短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

特殊清掃員は見た【ゆっくり朗読】6700

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※ご注意:猫好きの人は読まないほうがいいと思います……

特殊清掃の仕事をしているっていうと、みんな人の遺体を想像するけど、実際には、遺体がなくなった後の部屋の清掃が殆ど。

399 :本当にあった怖い名無し:2016/07/01(金) 16:01:00.28 ID:z1XYFOpt0.net

少なくとも自分が働いていた会社ではそうだった。

ただ動物の場合は死骸が残っていることが結構あって、長期旅行で犬を室内に放置していた客から依頼の電話が来ることが多い。

そういう仕事だから、死骸のあったシミの上にまだ死骸があるような錯覚を起こしたり、たまに錯覚では片付けられないおかしい事が起こったりもするけれど、慣れてくれば不思議と気にならなくなる。

働き始めて二年位経った頃に、一軒死んだペットの処理の依頼があって、小さい会社だから受付の電話応対も自分がしたんだけれど、上品そうな声のおばさんでいかにも金持ちって感じがした。

どんな現場でも一度は現地見積もりが必要で、見積もり金額と作業内容が通れば契約書の作成っていう流れを説明して、了承を貰えたから営業担当と二人でお家を訪問した。

営業担当は基本的に作業はしないんだけれど、営業は見積もり全てに行く分、会社として受けれないようなヤバい案件や客と接するから、場慣れというか嗅覚があって、その時もお客の家に向かう車の中で、「今日はちょっと変なお客さんかも」みたいなことを言ってた。

人が死んだ場所の案件なら、色々と事情を確認して書面にする必要があるけれど、ペットは所有物扱いだから確認する規則がない。

それでも大抵のお客は勝手に説明をしてくれるのだけれど、確かに今回の電話応対からは背景が全く見えてこなかった。

それに気づいた頃に目的地に着いたので、ちょっとどきどきしながらインターホンを鳴らした。

家は三階建で洋風な雰囲気の一軒屋だった。

玄関から出てきた人は電話のイメージ通りの小奇麗なおばさんで、いかにもお金持ちって感じ。

雰囲気もよくてニコニコと挨拶をしてくれた。

営業担当が周りに人がいないことを確認してから、一通り見積もりの流れを説明してから家に入った。

中はとにかく綺麗な感じだったけれど、異様な臭いがした。

マスクを着けないで来たことを抜いても、普通の腐乱死体のあった家とは比べ物にならない程臭かった。

営業担当は顔色を変えていなかったけれど、お客がこの中で平然としていることが不気味だった。

三階が現場らしく、お客を一階に残して二人で階段を登っていった。

階段を一段登るごとに臭いが段々強くなっていき、三階に着いた所で絶句した。

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床一面に猫の死骸が山ほどあった。

思わず吐きそうになるのを必死に抑えて、営業担当が下に下りていろっていう合図をしたからその通りにした。

それから一時間は二階でぼんやりしていたと思う。

営業担当が降りてきて二百匹いたと言った。

春先で腐敗がそこまで酷くないことと、ウジが沸いていないことを説明された。

数をもう一度確認すると、丁度二百匹とのことだった。

普通の一軒屋に何でそんなに猫の死骸があるのかより、丁度二百匹っていう数字がとても怖いもの思えた。

一階に下りるとお客がさっきと変わらない様子でいて、そのことも余計に気味が悪かったけれど、営業担当は淡々と見積もり金額を伝えてお客も了承し、契約書を交わして日取りの打ち合わせを済ませた。

帰りの車の中で「やれるか?」と営業担当に言われたけれど、何も言えなかった。

入社した時に説明された、ペットはあくまで所有物という言葉を何となく思い出した。

見積もりの三日後に作業が開始された。

当日は自分含む四名で作業予定だっけれど、見積もりにきた営業担当が応援に来てくれていた。

見積もりの時のショックを分かってくれていたんだと思う。

うちの会社では面接の時に、幽霊を見たことがあるだとか何か感じるかっていう質問をして、そう答える人は採用しないっていう内々のルールがあった。

非科学的でもそういう事が起こりそうな現場に行く以上、あまりそういうことで騒ぐと、客商売的にも作業員の精神的にもよくないかららしかった。

だから今回の作業員もオカルト的なことを信じる人はいなく、塩を一ふり被るのと、作業前に手を合わせること位がルールというかマナーだった。

家の一階でマスクとゴーグル、ゴム手袋に防護服を着てから五人で三階に上がり、作業を開始した。

周辺の住人に配慮して、死骸は袋に入れた後でダンボールに入れてトラックに積み込む。

その後のことは伏せさせて貰うけれど、不法投棄だったり違法な処理ではない。

淡々と猫の死骸を袋に四匹程入れてはダンボールで梱包するっていう作業を何時間か続けて、全てトラックに収めた。

その後は四名の作業員はトラックで処理に向かい、残った営業担当と自分の二人で、ハウスクリーニングとまではいかないけれど防臭処理から簡単な清掃を行った。

昼過ぎから作業を開始したから、清掃が終わる頃には十八時過ぎになっていた。

清掃用品を鞄に詰め込み、最終確認の為お客のおばさんを三階に呼んだ。

お客のおばさんは相変わらずニコニコとしながら確認を終え、営業担当が現金をその場で受け取って領収書を切った。

その後も何か話すようだったから、とにかく自分はその場から離れたくて鞄を持って階段を下りた。

五分も経たないうちに営業担当が戻ってきたので、「挨拶はしなくていいんですか?」みたいなことを聞いたけれど、営業担当はそのまま車のキーを回しので助手席に乗った。

そのままお互い黙ったまま車を走らせて、会社に着く少し手前のコンビニに車を付けた。

コーヒー飲むかと言われてそれを断ると、営業担当が話してくれた。

俺が外に出てからお客のおばさんは、猫が好きなんですとか、身内が一人もいないから家族替わりみたいなことを話してきて、適当にあしらっていったらしいのだけれど、そろそろ切り上げようとしたら「またお願いします」とニコニコしながら言ったらしい。

営業担当もさすがに怯えて、黙って出てきたらしい。

春先の夜の寒さも相まって手が少し震えてきているのが見られて、営業担当が帰ろうといって会社に戻ってその日は終業した。

翌日営業担当から幽霊とか最近見てないか?と言われ、意味が分かって少し考えたけれど、最近見ますといい、担当で入っていた案件が全て終わった後で社長から解雇と言われた。

会社都合の退職だったから退職金ももちろん出て、他にも少なくない金額を受け取った。
もともと五年余りその会社に勤めていて、猫の死骸を見たときに精神的に限界がきていた。

繁忙期が終わったら退職届を出そうとしていた矢先、営業担当と社長に救われたと思った。

今は退職金を使ってリサイクルショップを経営して、前の会社の遺品整理部門と業務提携みたいな形を取って恩返しさせてもらってる。

変なことの多い特殊清掃の案件の中でも一番洒落怖だった話です。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1467116370/]

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