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短編 工事現場の怖い話

血まみれの職人【ゆっくり朗読】#761-1220

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晩夏の夜、月明かりだけが建設現場をぼんやりと照らしていた。

1 :血まみれの職人:2023/07/26(水) 11:51:15.18 ID:r8sjRwnf7
新米現場監督の俺は先輩と一緒に夜の現場の見回りが日課になっていた。
広大な建設現場の一角には鉄筋工たちが飯場を構えており、職人たちが酔っ払って騒いだり、職人同士が喧嘩したりする。
鉄筋工たちの騒ぎが近隣住民から警察に通報され、犯罪防止のための見回りが必要となったからだ。

現場パトロールを始めてから、職人たちはおとなしくなった。
しかし、その平穏な時間は一変した。
懐中電灯が照らし出すその先には、血まみれの職人が倒れていた。

職人の顔は苦痛で歪んでいて、その口からはむせかえるような呻き声が漏れていた。急いで職人の元へ駆け寄り、何が起こったのか尋ねた。
しかし、職人の意識は朦朧としていて、何を言っているのか理解することができなかった。

今月は安全月間。現場の事故を防ぐため、俺は釘の出ている型枠を片付けたり、鉄筋の先端にゴムキャップを被せたり、細心の注意を払っていたのにだ。なんでこんなわけの分からない事故が起きてしまったのか。
血まみれの職人を思いやるより、事故が起きてしまったことが悔しくて仕方なかった。

とりあえず首に巻いていたタオルで応急処置をしながら、何でこんな事故が起きてしまったのか、あれこれ考えていた。この事故の原因を究明しなければ、所長に報告もできない。気の弱い先輩は大量出血をみておろおろするばかりだ。

その時、先輩がハッとして叫んだ。
「セイスケ!きゅ、きゅうきゅう、きゅう救急車、救急車!」
そうだ、すっかり忘れていた。救急車を呼ばなくては!

慌てて救急車を呼んで救急隊員に応急処置をしてもらい、直ちに病院に向かった。しかし、なかなか職人の血は止まらず、彼の意識は次第に遠くなっていた。病院に到着してから約30分が経過した時、彼は静かに息を引き取った。失血死だった。

血液量の40%以上を失うと、心停止や意識喪失が起こり、直接的に生命に危険が及ぶという事実を、俺はその時に初めて知った。

医師から聞いた話では、人間の体内の血液量は通常5~6リットル程度。それが急激に減少すると、血圧が低下し、重要な臓器に血液が供給されなくなる。特に心臓や脳への血液供給が不足すると、生命維持が困難になる。だから、大量出血があった場合、迅速な医療対応が必要だという。

その現実を目の当たりにしたとき、俺はお釈迦様の毒矢の教訓をふと思い出した。お釈迦さまのその喩え話には、兵士が毒矢に当たったとき、その矢を抜かずに何者が撃ったのか、何の毒を使ったのかを探ろうとする者が描かれている。
そのようにして時間を浪費しているうちに、兵士は毒によって死んでしまう。その故事が示す教訓は、緊急の問題が起こったときには、原因を問うよりもまず問題を解決するべきだということだ。

その後、何ヶ月かして、現場事務所で休憩していると、秋田から出稼ぎに来ていた造作大工が倒れたという報告を受けた。
俺と先輩は急ぎ足で3階まで上がり、その職人を現場事務所まで運んだ。
身体をゆすって大きな声で名前を呼んでも反応がなく、目を閉じたまま動かない。いびきをかいて寝ているような状態。
とりあえずパイプ椅子に座らせて目を覚ますように身体を揺すり続けた。
もちろん、すぐに救急車を呼んで病院へと急いだが、結局、その職人も残念なことに亡くなってしまった。死因は脳溢血だった。

夜、俺はうなされた。夢の中で、うらめしそうな顔をした職人が現れた。
彼は何かを訴えようとしているようだった。その時、俺は思い出した。脳溢血の場合、動かしてはいけないという事実を。無知から人を殺すこともあるという重い教訓を。

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