人殺しにつきあわされた話。フィクション多数。多分時効だと思う。
163 :名無しさん@おーぷん :2014/11/11(火)22:14:20 ID:17ndlsgLL
俺が学校卒業して、就職してちょっとたったくらいのはなし。
地元の零細企業。まぁ、なんだかんだでいろいろあった。
人間関係はよかったと思う。大人にもいろんなタイプの人がいるなぁと思って、すごく勉強になって楽しかった。
あの事件が起こるまでは……
きっかけは飲み会。そこで長谷山さんがブチギレる事件があった。
酔った虻川さんが、つい年上の長谷山さんの仕事にダメ出しをした。
まぁ酔った席の話だし、長谷山さんも笑ってすませればそれでよかったんだろうが、そうはならなかった。
長谷山さんはもともと極道の世界にいたそうだが、スジを通すより優しさを優先するあまり、組長から「お前はこの世界には向かない、カタギになれ」と言われた人。
そんな彼にとって、スジは通さない、優しさもない虻川さんの言質を許せなかったみたいだ。
長谷山さんの怒りはその日だけでは収まらず、虻川さんを追い詰めていった。
長谷山さんいわく、虻川さんは仕事の上で不正を働いていた。
その不正は虻川さんのみならず、岩井川、佐沢、八柳……とたくさんの同僚をもまきこんでの上で。
長谷山さんはその不正の証拠をつかんでいた。
そしてそれを公開する、と興奮してまくしたてていた。
俺は、幸か不幸かその不正には絡んでいなかったが、公開されると億単位の賠償責任が発生するのはあきらかだった。
俺はその企業に恩もへったくれもなかったが、それをすると、そこの不正に関係しなかった人たちも路頭に迷うと思い、長谷山さんを説得した。
今でも、それが正しいかどうかはわからない。
その不正は、どこの誰にも損を与えないものだったからだ。(バレなければという前提、ここは詳しく言えない)
……今思うと、俺もいやしい。
結局は自分の利益で説得をしていたのかもしれない。
結局、長谷山さんは落ち着きを取り戻し、その日は帰っていった。
だが次の日の夜、事件は起こった。
虻川さんから電話があり「長谷山さんと和解できそうだ。中立の立場として立ち会ってくれ」と。
俺は時間外であったが、これも仕事と思い、和解ならと喜んで付き合うと同意した。
車で迎えに来た佐沢さんと向かった先は、なぜか近場ではあるが人がこない山林だった。
異様な雰囲気、そして多くを語らない佐沢さんがすごく不気味だった。
山林の中のひらけた場所を落ち葉を踏みながら、すすんでいくとそこには長谷山さんと彼を取り囲む、虻川、岩井川、八柳さんと見たことない人が数人いた。
長谷山さんは、落ち葉の上に正座をして、嗚咽をあげながら泣いていた。ヒィヒィと声をあげて。
虻川、佐沢、八柳さんは「遺書を書け」とせまっていた。
長谷山さんは「書けません」と泣きながら言っていた。
そこからは、もう記憶がほとんどない。
場面も飛び飛びで鮮明に語れない。
ぼんやりとした記憶からは、長谷山さんは自殺をせまられていたこと。
長谷山さんは家族を恫喝のネタにされていたこと。
決して和解の席なんかじゃなかったこと。
気がつくと俺は自分の家の前で車を降ろされていた。
フラフラと眠りについた。
次の日同僚から、長谷山さんが山林で自殺したと告げられた。
俺の昨夜の行動なんて言えやしない。
自分の心にフタをして、沈痛な面持ちで通夜に参列した。
長谷山さん奥様の「お手数をかけてすみませんでした……」の言葉が俺の胸に今も刺さる。
今でも俺が戸惑うのは、虻川、岩井川、佐沢、八柳さんが決して、悪人ではなかったいう点だ。
普通にいい人で、よき家庭のパパなのが恐ろしくてしょうがない……
こんな話はツレにも誰に言えない。
現在俺は、地元の田舎から引っ越して都心で仕事をしているが、しょーもないイビリをやる上司を見るたびに、『相手がどんなパイプもってんのかも知れないのに……こいつ、命がおしくねーのかな?』って思う。
(了)
[出典:http://toro.open2ch.net/test/read.cgi/occult/1395334657/]