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短編 ほんのり怖い話

白傘女 【ゆっくり朗読】2030

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友人と遊んだ後、雨降ってるし時間も遅いからって友人を家に送った帰り、今週のマンガ読んでないなと思いだして、コンビニへ行った。

店内に客は自分だけ。

一冊目を手にとってふと顔をあげると、コンビニの前の道を白い傘を差し白い服を着た人が歩いてた。

こんな時間に何してんだろう、と思いつつ本に目を落とした。

一冊目を読み終え、次に読もうと思っていた本を手に取り顔をあげると、さっきの人が前の道を歩いてた。

歩道とコンビニの間には駐車スペースがあるから、至近距離で見たわけじゃないけど、見た目も歩き方も同じだったから一目でわかった。

変だなとは思ったけど、いろんな人がいると思ってそんなに気にしなかった。

二冊目も読み終え、次に先ほど店員さんが並べてくれた今日発売の雑誌を手に取り、読む前に同じ姿勢で疲れた肩を回す。

すると、また前の道を歩いてる人が。さっきと同じ白い傘をさした人。

さすがに薄気味悪かったので、そのあとは窓の外へ眼を向けず漫画に集中した。

さらに二冊ほど読み終え、顔なじみの店員さんと少し会話し、ご飯を買って外へ。

雨は小雨になっていたけれど、また強く降ってくると嫌だし早く帰ろうと歩道へ出た瞬間、ドキッとした。

20メートルほど先を歩く、白い傘を差した人の姿。

田舎だから、そんな時間に走ってる車はほとんどなく、街灯も少ないので、コンビニから離れると辺りはものすごく暗い。

そのせいで余計不気味に思えた。

なんか嫌だな……とわざとゆっくり歩いているのに、それでもどんどん距離が縮まっていく。

どんだけ歩くの遅いんだよって思った。

前を歩く白い傘の人との距離が3mくらいになって、なんとなくこれ以上近づきたくなかったし、追い抜く気にもなれなかったので、だいぶ早いけどあの路地曲がるかーと思っていると、その人がその路地を曲がっていった。

