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短編 家系にまつわる怖い話

ご神体【ゆっくり朗読】2600

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ガキの頃に親父の田舎で起こった話。

900 本当にあった怖い名無し sage New! 2008/10/12(日) 09:58:40 ID:cDqqaFW80

自分の親父の実家はよく言えば自然に囲まれた農村で、悪く言えばド田舎。

マムシは出るわ、見たこと無いが熊が出るわで、夏休みに遊びに行くときは色んな意味で自然ってものを教えてもらった。

今から話すのは自分が小学校三年の夏休みの出来事。

自分はお盆の時期に祖父母の家へ家族で一週間程過ごしに行った。

自分は年上の従兄弟:龍夫と裕司の二人で朝から日が暮れるまで遊びまわり、帰る日が近づく頃には真っ黒に日焼けするぐらい遊びまくった。

そして家に帰る前日になると、死ぬ程遊びまくったはずなのにまだまだ遊び足りない自分は、龍夫と裕司に帰る前にもっと楽しいところは無いかと話しかけた。

そして龍夫の提案で第二の秘密基地というところに行くことになった。

第二の秘密基地と言う所は山に少し入ったところにある宗教団体が建てたらしい建物で、敷地を囲む金網があるが、入口の扉の鎖が緩んでいて、子供なら入れる状態だった。

人気が無く荒れ放題で、ボロボロの金網に囲まれた敷地内は雑草に覆われており、駐車場や通路はアスファルト舗装されているが殆ど落ち葉で路面は見えない。

平屋コンクリ造りの建物は所々白い塗装が剥げ落ちていて、ドアや窓は雨戸で締め切られていて、多分一つ一つに南京錠がかかっていた。

龍夫達が出入りしている建物入口は倒木で戸板が割れている裏口で、龍夫達の後について入ってみると中は直ぐに小さな集会場のような部屋になっていて、山形に取り付けられた天窓があり、そこから入る明かりで明るかった。

部屋には横長の祭壇と男根の形をしたご神体らしきものがあり、自分はアホな子供らしくそれを見てゲラゲラ笑っていた。

後はご神体を振り回す・投げる・石投げの的にする等罰当たりな事をしたり、建物内を探検したりと色々遊んだが、いい加減日も傾いてきて暗くなってきたので帰ろうって事になった。

入ったときと一緒で龍夫を先頭に建物から出たとき、龍夫が突然「下向け!顔をぜったい上げるな!」と怒鳴った。

え?と思ったが、言われるまま龍夫の足元を見ながら建物の敷地を抜けようとすると、途中で誰かにすれ違った。

そいつを一言で表現すると《青》

自分はそいつの足しか見てないが、老人の裸足で色が不自然な青の濃淡だけで見えている。

昔は五百円札みたいだと思ったが、今なら千円札の野口英世があの色合いのママ立っている感じだった。

自分はそんな奴が近くに立っていると思ったら怖ろしくなってきて、出来るだけ龍夫や裕司にくっついて歩いた。

龍夫は、神さま助けて下さい……みたいな事を呪文のように繰り返し呟いている。

自分と裕司は半べそで兄貴にくっついている感じで、もうひたすらここから出たいだけだった。

三人で早歩きになりながら、敷地の出入り口に向かうアスファルトの通路にでた。

自分は出口が近いと思ったら走り出したくなり、少し顔を上げたら後ろ姿の龍夫に、「あと二人いる!頭下げろ!」と怒鳴られた。

見ないで自分が顔を上げた事に気付いた龍夫に驚いたが、龍夫の声の感じが何時もと全く違うのと言った内容にビビって直ぐ下を向いた。

暫く歩くと金網が揺すられる音がして、龍夫が出入り口の隙間から出ようとしているようだった。

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見える龍夫の足が尋常じゃないぐらい震えている。

龍夫が外に出た後で、まだ敷地内で下を向いている裕司と自分に差し出す手も震えていたが、その理由は直ぐに判った。

……確かに二人目はいた。

自分は足をチラッと見ただけだったが、さっきの老人の足とは違う若い女性の足で、くるぶし辺りが縦に数センチ裂けている感じに見えたが、皮膚も裂けて見えている肉も青かった。

龍夫はまださっきの祈りみたいなのを続けている。

祈る声が時々うわずったりして精神的にきつそうだったが、年下の二人を連れている事もあって頑張っていたと思う。

自分と裕司は龍夫にすがるような気持ちで、並んで龍夫の後ろを並んで龍夫の手を掴んで進むしかなかった。

山道を下りる時も龍夫は祈りを繰り返しながら、時々自分たちに「あと一人いるはずだから下向いてろ」みたいなことを言っていた。

もうすぐ山道を抜ける所まで来たとき、自分は安心感から(と言うより安心したかったかも)頭を少し上げて前を見たが、道の先に誰も立っていないことに本気で安心したが、やはり甘かった。

最後の一人は、進む先の路上から4メートル位の高さに時々ブレながら浮かんでいて、今じゃ見ないような結った髪型の着物を着た青い女が半笑いでこちらを凝視していました。

自分は怖さの余り龍夫にしがみついき、龍夫は自分がそれを見たのが直ぐに判ったようで、自分を抱えるように歩いてくれた。

そして日が落ちた頃にやっと祖父の家についた。

出迎えた祖父は怪我でもしたのかと心配して聞いてきたが、龍夫がそれを見た事とちゃんとお祈りしながら帰ってきた事を話すと家中が大騒ぎになったのを覚えている。

祖父と親父は慌てて供え物をもって何処かにでかけ、後から来た伯父も親父達の後を追って出かけていった。

祖母や母、伯母は祖父の家に残ったが、伯母は大泣きで龍夫に付きっきりだった。

自分と裕司は起こったことが良く判らなかった。

しかし、龍夫が夜になると熱を出し始め、龍夫が死んじゃうんじゃないかと心配になって横で泣いていたが、祖母に他の部屋に移されて寝かされた。

次の朝、祖父母の家から全員で少し山を登った所にある墓に手を合わせに行くことになった。

熱の下がってきた龍夫も伯父に背負われていた。

誰の墓だか良く判らなかったが、墓は古く少し大きめの石を土台に据えた感じのものだったと覚えている。

自分の家系の氏神か何かかもしれないが、社とか無かったから只の墓かもしれない。

後は帰っただけなんでこの話は終わりです。

後日談としては、祖父の葬式の時に久しぶりに龍夫にあって話をしましたが、その時の話をすると龍夫は

「オレが彼奴らにヤられたらイカレてお前ら殺してたから、気持ちで負けん様に必死だったよ。お前は分家だから取り憑かれないけど、裕司が見てたらやばかったかもな」

みたいなことを言っていました。

うちの家系って祟られてんのか?と思って少し怖かったかな。

(了)

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