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短編 山にまつわる怖い話

山に呼ばれる【ゆっくり朗読】2610

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色々な体験話を聞いたんだけど、その中で私も巻き込まれた話。

夜に彼と合流して、行きたいとこもないので適当にドライブでもしようかってなった。

彼が運転で私が助手席で、お互いオタクだから漫画の話とか仕事の愚痴とか、それなりに楽しく雑談しながら道を走らせてた。

特に目的地も決めず、ナビも使わずに片側二車線の道を走ってて、あんまり運転しない私には分からない道だったけど彼に任せてた。

そこまでは良かった。

けど、漫画の話で盛り上がってる中で、不意に彼が信号を左に曲がったんだよね。

本当に自然に、スッと曲がった。

でもそこは交差点とかでもなくて小さな脇道。

目を凝らしてないと分からないくらいの、ギリギリすれ違いが出来るくらい細い脇道。

でもあまりに自然に曲がったものだから私は彼の知ってる道なんだなーって思って特に気にしなかった。

だけど凄くおかしいっていうか、違和感っていうか……

最初はギリギリすれ違い出来そうだった道が、どんどん細くなってく。

住宅街だったんだけどみるみるうちに物悲しげな道になって、街灯も減って、家なんて一つもなくなっていって。

道もあんまり舗装されてなくてガタガタのアスファルト。

ずっと坂で、カーブだらけで、明らかに峠道っぽい。

でも隣の彼は普通に運転しながら楽しそうに漫画の話してる。

それも凄く不気味だった。

私はもう乾いた口で適当に笑顔浮かべて相槌打つだけで、『何?ここどこ?』ってドキドキしてた。

そしたらそのうち、両脇にお地蔵さんが並んでるような道になって、そのお地蔵が結構な数で、もう限界で、思いきって聞いてみたんだよね。

『この道、どこに行く道なの?』って。

そしたら彼氏無言。

五秒くらいピタッと黙って、それから『ここどこ?』って呟く。

それ私のセリフや。

何言ってんの、って思ったら本当に怖くなってきて『○○号線走ってたの急に曲がったでしょ?知ってる道だと思ったんだけど違うの?』って言ったら、曲がってないって言う彼。

絶対曲がってない、こんな道知らないって言って焦ってて。

彼は本当に焦ったり緊張すると手が物凄く冷たくなるから、ちょっと触ってみたら超冷たい。

街灯も無くて、家もなくて、舗装もほとんどない山道で、私もブワッと怖くなって、あとなんだか分かんないけど物凄くヤバい感じがした。

霊感なんかゼロだけど、頭の中が『ヤバいヤバいヤバい』でいっぱいで、『Uターンしよ!早く!』って言いながら、GPS検索中で使い物にならないナビをいじる彼に変わって車回せそうな場所探した。

そしたらうまい具合に工事現場?みたいな土地があった。

なんて言えばいいんだろう。

ただの土地に、山になった土とかショベルカーとか置いてあるような場所。

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ロープもかかって無かったし、彼も尋常じゃないくらい手をカタカタさせながら車をバックさせ始めた。

ロープは無かったけどショベルカーとかフォークリフトとかがあったから私が窓から顔だして、『オーライオーライ』って指示出してたんだけど、オーライって言ってるのに彼が思いっきりブレーキ踏んだんだよね。

えっ?って思ってるうちにハンドル切ってアクセル全開に踏んで、道の端に立ってた木の幹にぶつかりそうなくらい無理やりUターンして元の道を下ってく。

荒っぽすぎる運転に心配になったけど、彼はハンドルに身を乗り出してすごい形相で運転してるから声かけられなくて、結局そのまま元の道に戻ってコンビニの駐車場に停めて落ち着いた。

少しでも明るいとこに行きたいって言うからコンビニの中に入って、ジュース選びながら
『Uターンの時どうしたの?』って聞いたんだけど、もう今思い出しても訳が分からない。

Uターンの時、私のオーライの指示は勿論聞いてたけど、彼自身もバックミラーで後方を確認しながらハンドル切ってバックしてたらしい。

そうすると、なんて言えばいいのかな。

彼が見てるミラーには右から左に流れるような感じで後ろの景色が映されるよね?

そこに、ふと真っ白の棒が現れたんだって。

それがメチャクチャな動きでぐにゃぐにゃしてて、波打つように揺れたり振子みたいに左右に揺れたり、かと思ったら前後にぐにゃぐにゃしたり。

それがあの一瞬で見えたんだから、一連の動きは物凄い速さだったみたい。

それが気持ち悪くて怖くて慌ててブレーキ踏んでアクセル全開にしたって。

でも私はそんなの見てない。

ガッツリ顔だして後方確認してたけど、あの場所には山盛りの土と機械しかなかった。

風も全然無かった。

白くてメチャクチャに動きまわる棒とか知らない。

もうなんか泣きそうなくらい怖くて、結局そのまま帰った。

帰り道は、彼が『ほんとゴメン。ほんと忘れたい。気持ち悪い』って言うからまたひたすら漫画の話して帰って、それから今日まで、彼とは一度もこの日の出来事のことを振り返って話したことが無い。

けど彼に内緒でクグッたら、似たような話があるんだよね。

山に纏わる怖い話の纏めで、ぐにゃぐにゃに動きながら追いかけてくる白い棒の話。

クネクネとはまた違うやつで、山とかにだけ現れるやつ。知ってる人いるかな?

山に呼ばれたっていう彼のエピソードは沢山あるし、今回も知らない道曲がって結果的に山道向かってたし、もし助手席に私がいなかったら彼はどうしたんだろうって思う。

とりあえずそれ以来ドライブはしてないし、夜の運転は極力私がするようにしてる。

265:本当にあった怖い名無し:2015/03/26(木) 15:07:04.22 ID:4CpLkSrC0.net

(了)

 

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