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■高野山奥の院

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309 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:02/09/19 00:10

私は仕事でアジア圏を中心に出張や短期駐在が多く、日本の風物が懐かしくなることがよくあります。そこで、休日には温泉や神社仏閣巡りを趣味にしています。

去年の夏、高野山に行ってきました。奥の院という霊域は、さまざまな有名人のお墓があることで有名です。その日は特に予定もなく、ふらりと足を運んでみました。奥の院を歩いていると、どうしても足が横道にそれて、関係のない墓に立ち止まってしまうのです。まるで何かに引っ張られているかのような感覚に襲われましたが、これも何かの縁だと思い、般若心経を唱えました。

すると、次もまた別の墓に引っ張られ、心経を唱えることになりました。それを何度も繰り返していると、時間の感覚がなくなり、気づけば3時間半も経っていました。通常なら入り口から弘法大師の御廟まで一時間強で戻ってこれるのに、私はそうした理由で大幅に時間を要しました。

高野山に来る前から左肩が重かったのですが、ひとつひとつの墓を過ぎるたびに、その重さが少しずつ軽くなっていったのです。そして、その夜、宿泊した旅館で不思議な夢を見ました。

夢の中で、私は馬や牛、犬、鳥、モグラやカワウソといった動物たちと円座になって酒を飲み、歓談していました。人間は私だけでしたが、枝豆や豆腐をつまみに楽しんでいると、霧が立ち込めてきました。

「そろそろお開きだ」と馬が言い、みんな片付けを始めました。皆がこっちを向いて「ありがとう」と挨拶してくれたのですが、「俺、何もしてないよ」と答えると、動物たちは人間の姿になり、軍服を着た人、レトロな背広を着た人、ドカチンスタイルの人、モンペを着た女性が手を振りながら霧の中に消えていきました。

そこで目が覚めました。あまりにも強烈な夢だったので、朝食をとりながら昨日の高野山のことを思い出していました。昨日たくさん拝んだ墓には、『海外物故者』『航空兵』『近衛兵』『陸軍なんとか』『海軍かんとか』といった文字が刻まれていました。きっと海外にいる間に私の身体に憑いて、ここまで一緒に来たのでしょう。それでわざわざ夢に出て、感謝の言葉を伝えてくれたのだと思います。

来る前に重たかった左肩も、今はすっかり軽くなっています。怖い話ではありませんが、私を驚かさないように愉快な動物たちの姿で来てくれたことが、嬉しくて悲しくもありました。

今度夢に出てくるときは、そのままの姿でいいよ。もう怖がらないから。

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