短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

父親の会社の社員団地に住んでいた【ゆっくり朗読】1557-0101

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幼い頃の話

884 :本当にあった怖い名無し:2018/11/28(水) 12:59:26.55 ID:HVUZTrlf0.net

当時自分は父親の会社の社員団地に住んでいた。
隣の家にkちゃん、1つ上の階にNちゃんという同じ年の子が住んでおり、毎日3人で遊んでいた。

ある日団地の公園で遊んでいたとき、
Nちゃんが「おやつの時間だから一旦帰るね。みんなの分も持ってくるから」と言うので、kちゃんと二人でNちゃんを待つことにした。
公園で待っていると雨が降ってきたので、Kちゃんが「雨だから帰ろう」と言い出した。
僕も帰ろうと思い、公園から団地の棟がある方へ階段を上って行った。
そして階段を上りきったら雨が止んでいた。二人して「あれっ?」てなって、また階段を降りると雨が降っている。
Kちゃんが「S君(僕)はそこで待ってて」と言い、階段を走って上ると、
階段の上から「やっぱり晴れてる!S君そっちは?」と聞いてくるが、
公園は雨がざんざんと降っているので、その事を伝えて階段を上るとやはり晴天だった。
Kちゃんが「お母さんに言ってくるからS君は見張ってて!」と言い、家に走って行った。
友人二人に待っててと言われて、階段の上(晴れてるところ)で待っていたけど、
なかなか二人とも戻ってこないので、遅いなと思いつつ雨の公園に戻ったり、階段を上って晴れを確認したりしていた。

公園に降りて水溜まりでバシャバシャしていると、
ピンク色の自転車に乗ったおじさんがやってきて、「こんなところで何してる?」と聞いてきたので、
「友達を待っている」と答えると、
「ここで待っていたらダメだ、早く帰りなさい」と言われた。
でも友達を二人も待っていたので、家に帰ろうとはしなかった。

すると「おもちゃを買ってあげるから帰りなさい」とか、「お菓子を買ってあげるから帰りなさい」とか気前のいいことを言ってくるので、
「カールが食べたい」と伝えた。
一度家に帰ったらカールを買ってくれると言うので、一度家に帰るからここに持って来てと約束をして、一度家に帰ることにした。
僕としては一瞬家に帰ってすぐ戻り、カールをゲットするつもりでいた。

家に帰る途中にNちゃんにすれ違った。
ここは晴れているけど公園は雨が降っていること、
ピンクの自転車に乗ったおじさんがカールを買ってくれることを伝えると、
「うそ!早く行こ!」といい公園へ向かって走って行った。

僕はカールを買ってもらえるのが嬉しくて、家に帰る前に隣の家のKちゃんにその事を伝えに行った。
Kちゃんも「え!すぐに行こう!」と言い、家を飛び出してきた。
僕は自分の家の玄関に入ってすぐに家を出て、Kちゃんと一緒に公園に戻ろうとした。
しかし、Kちゃんは公園ではなく隣の棟に向かって走り出した。
「違うよいつもの公園だよ」と言って階段の方へ行こうとしても、Kちゃんは不思議そうな顔をしている。
僕はカールを食べたいのと、Nちゃんが待っていることを思い、Kちゃんを引っ張るように階段の方へ進んだ。

階段を降りると、そこには自転車置き場があるだけで公園はなかった。
Nちゃんもピンクの自転車のおじさんもいなかった。雨も降っていなかった。
僕は焦りKちゃんに確認をとってみたが、Kちゃんは「二人で遊んでいる途中におやつの時間になったから家に帰った」という。
そして「さっきまで遊んでいた公園は隣の棟にある公園だった」と言うし、雨なんか降らなかったと言う。
どうも話が噛み合わない。
おやつの時間で帰ったのはNちゃんだし、いつも遊んでいる公園は僕らの住む棟にあったはずだ。
そもそもKちゃんも一緒に不思議な雨を体験したはずだった。

その後ピンクの自転車のおじさんは現れることはなかった。
また、Nちゃんも僕らの所へ戻っては来なかった。
僕はカールを食べ損ねて悔しがっていた。

そして夕方になり家に帰った。
公園では雨が降っていたのに階段の上は晴れていたり、あったはずの公園がなくなっていたり、
不思議なことが起こっていたのに、僕はカールを食べれなかった悔しさでそれらのことをあまり深く考えてはなかった。

翌日、僕はいつものように1つ上の階にあるNちゃんの家に行き、
ドアについてる新聞受けを開けて「Nちゃん遊ぼうー!」といつものように声をかけた。
しばらくして出てきたのはNちゃんのお母さんだった。ドアを開けるといつものNちゃんの家のいい臭いがした。
Nちゃんのお母さんは「S君こんにちは、どうしたの?」と聞いてきたので、「Nちゃんと遊びにきた」と言うと、
不思議そうな顔をして「Yちゃんはまだ小さいからS君と一緒には遊べないのよ」と言う。
Yちゃんは少し前に産まれたNちゃんの妹だ。
僕は???になってもう一度Nちゃんのことを聞いたけど、うちにはNちゃんなんて子はおらず、Yちゃんは一人っ子だと言う。
不思議に思ったけど、かわいいYちゃんにも会いたかったので、少し家にあげてもらった。いつもと変わらないNちゃんの家だった。

僕はそのまま階段を降りてKちゃんの家に行き、同じように新聞受けからKちゃんを呼んだ。
出てきたのはいつもと同じKちゃんだった。
昨日の雨のことを話したが、Kちゃんは覚えてなかった。
それどころかNちゃんのことも覚えていない。というよりも、元々知らないかのようだった。
昨日の雨やNちゃんの存在がなかったかのようになっていた。
やりきれない思いがあったが、その日の夕方に父がパチンコの景品を持って帰ってきた。
その中にカールが何個かあり、Kちゃんにもお裾分けしたのを覚えている。

当時僕は5才。今とは違い母親は専業主婦が多かった時代。
幼稚園に通っていない子供も多くいて、僕、Kちゃん、Nちゃんも例に漏れず幼稚園には行っていなかった。
子供は子供同士で遊ぶのが当たり前で、親と一緒ということはまずなかったため、親に聞いてもこの不思議な出来事の確認はとれない。
Nちゃんが存在したのかどうなのか、あの雨やなくなった公園は何なのか?それらを確認できるのはKちゃんだけ。
そのKちゃんの記憶も僕の記憶とは全く違うものになっており、確認すらできない。
幼かった僕の思い違いかも知れないが、僕の中の事実は今も変わらない。

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