675 : 本当にあった怖い名無し : 2008/05/21(水) 23:27:56 ID:foUq91i1O
実家は秋田。田舎なんで家も庭も広いんですよ。
庭には御稲荷さんの祠があります。
ある日、俺が寝ていると夜中にむっくり起きて廊下をぴょんぴょん跳ねる、奇声をあげる。
親と祖父母が何事かと思って起きてきて、親父が俺を取り押さえたら、ぱったり居間で寝たそうです。
意識は多少ありました。
なんか、川の真ん中にある祠かなんかから大きい何かと小さい何かに交互に押さえ付けられる幻覚と、弟の泣き声だけ覚えがありました。
その後も一時頃になると夜中になるとむっくり起きだし家中を走り回る。
やっぱり意識はあって、同じ幻覚見てとても気分が悪い。
親は、俺が《もんじょこき》になったと言ってた。
《もんじょこき》になってからやたらと変な物をみるようになった。
それは強烈なんで長くなるからやめとくけど、俺本人よりも親がビビってしまい、近くに住んでる「神様」って呼ばれてる憑き物祓いのおばあさんに、弟と一緒に見てもらいにいった。
俺が《もんじょこき》になってから弟はおねしょがとまらなくなってしまったから、それも関係あるんじゃないかってことで。
アポなしで行ったんだが、玄関開けたらその憑き物祓いのおばあさんが待ってて、
「来るのおせがったな。あんたがださ悪さしてるのは狐様だな」
(来るのが遅かったね。あなた達に悪さしているのは狐様だね)
って言われた。
いきなりだったけど、かあちゃんはすぐに意味理解した。
まず、おばあさんがでかい、見たこともない仏壇の前に案内して、丸い座布団に俺と弟を座らせた。
かあちゃんはその後ろに着席したと思う。
おばあさんは派手な衣装に着替えて、鈴がいっぱいついた棒を片手に持ち、もう片手には木の板みたいなのを二枚持った。
読経しながら鈴を鳴らし、俺と弟をぐるぐるまわりながら木の板でばんばん叩いた。
十分くらい続き、なんだこれ?って思ってたら、急に弟が低い声で唸りながら白目剥いて、じゃ~っと小便もらした。
尋常じゃないくらいの量で畳もびちょびちょ。
かあちゃんは焦ってた。
それを見た俺は、こえ~と思って立ち上がろうとしたらなぜか立てない。
それで前のめりに倒れた。胸が熱くなって涙が止まらない。なんか顔があったかい。
俺も大量のおもらし。出た感覚がまったくなかった。
そしたらおばあさんが
「でだな~、こいだば大変だったべ」
(出たな~、これだったら大変だったろう?)
って言った。
出た瞬間に体が楽になったの覚えてる。
少し休んでからおばあさんが説明してくれた。
「まずよ、おめさ憑いだったものは狐様だ。あど五〇歳で自分の命絶ったおめだの先祖様だな」
(先ず、お前に憑いているものは狐様だ。あとは、五〇歳で自殺したお前たちの先祖だな)
かあちゃんになんか心あたりはないかって聞いてきた。
確かに家では御稲荷さんがある。
おばあさんが
「原因まではわがんねーがら一緒に家まで行ってやるな」
(原因まではわからないから、一緒に家まで行ってあげるよ)
それでそのまま四人で家に行きました。
家着いておばあさんが、
「あいだな?おごってるがらおめがだくるな」
(あれだな?怒ってるからお前たちは来るな)
と言われました。
おばあさんは祠の前で何か何回もおじぎをして、
「こっちゃきていいどー!」
(こっちに来てもいいぞ)
と言ったので行ってみると、御神体がペンキで真っ黒に塗られてました。
それと祠の奥にあるお札に『ゆうさく参上』って書かれてました。
ゆうさくとは、家の隣に住む六年生のことです。
おばあさんは、
「おめの家にあだなしたわげでねな。それより問題なのは先祖さまだな。自分で命絶ったおなごいねがきでみれ」
(お前の家系に害を与えようとした訳ではないな。それより問題なのは先祖様だな。自分で命絶った女の人いないか聞いてみな?)
と言われました。
とりあえずおばあさんの家に送って行き、お守りを書いてもらいました。
「このお守りもってればだいじょぶだ。おめさあだなすごどはねーがら。でもででいってもらうのはじがんかがるな」
(このお守り持っていれば大丈夫だ。お前に危害を加えることはないから。でも出て行ってもらうのは時間がかかるな)
と言われました。
ただの紙に筆で書いたのを四角く折ったものだったので、かあちゃんが毛糸でお守り入れを作ってくれて、それを毎日首から下げて暮らしました。
一応狐憑きの話はこれで終わりです。
祖父に聞いても自殺した祖先は知らないと言われました。
狐憑きにあった数日と、お守りを外した時、かなり忘れられない体験をたくさんしました。
お守りをぶら下げてから二ヶ月後には、毛糸の入れ物ごと真っ黒になりました……
(了)