お正月、帰省したときに妹に自慢したこと
正月、実家に帰省していた私は、ネットで見つけた明晰夢が見られるという音源を見つけた。明晰夢とは、夢の中で「これは夢だ!」と気づく現象で、少し興味があった私はさっそく妹にその話をした。妹は興味なさげに、「んああ?それ前に聞いたけどなにもなかったよ?」と答えた。妹がそんな音源を聞くほど暇でもバカでもないことは、今思えば当たり前だった。
それに対し、正反対な性格の私は、イヤホンで音源を聞きながら寝ることにした。もし明晰夢が見られた場合に備えて、目が覚めたときのためにノートとペンを用意し、何時に就寝したかも書いておいた。
リビングに浮かんでいた私
気がつくと、私はリビングにいた。足元を見ると、自分が宙に浮いていた。目の前には家族がいるが、私の存在に気づいていない様子だ。そして、もう一人の私がこちらを睨んでいた。どうやら明晰夢を見ているらしいと気づいた私は、無意味にはしゃいだが、夢の中の私が私自身に殺意を感じさせるほどの目つきで睨んでいることに気づいた。怖くなった私は家の外に出ようとしたが、家の敷地内からは出られないらしい。
仕方なくリビングに戻ると、再び自分から向けられる視線があった。なんでこんなに睨まれるのかわからなかったが、せっかく明晰夢を見ているのに自分に邪魔されるようで嫌だった。「もう覚めたい!」と心の中で叫んだ。
ふと、妹の方を見ると、妹は驚いた表情でこちらを見ていた。妹は私の存在に気づいているようだった。涙が出そうになり、声を出したが聞こえたかはわからない。妹が私の方に駆け寄ろうとしたそのとき、夢の中の私が「急に走ったら危ないよ」と、妹の腕を掴んだ。
和室の神棚の前での祈り
夢から覚めたいのに私が邪魔をするので、私は神頼みしかないと思った。和室の神棚の前に正座し、ひたすら拝んでいた。すると、妹が登場した。妹は私に近づくなり、「お姉ちゃん!お姉ちゃんなんでここにいるの?来たらだめだよ。何月何日、何時に眠ったお姉ちゃんなの?!」と、物凄い勢いで問い詰められた。幸い、眠る前にノートに書いていたので時間は覚えていた。「1月5日・・・24時過ぎに寝た私です」と答え、瞬きをした次の瞬間に目が覚めた。
目を開けると、私は和室の神棚の前に正座していた。確かに布団に入って眠ったはずなのに。
後日談
妹に話すと、「は?なに言ってんの正月ぼけ??うるさいから出て行って!」と言われた。しかし、妹の目には何かが宿っているように感じた。妹は何かを知っているのかもしれないが、決してそれを口にしないだろう。私のことを思ってか、自分のことを思ってか、それは謎のままだった。
それから数日後、妹が私の部屋を訪れた。彼女の表情は真剣そのもので、まるで別人のようだった。「お姉ちゃん、あの夢のことなんだけど…実は私も似たような夢を見たことがあるの」と、妹は静かに語り始めた。妹の夢では、夢の中の彼女もまた、もう一人の自分に追い詰められていたという。そして、夢の中で私が登場し、妹を助けたのだと話す。
その話を聞いて、私たち姉妹の間には不思議な共通点があることに気づいた。夢の中の出来事が現実と交錯し、私たちに何かを伝えようとしているのかもしれない。妹は私に、「このことは他の誰にも話さないで。きっとお姉ちゃんと私にしか解けない謎があるから」と言った。
その日以来、私たちは二人だけの秘密を共有するようになった。夢の中で何が起きても、お互いを信じて助け合うことを誓った。そして、再び明晰夢を見たときのために、私たちはお互いの存在を確かめるための合図を決めたのだった。夢と現実の境界が曖昧になる中で、私たちは新たな謎に立ち向かう覚悟を決めたのである。