以前、運輸業界紙の記者をしていたときのこと
654 :本当にあった怖い名無し:2006/02/26(日) 02:42:13 ID:16WM6Inf0
ある日、取材のために某タクシー会社を訪れ、社員食堂で昼食をとった。そのとき、一人のタクシー乗務員が大きな声で話しているのが耳に入った。「誰か俺にもぶつけてくれねーかなー。仕事しなくても済むしよー」と。興味を引かれ、彼に話を聞いてみた。
彼の話によると、ある乗務員が軽い追突事故に遭い、以来、10年間も仕事をせずに保険金で生活しているという。しかも、その事故は軽微なものだった。「俺だけじゃないよ。タクシー運転している奴は同じこと考えているのも多いから」と彼は続けた。その言葉は、私に強い印象を残した。
実は、全国に何十万台と走っているタクシーは、自賠責保険しか加入していない。事故が起きると、会社の事故担当が保険会社や当事者と交渉するシステムになっている。これらの事故担当はベテランばかりで、ぶつけた場合の補償は最小限に抑え、ぶつけられたときは最大限に保険金を引き出す。保険会社の担当者など恐れることなく交渉に臨むのだ。
この話を聞いたとき、ふと過去に交通事故を起こした際に警察官に言われた言葉を思い出した。「相手がタクシーじゃなくてよかったよ」と。その意味が、今になってようやく理解できた。
タクシー運転手たちが抱える暗黙の願望と、その背後にあるシステムの恐ろしさ。それは、私たちが普段目にすることのない、タクシー業界の闇である。