寄ってきた。コロはいつも彼に吠えることはなかったのに、その時ばかりは必死な声をあげ、彼の寝巻きを口でくわえて引っ張った。

「どうしたんだ、コロ?」

引っ張られるまま歩くと、気づけば病院のベッドに横たわっていた。後に聞くところによると、騒ぎ立てるコロの声に隣家の人が異変を察し、家に駆けつけてくれたのだという。その時、彼は衰弱しきって反応もできない状態で、熱も四十度を超えていた。隣人の迅速な判断で病院に運ばれ、一命をとりとめたのだった。

命を救ってくれたコロ。しかし、その事件から間もなく、コロは病気でも事故でもなく、急死してしまった。まだ若い犬だっただけに、その死は不可解だった。彼は幼いながらも「コロが自分の命を引き受けてくれたのだ」と直感したという。

それから十数年が過ぎた。

十八歳になった彼は、ある朝目覚めると、自分の体から抜け出して宙に浮かんでいることに気づいた。視界の端には黒いローブをまとった人影が立っている。

「……死神?」

それはまさに、物語や絵画に出てくる死神のような姿だった。ただし、骸骨ではなく、人間の顔をしている。

死神は静かに語りかけてきた。

「お前、本来ならもっと早く死んでいるはずだった。だが、犬が身代わりとなり、その命を持って延命した。しかし――寿命の帳尻はそろそろ合わなければならない」

死神の言葉に、彼は怒りを覚えた。命を助けてくれたコロへの感謝が、理不尽な死の宣告への反発に変わった。

「ふざけるな!」

その言葉とともに、彼は思い切り死神を殴り飛ばした。自分でも驚くほど自然に体が動いたのだ。

「お前……死神を殴るとは、肝が据わっているな」

黒いローブの男は苦笑し、肩をすくめた。

「今回は特別に見逃してやる。ただし、次は他の死神や悪霊に気をつけることだ」

そう言い残すと、死神はふっと消えた。彼は元の体に戻り、目を覚ました。


コロの犠牲と、死神との奇妙な対峙――この体験は、彼の心に深い痕跡を残したに違いない。それ以来、彼は「見える」ようになったという。しかし、あの日死神に言われた言葉が、いまだに胸の中に暗い影を落としているそうだ。

「寿命の帳尻はいつか合わされる」

その言葉の意味が、今後どのように現れるのか。彼は恐れつつも、時折コロの笑顔を思い出しながら、今日も生きているという。

(了)

[2012/03/29(木) 00:34:52.79 ID:j67uNub30]

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