中学3年生のときの話。
501 :本当にあった怖い名無し:皇紀2665/04/01(金) 14:12:16 ID:RfHDy3mE0
土曜の夕方、塾帰りに地下鉄に乗った。出発地点の駅のため、発車まで数分間止まっていた。車内は土曜の夕方とは思えないほど空いていて、私は窓側の席に座った。次の瞬間、若い男が乗り込んできた。年齢は不明、10代か20代か、全く検討がつかない。身長160センチ、体重40キロに満たないような痩せ方で、頭は坊主、眉毛は太く、目は大きく見開いていた。インパクトのある姿に、私は思わず見つめてしまった。
男は周囲を見回し、私と目が合うと、空いている席が多いにもかかわらず、わざわざ私の隣に座った。少し警戒心を抱いたが、何も言わずに座り続けた。すると、男が突然「すみません」と声をかけてきた。「はい、何ですか?」と返事をすると、彼は白い女物の手袋を差し出し「この手袋をはめてくれませんか?」と言ってきた。
驚いて「どうしてですか?」と尋ねると、「お母さんに頼まれたので」と答えた。真剣な表情と目つきが冗談とは思えず、私は「出来ません!」と断った。男は無言で手袋を仕舞い込み、何かを考え込んでいるようだった。そのまま隣に座り続けるのは危険だと感じたが、刺激するのも怖かったので、無視を決め込んだ。
間もなく発車のアナウンスが流れ、男は何事もなかったかのように地下鉄から降り、ホームを早足で去って行った。その姿を見送ったとき、背中に冷たいものが走り、体中に鳥肌が立ったのを今も覚えている。
あの白い手袋をはめていたら、何が起こっていたのだろうかと、時々思い出しては気味悪く感じる。
それから1年後、高校で弓道部に在籍中のある日、部員たちが駅のバス停で「変な男に出会った」と騒いでいた。「手袋男!」と叫んでいたので、もしかしてと思い話を聞くと、私が中学時代に出会った男と一致した。やはり白い手袋を差し出してきたそうだ。
数年後、専門学校に通っていたとき、友達がバイトしていたダイエーの1階にも、その手袋男が何度も現れていた。従業員の間では有名で、「白い手袋?」と聞くと、「以前は白かったかもしれないが、今は決して白いとは言えない手袋だった」と苦笑いしていた。
その手袋は、中学時代に出会ったときから何年も経過してもなお、同じ手袋を使っていたのかもしれない。その考えはさらに気味が悪かった。手袋男の行動パターンは変わっていたが、存在自体が恐怖の対象だった。
その後、私は手袋男の噂を耳にすることはなかったが、もしまた出会ったらどうしようかと思うと、背筋が寒くなる。あの白い手袋は、どんな意味があったのだろうか。それを知ることは、きっと恐ろしいことに違いない。