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となりの子の手 n+
2025/11/30 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 消毒液と古い布団の湿気が混じった、あの大学病院の空気。 覚えているはずがない、と何度も言われたのに、天井の黒ずんだ輪郭や、廊下の奥の湿った闇だけは、どう ...
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説明のつかない乗客 n+
2025/11/30 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025, オリジナル作品
朝、目が覚めたら、ベッドの横に見知らぬ自分が座っていた。 見知らぬ「自分」という表現はおかしいけど、そいつはどう見ても俺だった。寝癖の向きまで、全く同じ。 「時間ないよ。いつまでも驚いてないで、着替 ...
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地底の駅で待っていたもの n+
2025/11/29 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、彼が小学校の低学年~一年か二年の頃の出来事だという。 山に囲まれた集落の、夕方になると土の匂いが濃く沈む地域だったらしい。 話を聞くかぎり、光が斜めに射しこむ帰り道の空気は、ひとの背丈より高い ...
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金色の粉が落ちるまえ n+
2025/11/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
山に囲まれた町へ法事で戻った帰り、ひとりで小学校の通学路を歩いてみた。 舗装の継ぎ目に雑草が指のように生え、側溝の水はぬるい。斜面から染み出す湿気が、鼻の内側に苔のような膜を貼る。遠くで電柱が鳴ってい ...
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土の匂い n+
2025/11/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの土の匂いを思い出すたびに鼻の奥が痛む。 乾いた赤土と湿った木の皮の混じる匂い。小学校三年の夏、両親が旅行先で買ってきたハニワを居間に飾った日から、家の空気は少しだけ変わった。笑い声の裏に、 ...
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光の役目 n+
2025/11/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夕方の空の色を思い出せる。 雲の切れ間から漏れた光が、濡れた地面に反射して、町全体がぼんやりと金色に染まっていた。夏でもないのに、空気がぬるい。鼻をくすぐる草の匂いに混じって、線香のような焦 ...
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茶色いカーディガンの記憶 n+
2025/11/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
小学校の裏手に、使われなくなった汲み取り式トイレがあった。 鉄の臭いと湿気がまとわりつく、昼でも薄暗い場所だった。 少年は、壁に立てかけられた鉄の棒で蓋をこじ開け、中を覗き込むのが日課になっていた。底 ...
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精霊灯を返された日 n+
2025/11/24 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
まだ小学校に上がる前、祖父母の家に預けられていた頃のことだ。 どうして自分がそこにいたのか、両親は今でも理由を言えないらしい。あの沈黙を思い返すと、聞き返す気にもなれなかった。 祖父母の家は山の裾にへ ...
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あなた、私が見えるんですか!? n+
2025/11/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
駅前のタクシー乗り場は、終電を逃した人たちで薄くざわめいていた。 舗道にこぼれた雨粒が、街灯の光を跳ね返して、足元を曖昧にする。 私は携帯を耳に当て、友人の声に相槌を打ちながら、いつもの位置に並んだ。 ...
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余計な事しやがって n+
2025/11/22 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、うっすら喉の奥がざらつく。 乾いた紙と、焦げる寸前の埃が混じったような匂い。あれが合図みたいにまとわりついて、胸の奥に沈んでいた何かがじりじりと立ち上がってくる。 あの ...
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穴の裏に書かれた名 n+
2025/11/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも正月の炬燵の匂いを思い出すと、胸の奥にざらつく感触が浮かぶ。 皆が眠って静まり返った居間で、薄暗い電球が畳の上に滲むような影を落としていた。 年越しの余熱がまだ室内に残っていて、鼻の奥には餅を焼 ...
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朱の印の向こうで鈴は鳴らない n+
2025/11/20 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、舌の奥に鉄の味が立つ。 雨上がりの舗装に染み出す土の匂い。濡れた電線から、かすかにじりじりと音が漏れていた。友人Aの親から連絡が来て、駅前の喫茶店で話を聞いた帰り道だっ ...
