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今、神様やってるのよ r+3694

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母方の実家は熊本県にあるのだが、そこにずっと暮らしている母の姉――つまりおばさんが、先日うちに遊びに来た。

ちょうどテレビで『ターミネーター2』が放送されていて、家族みんなで観ていた。

あの映画には、核が落ちる瞬間を想像したシーンがある。遊んでいた子供たちが一瞬で焼けてしまう、あの衝撃的な場面だ。「瞬間で皮とかズルっといっちゃうんだね、怖ぇ~」なんて話していたら、おばさんがふとテレビを見ながら、さりげなくとんでもないことを話し始めた。

おばさんの長女は最近、双子を出産した。華奢な体つきの娘だったので、出産は難産だったらしい。2ヶ月前から入院して、母体の危険もあって予定を早めた帝王切開だったそうだ。今は母子ともに元気だが、初孫ということもあって、おばさんは当時、心配で夜も眠れなかったという。

そんなある日、病院から帰ってひと息ついていたおばさんのもとに、一本の電話がかかってきた。相手は昔の幼馴染だった。子供の頃は近所に住んでいてとても仲が良かったが、その人は引っ越してしまい、それでも連絡は途切れなかった。しかし、ここ10年ほどはすっかり音沙汰がなくなっていた。

娘のことで疲れ切っていたおばさんにとって、懐かしい声は心から嬉しかったらしい。近況を話そうとした矢先、幼馴染は思いがけないことを言った。

「ふじえちゃん、私ね、今神様やってるのよ。たくさんの人を救ってあげてるの。困ったことがあったらいつでも言ってね。きっと助けられるから」

昔と変わらない明るく爽やかな声だったので、おばさんは思わず「ああ、そう……」としか返せなかったらしい。その夜、疲れも重なり、赤ちゃんのことを考えながら「これも何かの縁かもしれない。明日、頼んでみようか」とふと思ったという。そのせいか、おばさんは久しぶりに深い眠りについた。

夢の中で、おばさんは娘と、まだ幼いままの幼馴染と一緒に遊んでいた。なぜか娘のお腹は膨らんでおらず、三人で花畑のような場所で笑い合っている。まるで天国のような、幸せな夢だった。ボールのようなものを投げて遊んでいた時、そのボールが飛んできて、おばさんの胸元に収まった。

だが、その瞬間だった。ボールの皮がずるっと剥け、中から大きな、溶けかけた幼虫のようなものが現れたのだ。おばさんは悲鳴を上げた。投げ返そうとしても、幼虫は絡みついて離れない。おばさんは娘よりも先に幼馴染を見た。だが、幼馴染は狂ったように笑っていた。その目は真っ黒で、穴のようだった。

幼虫の鳴き声と、幼馴染の子供の頃の笑い声が重なって聞こえる。

おばさんは飛び起きた。全身汗びっしょりだった。

「その時、思ったのよね。あの幼虫は赤ちゃんだって。どうしてかは分からないけど、人間の姿なんてしてなかったし、声も獣みたいだった。でも絶対に赤ちゃんだと思ったの。不吉で怖くなって、それから幼馴染には連絡できなくなった」

その後、無事に双子は生まれ、おばさんもあの電話のことをすっかり忘れていた。

だが、ある日何気なくつけたテレビに、その幼馴染の名前が映し出されたのだ。そこには年老いた女性の顔と、信じがたいニュースが流れていた。

少し前、世間を騒がせた事件があった。ある新興宗教の信者だった若い夫婦が、「死んだ我が子の皮を剥げば生き返る」と信じて、その通りにしてしまった――そんな悲惨なニュースだ。その夫婦を導いていた「神様」こそ、おばさんの幼馴染だったのである。

何不自由ない家庭環境にいたはずの幼馴染が、なぜこんなことになってしまったのか。おばさんの知らない10年の間に、彼女に一体何があったのだろう。

おばさんは「怖い」というよりも、ただ涙が止まらなかったという。そしてこう思った。

もし、あの時、幼馴染に相談していたら――。

(了)

[出典:805 :あなたのうしろに名無しさんが……:2001/02/26(月) 21:32]

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