よかった!って気持ちもあったが、何もされてないのに勝手に想像してごめんなさいって気持ちもあったので、その人の後ろ姿に向かって軽くお辞儀をした。

その瞬間、その人がなにか言ってるのが聞こえた。

えっ?て思ったけど、こっち向いてないし独り言だと思うことにした。

そのまま歩いて、次の路地を横切ろうとして、なんとなく右を見た。

見慣れた住宅街が見えた。白い傘をさして歩く人も見えた。

ありきたりに背筋がぞっとしたとしか言えないけれど、嫌な感じがした。

だってさっきまでは、こっちがゆっくり歩いていても距離が近づくくらい、あの人はものすごくゆっくり歩いていたはず。

でも今は、どちらかと言えば早足。いつもよりほんの少し大股で歩いてる。

なのに相手も、一本奥の道を平行して歩いてる。

なにか嫌な感じがして、それを振り払おうと、偶然か、それともこっちを意識して歩く速度を変えて遊んでいる障害者かなにかだろう、と思うことにした。

でも、何度路地を横切っても、白い傘を差した人が一本奥の道を歩いてる。

見えないところで歩く速度を早くしたり遅くしたりしても、自分が横切るときに向こうの人も横切っていく。

すごく怖くなって、脇目もふらず大通りまで走った。

頭の中では自分に向かって、これはただ雨が少し強くなってきたから、濡れたくないから走ってるだけって言い聞かせた。

大通りまで出ると、さすがに数台の車が走っていて、すこしホッとした。

大通りを渡るときに右を見たけど人影はなく、それ以前に、向こうの路地から大通りへ出ても、横断歩道がないのだから渡れるはずもない。

それでももしかしてと、大通りを渡ってひとつめの路地を横切るときに、勇気を振り絞って右を見てみた。

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……誰も居なかった。

その後の路地を横切るときも、誰も見えなかった。

当たり前だよなーと落ち着きを取り戻して歩き続け、この路地を曲がればさぁもうすぐ家だと、いつものところで右へ曲がった。

奥の路地から、白い傘を差した人が出てきた。

え?って思ったときには、白い傘を差した人は路地を曲がってこちらへ歩いてきた。

鳥肌がたった。

ヤバって思ったときには、もう元きた道を走ってた。

見られないように全力で走って、ひとつ前の路地を曲がった。

なのに、曲がった路地の奥の道から白い傘をさした人が歩いてきた。

道の真ん中まで出てきて、その体勢のまま不自然な感じでグルンッとこちらに向き直って、歩を進めてきた。

寝静まって真っ暗な住宅街のど真ん中で、道が交差する付近には街灯があるものだから、白い傘と白い服はものすごくはっきり目に映った。

深夜だっていうのに大声が出た。うわぁああ!って感じの。

持ってた傘もコンビニの袋も放り投げて、一目散にその場から走った。

走りながら友人に電話をかけて、寝てるところ起こして、「今から行くから家に入れてくれ」とお願いした。

数時間前に送ったばかりだっていうのに友人はOKしてくれて、助かったと急いで走って向かったのだけれど、大通りを越えて、コンビニを過ぎ、道路を横断して曲がろうとした先で、白い傘を差した人が立っているのが見えた。

もうこの時には、何で?としか考えられなくて、曲がるのをやめてそのまま次の路地を目指したんだけど、そこでも白い傘を差した人が奥の路地から出てきた。

もう嫌だと思いながら道を先に進んでいると、携帯が鳴った。

けれどおかしなことに、着信ではなく不在着信の表示。しかも3件。

時間を確認するともう4時を回っていて、

自分の中での時間はまだ10分程度だと思っていたのに、既に1時間近く経っていた。

町から出ていないし、それ以前に、曲がれないからこの通りを抜けていないのに。

住んでるはずの町が知らない町のようで、すごく怖くなった。

友人に電話をすると、『まだ?今どこ?こないの?』と、眠そうな声が電話から聞こえてきた。

「行きたいけど無理。曲がれない。曲がった先に白い傘を差した何かが先回りしてる」

って、きちんと言えたかわからないけど伝えると、友人は、

『何言ってるかわかんないけど、先回りされるなら追わせればいいんじゃない?』って返してきた。

でも、言われても何も考えられなくて、

「え?え?なにいってんの?意味わかんねー!!」って返すのが精一杯。

語気を強めて意味不明なこという自分に、友人は怒ることなくゆっくり丁寧に、

『一度曲がりたい方向と逆に曲がるでしょ?そしたら前に先回りされてるんだよね?
それから後ろ向いて、追われる形でまっすぐ道を進めば、行きたい方向にいけない?』
もう何でもいいから縋りたい一心で「わかった」って言って、友人の言うとおりにしてみた。

もう何も考えられなかった。

すると、本当に曲がった先に白い傘をさした人は現れるけれど、後ろを向いて逃げても追いかけてはこない。

正確には、こちらにむかって歩いては来るけれど、ソレは自分が曲がった角のところまで来たら戻っていく。

でも、また別の角を曲がったり、路地へ入ろうとしたりすると、その先の道から出てくる。

行ける!と思ったとたん、周囲に誰もいないのに

「ボオオ、オ、ア、」と、声なんだけど言葉じゃないとわかる音が、後ろから聞こえてきた。

感覚的に、あぁアレが喋ってると思い、より一層足に力を入れて走った。

ようやく友人の家の近くまで来ることができ、電話で伝えると、家の前まで出て待ってると言ってくれた。

ホントに家の前で待っててくれた友人のもとへ行くと、

「びしょびしょ、傘どうしたの(笑)」なんて言って笑ってて、ちょっと安心したけれど、見たこと説明して、走ってきた道の先を一緒に見てもらった。

暗いし遠いのに、でもはっきりと向こうの十字路に、白い傘と白い服を着た人の姿があった。

驚いた顔の友人と慌てて家に入ったあと、少し遠くから低音の人の声のような音がずっと聞こえていて、友人が飼ってる猫が、窓やら玄関やらを行ったり来たりしてた。

明るくなって車の音がうるさくなってきたころには、いつのまにか声のような音や嫌な感じはなくなっていた。

その日のうちに県内のお祓いで有名な神社に二人で行き、お祓いをしてもらったのだけれど、よぼよぼの神主さんは、

「忘れたほうがいい。理解出来ない者は数多くいて、それがなにかは私にもわからない」とだけ説明してくれた。

今思い出しても寒気が止まらない経験だ。

(了)

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