平成のはじまり頃、当時俺は親戚のツテで寺に修行に行ってた。
519 :ちょっと投下:2011/12/23(金) 12:06:27.61 ID:27KwqXLO0
理由は、まあ若いうちはみんな持ってる厨二病な超人願望。
まだオウムとかの事件が出る前だったし。
名前を言えばあああそこかってわかるほどの有名な歴史のある場所。
そこで半出家状態で毎日修行してたわけよ。
もちろん修行だからそれなりに厳しいわけだけど、外部の人間でもあるから、多少は内弟子レベルの人たちよりもお客様扱いされてた。
修行じゃない時は、たまに雑談したりしてたんだけど、その話の内容がかなり面白かった。
ぶっちゃけ浮世離れした話の世界で、娑婆だと普通に電波扱いされるレベル。
気とか経絡とかチャクラとか仏とかそういう話。
まあ修業的な話はともかく、社会や国家に関する話を。
今の日本に関する話だと思うので共有したい。
師匠「清助君、法学部だって?」
「あ、はい、そうです」
「そうか。じゃあ下山したらその仕事に?」
「まだ、その何というか考えられないですね。自分が何になるか」
「どうせなるなら偉くなりなさいよ。衆生救済は仏道だよ」
そんな感じの話してたら、ちょっと考えてた後に、話が進んだ。
「清助君、ついてきなさい」
季節は冬で結構な寒さなんだけど、一緒に外に出た。
山の上だから風が冷たい。
見晴らしのいい場所で師匠は俺に、「あれ、見てごらん」と、御山の天辺のアンテナみたいな物を指した。(後で調べたら相輪というらしい)
「はあ、あのロケットみたいなやつですか?」
「あれ、何だと思う?」
まあ普通に考えたらただの飾りなんだけど、今までの経験からそういう話じゃない。
「えーと……アンテナみたいな物ですか?御仏の力を受信するとか(笑……」
「半分正解」
「え!本当ですか?」
「そ、寒いから戻ろう(笑」
中に戻ってきた俺たちは、相輪の話に戻った。
「清助君、さっきアンテナって言ったよね?そのとおり、アンテナなんだよあれは。アンテナというのは、機能が二つある。受信と発信だ」
「受信の方は、気脈と繋げて情報や気を受信するんだよ。発信の方は、こちらからの情報を送信する。
全国にある寺はみんなそうだよ。これは宗派関係ない。日本全国の寺を繋げる」
要するに、携帯のアンテナみたいなものらしい。
当時はそんな言葉知らんかったが、今で言うインターネットやネットワークみたいなものだろう。
「それでその気を各寺やその地域に下ろすんだ。そういうことなんだよ」
「なるほど、そうだったんですか。でもどうしていきなりアンテナの話を?」
「あれで流す気は、質がある。質はわかるよな?」
「あ、はい。おかげさまで。それは堕落した寺からとかそういうものですか?」
「もちろんそれもある。でも、大半の寺からはそんなの出ないよ。問題は、寺から流す対象の娑婆の質だよ」
話によるとこうだ。
要するに、寺は相輪でネットワークを作り、いい気を各地域に流す。
でも流す地域がひどいと焼け石に水らしい。
「汚れた水に新しいきれいな水を流せば薄まる。でも限度があるよね。日本の寺を作った方たちは、こういう仕掛けをつくって国づくりしたのだと思う。中央の集権化も含めてね。寺が昔は住民の管理や集会所や学校だったことは知ってるだろう?」
今で言うルーターみたいなもんなのだろう。
「質が悪くなれば、当然社会は乱れる。人間の心が汚れるからね」
「今はどうなのでしょう?」
「陛下が崩御されてから悪くなる一方だよ……行き着く先は考えたくないな」
「どうしたらいいのでしょうか?」
「そこでさっきの話になる。君が仕事につくのなら偉くなりなさい。いい薫陶を与えなさい。人間は水だよ。方円の器に入れば方円になる。大切なのは、我々のような専門だけでは国全体の気を良くするなんて無理なんだよ。結局、国民全体の気をなんとかしないとね」
「自分のことだけではなく、他人のために考える。動く。布施をする。ああ、布施というのはお寺にじゃないよ。他人にだ。挨拶でも笑顔でもいいんだ。他人のために善を為そうとする時に、無私の奉仕の行動がいい気を出すんだ。感謝もね。結局感謝というのは貪(むさぼり)の反対なんだよ。感謝と利他の気が住民の気として大量に出れば、アンテナにのって全国にまわる」
「神社も仕組みは違うだろうけど、たぶん似たようなものだろう。昔の人が作った仕組み。神や仏というのはね、外部にいるんじゃない。仏性はだれにだってある。大仰な話ではなくて、心に仏の姿を思っていい気を出せばそれでいいんだ。そのためのテクニックが仏とか神なんだよ。普段生活してるとそんないい気なんて出さないからな。人間としての理想の姿。慈悲とかな」
「天変地異というのはね。必ず人間の心が起こしたものなんだよ」
当時俺はあんまりこの話に重大性を持ってなかった。学生だしね。
でも社会に出て、今の惨状を見るとよくわかる。
要するに、人間の心や気が社会や自然に影響を与えるってこと。
電波な話だったけど、必要かなと……
(了)
豆知識
相輪(そうりん)とは、五重塔などの仏塔の屋根から天に向かって突き出た金属製の部分の総称。
仏教の開祖、釈迦が荼毘に付された際に残された仏舎利を納めた塚であるストゥーパの上に重ねられた傘が起源とされる。 インドは気候が高温のため、釈迦を暑さから守るためと言われている。
相輪の構造
上から順に
宝珠:仏舎利(釈迦の骨)が納められる。
竜車:奈良時代から平安時代の高貴な者の乗り物
水煙:火炎の透し彫り。火は、木造の建築物が火災に繋がるため嫌われ、水煙と呼ばれる。お釈迦様が火葬されたことをあらわす。
九輪(宝輪):五智如来と四菩薩を表す。9つの輪からなる。
受花(請花):飾り台。蓮華の花。
伏鉢(覆鉢):鉢を伏せた形をした盛り土形の墓、ストゥーパ形。お墓を表している。
露盤:伏鉢の土台。
宝珠は仏舎利が納められるため、最も重要とされる。 なお、中心を貫く棒は「擦」(または「刹管」)と呼ばれる。 また、仏舎利は塔の中に安置されていることもある。
多宝塔の相輪
多宝塔の相輪は多層塔のものと多少異なる。 下から露盤、覆鉢、請花、九輪までは同じだが、その上に水煙を付けず四葉、六葉、八葉の請け花を順に重ね、頂上に火焔宝珠を据える。 また、四葉の請花から屋根の四隅に向かって鎖を垂らす。 鎖には風鐸が付く場合も多い。