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短編 山にまつわる怖い話

山に愛されすぎた男【ゆっくり朗読】1860-3100

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山の中の山盛りのどんぶり飯の話。

大学時代、登山サークルに所属していた。

田舎の大学だったので近場に登れる山がいくつかあり、そこそこの規模のサークルだった。

そのサークルの先輩に尾久(仮名)という、単位を落としまくっても山に登るサークル一の登山馬鹿の男が居た。

尾久は居るだけでうるさいような男だったが、快活な性格からサークル内でも慕うものは多かった。

ある日、尾久に奇妙な一枚の写真を見せられた。

山中、大きな岩の上に、箸がまっすぐ突き立てられた山盛りのどんぶり飯がぽつんと置いてある。

尾久にこれは一体何か?と問うと、大学から車で三十分ほどの場所に有るR山で、尾久が一人で登った時に撮った物だと言う。

詳しく聞くと、尾久の他に登山者は居なかったにもかかわらず、そのどんぶり飯はいま炊きたてのように湯気が立っていたと言う。

尾久は「狐か狸にでも化かされたかな?」等と言っていたが、俺は正直、登山バカ尾久の自作自演の悪ふざけだと思っていた。

しかし、それ以降尾久がR山に登ると、決まっていく先にどんぶり飯が置かれるようになったそうだ。

これは尾久一人の時ばかりではなく、複数人で登る時でも必ず置かれているという。

このどんぶり飯の話はサークル内で有名になり、尾久はサークル内で「山に愛された馬鹿」とか呼ばれて満更でもなさそうだった。

しかし、尾久は今まで一度もそのどんぶり飯に手を付けていないと言う。

サークル内では尾久にそのどんぶり飯を食わせたらどうなるかという話で盛り上がり、一度尾久にどんぶり飯を食わせてみようということになった。

その話に尾久も乗り気で、後日尾久を中心に俺を含め五人でR山に登る事になった。

登山当日、尾久はいつもより上機嫌に見えた。

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登山開始から四時間ほど経たったころ、先頭の尾久が「見つけた!」と大きな声を上げた。

見ると尾久に見せられた写真の場所に、みごとにほっかほかのどんぶり飯が置かれていた。

始めてみる俺はその異様さにびびっていたが、尾久は

「おー、実ははじめて見た時から食いたかったんだよねー、いただきまーす!」

と言いながら、どんぶり飯にずかずかと近づき、どんぶり飯を口に運んでいる。

そして「うおおー!何だこれ?超うめー!マジうめー!死ぬほどうめー!」などと叫び一気に平らげてしまった。

残された殻のどんぶりにはめしつぶ一つついていなかった。

他のメンバーは口々に、「一応正露丸用意して有るから腹痛くなったら言えよ?」とか、「一口くらい食わせろよ」等と声をかけたが、尾久は飯の美味さに感動して殆ど耳に入っていないようだった。

とりあえず目的を達成したので、その日はキャンプもせずにそのまま下山して、大学のサークル室まで戻って酒盛りをした。

しかし、酒を飲むといつも饒舌になる尾久は、この日はほとんど喋らず、心ここにあらずという感じだった。

そしてそのまま俺たちはサークル室で雑魚寝をした。

翌日朝というか昼過ぎに起きると、尾久と尾久の車が見当たらなかった。

四人で申し訳程度に探してみたが見つからない、携帯に連絡しても繋がらない。

結局、俺たち四人が酔いつぶれてる間に家に帰って、風呂にでも入っているのだろうということにして、そのまま解散した。

二日ほど後、尾久が行方不明になったという話を聞いた。

尾久の親御さんによると、あの日から家には戻っておらず、車もどこにも見当たらないという。

こうして親御さんの手によって捜索届けが出された。

尾久の車は捜索届けが出された翌日にR山の麓で発見された。

尾久の登山道具も車中に置いてあったという。

R山で尾久の捜索がさんざん行われ、サークルのメンバーも協力したが尾久は今でも発見されていない。

その後、俺は大学を卒業したが趣味として登山は続けている。

R山に登るの事も度々あるのだが、その度に山全体にに喧しげな尾久の気配を感じている。

206 :2012/08/23(木) 22:04:27.48 ID:LS/4sF+x0

(了)

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