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水の底を歩く煙 n+
2025/11/19 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、喉の奥がざらつく。 真夏の夜、湿った土とアスファルトの境目みたいな臭気。あれを吸い込むと、胸の中に古い校舎のような黴の味が広がるのだ。 その夜、家を出たのは午前一時を少 ...
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呼ばれていない席 n+
2025/11/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの夜の匂いを思い出す。 焼き鳥の焦げた脂、タレの甘さ、汗を吸い込んだ畳のにおい。鼻の奥に、それらがまだじっと残っている。大学の仲間と久しぶりに会おうという話になったのは、年明けすぐだった。社 ...
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音声入力の夜 n+
2025/11/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの夜の録音を再生する勇気が出ない。 スマホのストレージに残っているのはわかっているのに、指が勝手に止まる。削除すればいい。そう思っても、なぜか消せないまま三年が経った。 その録音は、大学最後 ...
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山道の怪談 n+
2025/11/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 山にまつわる怖い話, n+2025
大学時代の深夜、俺と山根は、夜更けにラーメンを食いに行った帰りだった。 思いつきで隣の市まで行ったせいで、戻りは真夜中をとうに過ぎていた。 街灯の切れた峠道は、昼間と違って肌に貼りつくような匂いを放っ ...
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天井を見上げていた n+
2025/11/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夜の天井を見上げる癖は、幼稚園の頃から続いていた。 小さな体をベッドに沈めると、目の前には白い平面が広がる。無地のようで、近づくと筆のかすれや塗りムラが見える。そこに淡い影が流れていくのが好きだった。 ...
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囁きの石段 n+
2025/11/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの国の空気を思い出すと、体の芯がざわめく。 旦那の転勤で暮らしたミャンマーの町。乾いた大地に強烈な陽射しが降り注ぐはずなのに、裏庭へ回ると湿った土の匂いが鼻を刺した。そこには旧日本軍が現地の人 ...
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空に『い』 n+
2025/11/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの「い」を思い出すと、喉の奥がざらつく。 小さな頃の空はいつも身近な図書館で、洗濯物の匂いと鉄の網戸の音が混ざっていた。あの匂いを嗅ぐと、たとえ十年以上経っても、日の光の温度まで引き戻されるの ...
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濡れた足跡と声なき伴侶 n+
2025/11/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
仕事に追われ、帰宅がいつも深夜にずれ込んでいたあの頃、 私は古びた安アパートに身を寄せていた。四万円の家賃に惹かれた部屋は、狭く薄暗い。廊下を歩くたび、壁紙の剥がれと湿気の染みが目に入る。雨の日などは ...
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二十三時三分 n+
2025/11/10 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
山奥に帰省すると、どうしても避けられない道がある。 舗装が途切れ、雑草に覆われた坂道を下りきったところに、竹藪の中に埋もれるようにして建った古い待合所があるのだ。屋根は苔に覆われ、雨樋は途中で折れて水 ...
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B君 n+
2025/11/09 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
その話を聞かせてくれたのは、大学の同期だった。 飲み会の席で酔いが回りきる前、ふと真顔になって語り出したのだ。 夕方のことだったという。夏の西日が部屋の床に四角く落ち、埃が光に舞っていた。彼は机に肘を ...
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対面の水 n+
2025/11/08 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの水のぬるさが忘れられない。 夏の終わり、駅近くの古びたビルの二階にあるレストランでのことだった。 平日の遅い時間だったせいか、店内には他に客の姿はなかった。冷房は効いているはずなのに、空気 ...
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祠の夢、晴れの呪い n+
2025/11/07 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
この話は、ある業界に入ったばかりの青年が体験したという、不思議で少し恐ろしい出来事である。 曰く、「ほんとうに怖かった。今も夢か現か、わからなくなる時がある」という。 業界では、神仏や見えざるものとの ...
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赤丸の向こう側 n+
2025/11/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
夢の話をすると笑われるのが嫌で、ずっと一人で抱えてきた。 子どもの頃から、何度も同じ夢を見ては、目覚めた瞬間に内容を失ってしまう。確かに「またこの夢だ」と夢の中では気づいているのに、朝には真っ白だ。残 ...
