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短編 山にまつわる怖い話

人間狩り【ゆっくり朗読】5482-1230

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知り合いの話。彼がまだ若い頃、猟のため山に籠もっていた時のこと。

夜、焚き火の側で猟銃の手入れをしていたという。

作業が終わり、小用を足そうと近くの繁みに足を向けた。

背後で物音がした。

振り向くと、手入れを終えたばかりの銃がない。

木立の奥に目をやると、細長い物を手にした人のような影が走り去っていく。

慌てて追い掛けたが、影はあっという間に暗い山の中に逃げ込んでしまった。

「一体アレは何だったんだ?」

全身が黒い毛で覆われていて、若干前屈み気味だったが、間違いなく二本の脚で走っていた。

体付きからして人ではない。

腕が長く、それに比べて脚は大層短かった。

しかし、猿にしては大き過ぎる。

パッと見、寸足らずなゴリラを連想したそうだ。

胸騒ぎがした。

焚き火の周りには、まだ片付けていない剥き出しの糧食があった。

なのにそれには目もくれず、アレは銃だけを掴み山へと逃げたのだ。

とても眠り込む気にはなれなかった。

火を絶やさないように気を付け、翌朝早々に山を下りることにする。

護身用の山刀を握りしめ、夜が明けるのを待った。

無事に朝を迎え、山を下っているその途中……

どこかで乾いた破裂音がした。

間髪おかず、すぐ傍らの木の幹が爆ぜる。

「狙撃された!?」

理由はないが、昨晩盗られたあの銃で撃たれたと思った。

というか、それ以外考えられなかった。

頭を低くし、小走りでジグザグに木々の間を駆け下りる。

銃で狙ったことはあっても、狙われた経験などない。

獲物が狙いにくかった状況を頭の中に思い浮かべ、その時の獲物の真似をして必死で逃げた。

また破裂音が聞こえると、離れた繁みが揺れた。

幸い、狙撃手は腕が宜しくないようだ。

必死で逃げながらも、しっかりと発射の回数を数えていく。

弾倉内に装填した数だけ音が聞こえた後は、思わず安堵で足がもつれた。

もうこれ以上の弾は無いはずだ。

緊張の糸が切れ、その場にへたり込む。

息を弾ませていると突然、嫌な可能性を思い付いてしまった。

「……まさか他に弾をくすねていて、リロードしたりしないよな……そこまで知恵、持ってないよな……」

慌てて再び走り出そうとした時、何かが勢いよく横手に落ちてきた。

銃身が途中でひん曲げられた、彼の猟銃だった。

狙撃してきたモノが何かはわからないが、どうやら、換えの弾までは入手していなかったらしい。

それ以降、何かが彼を襲ってくることはなかった。

無事に下山できたものの、しばらくは山に入る気になれなかったそうだ。

434: 本当にあった怖い名無し 2011/03/31(木) 21:13:19.48 ID:Jp1OLhwu0

(了)

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