シマナオさま
2006/01/29(日) 19:26:42 ID:ITFzVZ480
1998年頃、俺は当時高校生で夏休みの時期でした。
六年ぶりに、遠くに住んでる祖父母に会うと父が言いました。
夏休みも、もうそろそろ終わりで遊ぶ金も使い果たしたので暇つぶしにいいかなと。
祖母さん祖父さんもかなり歳がいってて、会うのもこれが最後かな……とか孝行のつもりでも行きました。
祖父母は、某県の*佐○島という田舎中の田舎に住んでました。
ビル等全く無く文明に孤立したような雰囲気でした。
ところどころに祠のようなものがありましたが不思議に感じたのが、それに祀っている物です。
普通は、お稲荷さんとか狛犬とかじゃないですか。
でも島中のほこらで祀ってるのは《目が一つの子供》
よく、一つ目小僧とか、単眼入道とか、サイクロプスとか出てきますよね?
……そんな感じなんですよ。
まぁこの島の伝統上の神様なんだろうな、とあまり気にはしませんでした。
港から車で一時間、祖父母の家に到着。
ぼろくせぇんだろうな、と思ってたが自分の家とあまり変わらず、中も案外綺麗でした。
祖父さんは「おっきくなっとんの!」と大袈裟に歓迎してくれました。
居間にいき、デジャヴが起こりました。
掛け軸のようなものが飾っており、そこにはここにくる途中に見た一つ目の子供の絵がかかれてました。
俺は祖父に《これ》についてたずねてみると
「これはぁな、不吉の象徴なんじゃ」
「不吉? なんでそんなもんまつっとんの?」
と俺は再度尋ねてみる。
「辰眼童さま(しまなおさま)といっての。わしら愚かな島民が産み出したのじゃ……」
祖父さんは少し暗い顔になった。
俺は尋ねるのをやめた。
家にいてもやることもないので外に出てみた。
家のすぐ裏には丘があり何気なく登ってみる。
丘の頂からみた景色は結構良く、ずっとここにいても飽きが来なかった。
眠たくなったので横になり、すぐに眠ってしまった。
そして眼が覚める。
もう日が暮れていた。
彼奴等も心配してるだろうと思い、体を起こし家に帰ることにした。
「キェィィィィ」
突然、俺の右側から猿のような女のような、子供のような変な呻き声が聞こえてきた。
俺はビクッとしたが、地元の子供が騒いでるのだろうと気にはしなかった。
丘を降りようとしたとき、後ろから声がした。
子供の声だった。
なんて言ったかはわからんかった。
後ろを振り返ると、二~三歳くらいの子供が立ってた。
暗くてよく顔はわからなかったけど、褐色の半纏のようなものを羽織ってた。
「ハッゼテ!ハッゼテ!」
と、意味がわからない言葉を発してた。
声にも違和感があり、鼻声(?)みたいな感じで掠れてた。
その子供は俺に手を差し出した。
何かをくれるような仕草だったので、俺も何も考えず手をだした。
子供は俺の手に《何か》を落とし、スゥー……と消えていった。
俺はポカーンとしてたが、ふと我に返り、家に帰った。
玄関は明るかったので、さっき子供が俺に手渡した物を確認した。
……首飾りだった。
薄汚れた紐にリング状のすべすべしたものがぶら下ってた。
汚かったのでとりあえずゴミ箱に捨てた。
祖父さんや父さんに先のことを言おうとしたが、やめといた。
そして夜も更け、寝床につく。
昼に寝てしまったせいか、寝れない。
自分はそんなの関係なしにぐっすり眠ってしまう体質なんだが、眠れなかった。
「ナシテ……」
寝室の窓のほうから声が聞こえた。あのときの、子供の声だ。
俺はハッとなった。
「ナシテ……ナシテ……ステオッタ」
確かにあの掠れた"鼻声"だった。
俺は怖くなって布団をかぶった。
すると子供の声がだんだんと近づいてくるのに気づいた。
あ……やばい。と思った瞬間、俺の足を誰かが踏んだ。
俺は「わぁぁっ!」と叫び起き上がった。
月の光でそいつの顔が照らされてた。
またしてもデジャヴ。
それは祠に飾られてた《辰眼童》の顔だった。
兎口に鼻がなく、大きな一つの眼が顔にあった。
髪の毛は頭のてっぺんにちょんと乗った感じ。
俺はもうここで死んじゃうんじゃないかというくらいな動揺具合だった。
そいつは俺の手をギッとつかむと、またもすっと消えてしまった。
隣で寝てた親と祖父母が駆けつけてきた。
「どしおった?」
祖父さんが聞いてきたので、俺は一言だけこういった。
「今、辰眼童に会ったよ」
祖父さんと祖母さんはそれを聞くとかなり驚いてた。
「まっことか!?辰眼童様に会ったのけ!? 祟られたのか!?」
祖父さんがすごい形相で俺に尋ねてる横で両親は困った、というかあきれた顔をしてた。
俺も何も言えなくなった。
そしてすぐにゴミ箱に捨てた首飾りを探した。
でも何故か無かった。
朝になっても俺は鬱状態だった。
