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短編 山にまつわる怖い話

謂れの多い山

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わたしは山に行くのが好きで、何人かでよく出かけていました。

そこは初めて行った山だったのですが、山道に沿うように林道が曲がりくねり、山の上を目指して登っていました。

昔から何かと謂れの多い山のようで、そのほとんど頂上に近いところに、なぜか大きなお寺がありました。

昔は住職がいたらしいのですが、今では訪れる人もなくお寺は荒れ放題になっていると、案内書にはかいていました。

途中に小さな集落が有ったのだそうですが、山津波で山もろともに飲み込まれたという話があり、その慰霊のためにそこのお寺を建立したということも聞きました。

確かに山に登る途中に、集落の後らしき石垣や廃屋のあとだろうと思うようなところもあっちこっち見かけて、あまり気持ちの良いものではありませんでした。

登ってみると、お寺は荒れ果ててみる影も無い状態で放置されていました。

林道はその横を縫うように通っていましたが、途中が土砂崩れでいまはほぼ廃道になっていると思われました。

何となく気持ちが悪い思いでしたが、峠に出ると思えるその道を草を掻き分けて登っていくと、一台の軽トラがありました。

広場になっていてUターンが出来るくらいの場所に、草にうずまるようにその車は隅のほうに止まっていました。

不思議に思ってみると、ナンバープレートも付いていてドアのロックもしてありません。

車は比較的新しく、荷台にはロープなども有りました。

最近動いた雰囲気もなく、タイヤ跡もありません。

異様な雰囲気の場所柄ということも有って、帰って車のナンバーと状況を警察に連絡をしておきました。

すると一週間ほどした頃でしょうか。

警察からその車の事情が分かったと連絡がありました。

「ご説明しましょうか」と警察は言ってきましたが、私は結構ですと言い、断りました。

あんな謂れの多い山の中に放置したとすれば、盗難とは考えにくく、自殺ではないかと思い、聞くのが耐えられなかったのです。

それで、二度と行く気のしない山となりました。

(了)

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