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電話ボックスと女性r+1083

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これは、大学生だった頃に知り合いから聞いた話だ。

その知り合いは、特に霊感があるわけでもなく、オカルトが好きなくらいで心霊体験など無縁だったという。しかし、ある夜の出来事が、彼の人生に深い影を落とした。

十月のある夕方、大学の授業が終わるといつものように車で家路につくことにした。片道一時間ほどの運転。空はすでに暗く、小雨が窓を叩いていた。途中、携帯電話を確認すると、バッテリーが切れかけていて電源が入らない。仕方なく、公衆電話を探すことにした。

周囲は田園風景が広がる田舎道。公衆電話など滅多に使わない彼にとって、それを探すのは一苦労だった。二十分ほど車を走らせ、ようやく見つけた電話ボックスは、古びた売店の隣にポツンと佇んでいた。売店のシャッターは閉じられ、周囲には街灯が一つだけ。まるで孤立した場所だった。

その電話ボックスには、白いシャツに黒いスカートの女性が立っていた。長い黒髪が電話ボックスの曇ったガラスにぼんやりと映り込んでいる。彼は「幽霊…?」と冗談めかして思いながらも、ただの人間だろうと気にせず車を停め、彼女が電話を終えるのを待つことにした。

数分後、振り返ってみると、女性の姿は消えていた。「迎えでも来たんだろう」と思い、電話ボックスへと向かう。中に入ると、湿った空気が身体にまとわりついた。受話器は雨で濡れており、彼は持っていたティッシュでそれを拭いた。

その時、腕の隙間から「足」が見えた。電話ボックスの中、確かに彼は一人のはずだった。息を飲み振り返ると、そこには先ほどの女性がいた。うつむき加減で顔は見えない。しかし、確実にそこに立っていた。

恐怖で言葉を失った彼は、身をこわばらせたまま電話を掛けようとしたが、女性は突然ドアを開けようとし始めた。必死にドアを押さえつけるが、女性の力は一定の強さでじわじわと迫ってくる。その攻防がしばらく続き、突然、彼女は手を放し、スッと彼の車の方へ歩き出した。その動きはまるで地面から浮かび上がっているかのようだった。

車の中に何かが入り込むのではないか――そんな恐怖に駆られたが、女性の姿は車を越えた影の中へと消えていった。

勇気を振り絞り車に戻った彼は、車内に人の気配がないことを確認して安堵した。しかし、車内の空気もまた、電話ボックスの中と同じように湿って嫌な生温かさを帯びていた。彼は急いで車を発進させたが、次第に後部座席に何かの気配を感じ始めた。振り返るのが怖くて、ミラーを見ることすらできなかった。

次は助手席だ。確かに、そこに何かがいる――黒い影の輪郭が目の端にちらつく。それがこちらをじっと見つめている気配が、彼の全身を硬直させた。耐えきれずルームライトを点けた瞬間、影は消えた。しかし、その一瞬で見えた光景が、彼の心をさらに深くえぐった。

数日後、友人にこの出来事を話した彼は、電話ボックス周辺で過去に何か起きたのではないかと考え、調べることにした。地元の新聞や大学の掲示板には、近くで失踪事件や放置車両の報告が散見されていた。しかし、あの女性に該当する情報はどこにもなかった。

友人たちと共に再び電話ボックスを訪れようか――そんな提案も出たが、彼はそれを実行に移す勇気を持てなかった。なぜなら、あのとき確信したのだ。あの女性は、この世の存在ではない。そして、彼もまた次の「失踪者」となる可能性があったのだから。

[555 名前: ma--bu◇ 2006/08/05(土) 16:11:11 ID:jazf6rqi0]

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