縁側の近くで崩れた状態で座ってるおれの前に、祖父さんが寄ってきて語り始めた。
「七十年くらい昔にな、とある兄妹がおった」
なんの話だ?と思ったが、俺はとりあえず耳を傾けた。
「その兄妹の仲はとてもよかったがな、愛は歪んでおった。
ある日、妹の腹に兄との子ができたことがわかったのじゃ。
島の宗教上、血の繋がった者が交わるのは過剰に禁じられていた。
禁を犯した者は処刑されるという厳しい掟があったのじゃ。
そして、その兄妹も処刑されることが決まったんじゃ。
しかし兄妹はそれを拒み、かけおちをしてしまった。
島民どもは島から兄妹を出さずにと船を出すのを禁じ、血眼になって兄妹を探した。
そして山奥の古小屋でその兄妹を見つけたんじゃ。
妹は赤子を抱いておった。
産んでしまったのじゃ。
それを見つけた島の男がその赤子を妹から横取り殺そうとした。
しかし、その男は悲鳴をあげその赤子を放り投げてしまったんじゃ。
その赤子は、目が一つしか無かった。
とにかく、兄妹と赤子を島の奉行所に連れて行ったのじゃ。
兄妹はすぐに首をはねられたが、一つ目の赤子を殺すと祟られるのではないかと皆は思い、処刑を延ばした。
しかし生かしておけば尚更禍がおきるであろうと、その赤子をも殺したのじゃ。
その赤子には魂をも滅しようと岩石で頭を潰し体を切り刻み海に捨てるという、酷な処刑法を施した。
赤子を処刑し数日が経ったであろうか、兄妹を処刑した三人の奉行人が死んだんじゃ。
そして赤子を処刑した奉行人、兄妹捜索に協力した三十人の島民が相次いで死んだ。
島民等は、一つ目の赤子がこやつ等を葬ったのと考えたのじゃ。
そして、それから年に一人、幾処の産まれて間もない赤子が死んだ。
島民等は一つ目の赤子の呪いじゃと思い島中に赤子を祀るほこらが作られたんじゃ……
今でもその赤子は時たま島民の前に現れ、母がくれたのじゃろう首飾りを渡しているそうじゃ。
なぜ首飾りを渡すのはわからん……」
祖父さんはそれを言い終わると立ち上がり、自分の部屋へと戻っていった。
俺はそれを聞くと、とても悲しい気分になった。
それから八年、まだ祖父母は健在だ。
一年にいっぺん祖父母のとこに行っている。
(了)
参考資料:一目入道
一目入道、一つ目入道(ひとつめにゅうどう、いちもくにゅうどう)は、佐渡島(新潟県佐渡市)の加茂湖に棲んでいるといわれる妖怪。
一目入道は加茂湖の主であり、頭上に一つ目を持つ。ある日、一目入道が湖から上がってみると、1頭の馬が繋がれていた。入道は好奇心から馬に跨り、遊び始めた。
そこへ馬主がやって来て、入道は捕らわれてしまった。陸上では入道も手も足も出ず「ご勘弁下さい。その代わりにこれから毎晩、瑠璃の鉤で一貫の鮮魚を捕らえて献上します。
但し魚を採るのに必要なので、鉤だけはお返し下さい」と言った。馬主は面白がって約束を受け入れ、入道を放した。
翌朝に馬主が湖へ行ってみると、約束通り取れたての魚が鉤に掛けられていた。馬主は喜び、入道が言った通り鉤を湖へ返し、魚を持ち帰った。
こうしたことが何年も続いた。
ある日、馬主は悪い考えを起こし、約束を破って鉤を返さずに持ち帰った。
すると入道は魚を貢がず、それどころか毎年正月15日に馬主の家を襲うようになった。
馬主は一晩中念仏を唱え、危機を免れようとした。こうして入道の祟りが無くなった頃、馬主は観音堂を建て、本尊の白豪(びゃくごう。仏の眉間にあって光を放つという白い毛)に入道の鉤をはめた。
上記の伝承は、中野城水『伝説の越後と佐渡』(初版・1923年)および、それを参考に編集された巌谷小波による説話大百科事典『大語園』の該当項目によるものだが、馬主は約束を破って以降の顛末は、以下のような別説もある。
馬主は約束を破って鉤を返さず、商人に大金で売り払った。すると入道は毎年正月に馬主の家を襲うようになった。馬主は一晩中念仏を唱えて危機を免れようとしたが、そのために狂死して一家は絶えてしまった。入道の祟りを恐れた村人たちが観音堂を建てて馬主の霊を供養し、ようやく入道は現れなくなった。
馬主は約束を破って鉤を返さずに持ち帰り、観音堂の本尊の白豪に入道の鉤をはめた。
すると入道は毎年正月に馬主の家を襲うようになった。そのために観音堂を守る家では、その日の夜は仏前で一晩中祈祷を行い、観音堂の境内では村の青年たちが護衛を務めることになった。
16日朝になると一目入道たちは、彼らを前にして退散して行くのだという。
新潟県両津市潟端の中野浦観音堂では、1月16日に「目一つ行事」といって、堂をのぞき込む入道から本尊の観音を守るため、男衆が堂にこもり、大声や物音で入道を追い払う行事がある。
[出典:Wikipedia]