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水の舌、蛇の声、名のない呼び声 n+
2025/11/05 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 湿った石の匂い、ぬるい苔、雨を吸った杉皮。山の線が暗く膨らみ、谷から上がる風が舌の裏に金気を残した。私は調査の帰りに、村はずれの境の杭をまたいだとこ ...
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声の届かぬ夏の群像 n+
2025/11/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
大学二年の夏、祖母に頼まれてお盆の支度をしに車を出した。 午後の陽射しは濁って、アスファルトの上で揺らいでいた。窓を開けると草いきれと排気のにおいが絡みつき、肌に薄い膜を貼るようにまとわりついてきた。 ...
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黒い三角は空を覆う n+
2025/11/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今になっても、あのときの空の暗さを思い出すと、胸の奥がざわめく。 私はまだ中学生で、父の車に乗って釣りに出かける途中だった。朝の空気は澄んでいて、林の向こうから鳥の鳴き声が聞こえていたのに、あの瞬間だ ...
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🔴2025年10月31日犯人逮捕‼️《名古屋市西区主婦殺害事件》未解決事件推理考察 n+367
🔴2025年10月31日、愛知県警がついに被疑者を逮捕した。 殺人容疑で逮捕されたのは、名古屋市港区のアルバイト、安福久美子(やすふくくみこ)容疑者(69) 26年の時を超えて解決へ: ...
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風車の向こうに在るもの n+
2025/11/02 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの風車の音を夢に見ることがある。 くるくると、風に揺れるたび、キィ……キィ……と擦れる、紙と竹のかすかな摩擦音。何でもない、どこにでもある玩具のはずなのに、それがあれほど無気味に思えたのは、 ...
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窓を覗く女の夢路 n+
2025/11/01 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の夢を思い出すと、体の芯がざらつくように冷えていく。 普段、夢の記憶なんて目覚めれば霧散するはずなのに、あの光景だけは未だに色濃く焼き付いている。むしろ年月とともに少しずつ形を変え、どこか ...
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右側だけが増えていく n+
2025/10/31 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夏の午後の熱気を思い出すと、耳の奥で受話器の無音がぶるぶる震えるように感じる。 汗で指先がぬめるたび、ポケットの中の硬い紙片が擦れ合って、小さな音を立てた。小学四年の終わり頃から三年ほど、私 ...
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見知らぬ駅から続く世界 n+
2025/10/30 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの時の車内の静けさを思い出すと、背中の奥が冷たくなる。 二年前の七月二十八日、月曜の朝。夏休みももらえず、実家にも帰れず、会社へ向かう足取りは最悪だった。狭山の金剛駅から天下茶屋へ向かう途中 ...
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欄間の明滅 n+
2025/10/29 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 古い街道沿いの宿に泊まった時のことだ。木造三階建ての大きな建物で、瓦屋根の重みが軋みを孕んでいる。表には「創業三百年」と墨書きの看板が掲げられ、長い ...
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不可解の名を借りた呪詛 n+
2025/10/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
もう何年も前のことなのに、未だにあの夜の記憶をうまく言語化できずにいる。 まるで記憶の一部が水で滲んだように、断片的で、そして何より気味が悪い。 仲間内では未だに笑い話になっているが、あれを笑って済ま ...
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やまけらし様の靴音 n+
2025/10/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あの夜の湿気を帯びた空気を思い出すたび、未だに背中がじっとりと汗ばんでくる。 あれは確か、夏の終わり、蝉の声とひぐらしの声が交じり合う、どこか季節の境目のような日だった。 家は山に囲まれた集落にあって ...
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八年目の再会 n+
2025/10/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの街角の湿気を帯びた空気を思い出すと、喉の奥がざらつく。 一九九七年の六月二十六日、薄曇りで、アスファルトがぬめるような午後だった。 あのとき何が起こったのか――いや、何を「見てしまった」の ...
