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短編 怪談

神社の横の道【ゆっくり朗読】

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俺が中学の頃の話をここに書いていく。

135 :本当にあった怖い名無し:2023/08/03(木) 01:15:47.53 ID:p3ldn/CK0.net

釣りだと思って聞いてくれたほうがむしろ良いかもしれない。
少し長いが面白半分で聞いてくれるとこちらも話しやすいのでよろしく。

これは俺が中学校に上がったばかりの頃の話。
入学したてで、新しいクラスメイト、新しい先生、何もかもが新鮮で緊張していた俺に隣の席の奴(ここではA)が話しかけてくれたんだ。

Aは当時流行っていたゲームや漫画で意気投合しすぐに仲良くなった。
聞けばAは隣町に住んでいるらしく、何度も遊びに行きたいなと思ってはいたが、部活の練習や塾などで中々遊ぶ機会を得られないでいた。そんな中やっとこさ夏休みが来たのでようやくAの家へ遊びに行く約束を取り付けることができた。

ついに約束の日が来た。

俺の家はまぁまぁ街中にあってそこから西へ行くとなかなかの都会なんだが、Aの住んでいる町は俺の住んでいる町から東へ5kmほど進んだ所にあって、周りには田んぼと山しか無いようなかなりの田舎だった。

だが待ちに待った日なので重い自転車のペダルも照りつける真夏の太陽もなんら気にならなかった。途中で交差点を渡り、しばらく進んだところで俺は気付いた。

「どこで曲がるんだっけ…」
事前にAには家の場所を地図で教えてもらっていたのだが、あまりにも周りが山と田んぼで情報が少なすぎて迷ってしまったのだ。当時スマホを持っていなかった俺はAに聞くことも、調べることもできなかった。

途方に暮れながら自転車をゆっくり漕いでいるとAの言っていたことを思い出した「近くに神社があって……」

ふと横を見ると竹が生い茂った管理されているのかも分からない古そうな神社があった。俺はここに違いないと思い、神社の横の狭い道に入った。

そこを進むと周りに木々の生い茂る薄暗い里道へと入った。

涼しいなーとか思っていながらしばらく自転車を漕いでいた。
そしたら辺りがだんだん暗くなっていくのに気付いた。
おかしい、さっきまで間違いなく真っ昼間だったのに。そう思って立ち漕ぎですすむとやっと里道を抜けた。俺は呆然とした。

そこには民家の一つも無い周りを山と田んぼ" だけ "で囲まれたあぜ道が続いていた。
しかもそのあぜ道もどれだけ離れているのかも分からないような正面の大きい山へと延々と続いていた。

見たこともない風景と何が起こったのか分からない焦り、そしてその中にほんの少しの好奇心がひしめき合っていた。今でも謎だが、俺はそこで戻らずに進むことを選択した。自転車を道の脇に停めて、あぜ道を歩き始めた。

だがそこからは見渡す限りの夕暮れに染まった田んぼと山々を見ながらただ歩くだけだった。しかし、十数分歩いたところであることに俺は気付いた。

正面の山との距離が一向に縮まらないのだ。気付いてからはもう俺に余裕なんて無かった。焦りと孤独感から泣きたいのを耐えて、ただ走った。すでに疲れ切って重い足をなんとか言うことを聞かせ走った。

それでも山は走るたびに離れて行くように見えた。
めちゃくちゃ走った。でも途中でプツンと心が折れて、その場で泣き崩れた。中学生特有の無駄に高いプライドとか恥じらいとかそういうのも全部忘れて大泣きした。

泣いて泣いて、涙が枯れるくらい泣いたあと、気がつくとAの家にいた。

俺が目を覚ますとAが気が付いてAのばあちゃんを呼んできた。聞けば俺が来るのが遅かったので心配になってAとAのばあちゃんで俺を探してくれていたらしい。

それでAのばあちゃんが神社の前で倒れている俺を見つけて家まで運んでくれていたらしい。

俺がお礼を言うとAのばあちゃんは「たけし君に何かあったと思ってなぁ、でも無事でよかったで」って言って笑っていた。
その後もう一度口を開いてこう言った。

「たけし君、神社の横の道入った?」

俺は不思議に思ったが頷いた。するとAのばあちゃんが少し悲しそうな顔をしてゆっくりため息をついた。そしてまたAのばあちゃんが話し始めた。

「あの神社はなぁ、昔っからこの辺りを見守っちょってくれよった神様がおったんよ。
やけど神主様が病気で若くで亡くなっちまって誰にも管理されずにどんどん廃れていきおったんよ。んでからかなぁここら辺で子どもたちが神隠しに会うよぉなったんは。
多分たけし君にはあの神社の横に道が見えてたと思うんやけど、無いんよ。元々あそこに道なんて。神様も退屈じゃったんやとか、なにせ子供の神様で多少わんぱくらしくて。
気に入った子どもたちをあの道に入りたくさせてはあぜ道を歩かせて泣いたり、不安になってる姿を見て楽しんでるんだと。
まぁ神様にとっては遊戯みたいなもんなんやろけど……。まだ帰ってきてない子供も何人もおる。たけし君は運が良かった、多分途中で神様が飽きてくれたんやろな。ほんま、良かった、良かった……」

話終わると俺を抱きしめて「良かった、良かった……」って細い声で言ってた。
これまでで家族以外にこんなに俺のことを思ってくれたのは初めてだったし、一気に安心したので、俺は泣いた。

その日はAと一緒にゲームとかして遊んで遊び尽くして帰った。
今でも思い出すと少し怖いし、あのまま帰れなかったらどうなってたんだろうとか思ったりする。でもそれも含めて俺にとって最初で最後の中学校初めての夏休み。不思議と楽しさでいっぱいの思い出になった。

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