俺がまだ幼かった頃、向かいの家は婆さんと万里さんの二人暮らしだった。
355 :本当にあった怖い名無し:2012/04/26(木) 23:13:07.37 ID:/ujLGUuJ0
万里さんは当時高校生くらいだったか、とてもきれいな人だったように記憶している。
そのうち万里さんが結婚して、婿養子を貰ったという話を聞いた。
後に俺がばあちゃんから聞いた話なのだが、どうやら万里さんの家は早死にの家系だったらしい。
子供が生まれるもみんな早死にしてしまう。
そして、向かいの家の婆さんも万里さんも二人とも養女だったんだそうだ。
やがて俺が中学生になった時、ある晩騒がしくて目が覚めた。
隣の家の車庫と車が燃えていた。
どうやら何者かによる放火らしかった。
だが事件はこれで終わらず、その後連続放火事件へと発展した。
たしか最初の火事の後も二件ほど火事が続き、四件目はボヤ程度で消し止められたんだったと思う。
その後しばらくは平穏な日々が続いたのだが、俺が大学生になった頃、再び火事が起きた。
向かいの万里さんの家が全焼したのだった。
当時はずいぶん俺の親父も警察に疑われたらしい。
後日、久しぶりに帰省した時に、俺が親父から聞いた事実は衝撃的だった。
「例の一連の火事の犯人な、どうも万里らしいんだわ。四件目のボヤ騒ぎの時に、目撃された犯人らしき人物が万里だったんだ。警察には誰も言っていないが、ここらのモンもみんな万里の仕業だったってことで納得してる。最後は自分の家に火つけてしもうたんだな」
そして、これはこの前ばあちゃんに聞いた話。
「建て直した万里さんの家、今は誰が住んでんの?」
「あぁ、もう今は誰も住んでないんだわ。みんな死んでしもうたからね」
「は?みんなってどういうこと?」
「みんなだよ。婆さんも万里も旦那さんも、病気で亡くなった。子供もいたけど、体育の授業だか部活動の最中に、事故で亡くなってしもうたんだよ」
逃れられない宿命というか血の業とか、人間がブッ壊れていく様みたいなものを見せつけられたようでゾッとした。