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きよめたまひ、はらいたまへ n+
2025/10/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
窓の外に差し込む夕焼けの光を思い出すと、今でも胸の奥がざわめく。 あの出来事は夢ではなかった、と確信しているのに、どうしても現実味が薄れてしまうのだ。私の家系には、少しばかり不思議な勘が働く血が流れて ...
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幻肢の記憶 n+
2025/10/24 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あの夜の病室を思い出すと、今でも胸の奥にひやりとした重みが残る。 私は小さな診療所を営んでいる開業医だが、入院設備も僅かながら備えており、救急指定も受けている。病棟の夜はいつも不気味な静けさに満ちてい ...
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十二階の外にあったもの n+
2025/10/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは幻覚だったのか、それとも私の足が一歩だけ別の世界に踏み入ってしまったのか…… いまだに答えは出ていない。 三年前のことだ。当時の私は学生で、生活費を稼ぐために運送のアルバイトをしていた。社員の男 ...
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光の角度 n+
今でもあの夜の匂いを思い出すと、胸の奥がざわつく。 鉄と湿った土が混ざった匂い。油の膜が薄く浮いた水たまりは、月を欠けた皿みたいに映していて、指先で触れると冷たさだけ残した。晩夏の夜気はぬるく、ブルー ...
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綻びの手のひら n+
2025/10/22 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
「ちょっと、君の手を貸してくれないかな?」 運転席から差し出されたその手は、不思議と温かかった。初対面なのに、触れた瞬間、指先から腕にかけて、何かが走ったような感覚があった。ビリビリとでもなく、ゾクゾ ...
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壷の中の水底 n+
2025/10/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの壷の重さを思い出すと、腕の奥にひやりとした感触がよみがえる。 ずっと昔、私が中学生だった頃、夏の終わりに起きた出来事だ。 私の実家は郊外の古い一軒家で、建て増しと補修を繰り返してきたせいで ...
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つかまえた赤 n+
2025/10/20 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
先週の金曜、夕方のことだった。 職場を出て、コンビニの駐車場で煙草に火を点けたそのとき、ポケットの中で携帯が震えた。警察署からの電話。一瞬、心臓が跳ねた。事故?違反?それとも誰か……いや、俺には思い当 ...
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五度目の彼女 n+
2025/10/19 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの盆の夕暮れの匂いを思い出すと胸の奥がざらつく。 線香の煙がゆらゆらと部屋の天井を撫でていた。俺とAは黙ったまま、黒い位牌の前に座っていた。その家は以前と何も変わらないはずなのに、四人で過ご ...
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父と河童 n+
2025/10/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今になっても、あの夜の川面に浮かんだ光景を思い出すと、喉の奥がじりじり焼けるように渇いてくる。 父が酒に酔って口にした「河童」の話を、子供の頃の私は夢物語だと笑い飛ばしていた。だが、笑った舌の裏には、 ...
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青の揺籠に抱かれて n+
2025/10/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でも、あの時に見た深海の青色を思い出すと、胸の奥に何とも言えないざわめきが広がる。 数年前の夏、私は趣味のスキンダイビングで海に潜っていた。酸素ボンベなど大げさな装備はなく、ただ肺の中に溜め込んだ空 ...
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山奥に眠る声 n+
2025/10/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
学生時代に一度だけ、口外すまいと固く決めた出来事がある。 だが年月を経ても胸の奥底に澱のように沈み、夜ごと耳鳴りとともに蘇る。黙っていても腐臭のように漏れ出しそうで、ついにこうして文字にしてしまうのだ ...
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祖父のこと n+
2025/10/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
今でもあの夜の玄関に立ち尽くした影を思い出すと、心臓の奥がひやりと冷える。 私は祖父のことが人一倍好きだった。背が高く、腹の出た体格をしていながら、眼差しは穏やかで、滅多に多くを語らなかった。しかし黙 ...
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いとこの子 n+
2025/10/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2025
あれは、真夏の午後だった。 陽炎が立つような暑さのなか、畳の匂いと蝉の声に包まれた縁側で、俺はぼんやりと座っていた。足元には、幼い子どもが一人。いとこの子――まだ二歳かそこらの、小さな男の子だった。 ...