短編 怪談

バイクチームの先輩【ゆっくり朗読】

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私が中学二年生だった時の話。

700 :2016/07/13(水) 16:50:03.78 ID:I4kqm3WO0.net

思春期真っ只中だった私は、よく夜中に家を抜け出しては友達と遊びに行っていました。

といっても不良の真似事をしたいだけで具体的に何をすればいいのかわからず、

地方都市の程よい田舎には夜中に中学生が遊びに行けるようなところもなく、

とりあえず合流して深夜のコンビニに行き、そのへんの公園で話して朝方帰るという可愛いものでした。

それでも真面目な中学生だった私には十分スリルがあって、夏休みなんかは度々抜け出しては朝寝する日々を送っていました。

その日、私は白いダウンベストを着ていたので秋ごろだったと思います。

家を抜け出して友達との待ち合わせに行く途中に、前方に白い人が立っているのが見えました。

明らかに男の大人の人で、怒られるかもと思う反面、田舎でしたから真夜中に人と会うことは滅多になく、こんな時間に珍しいと思ったのを覚えています。

その人の手前5メートルくらいまで歩いていったところで、「こんばんは」と声をかけられました。

ぎょっとして男の人をよく見ると、十八歳くらいの白いボンタン短ランの刺繍の入った特攻服上下。

ドヤンキースタイルで、ややべえ人だ……と思いつつ、強がってなんとか「どうも」と返しました。

「何してんの~」と私の顔を覗き込み、ふっと笑って「あーお前まだ子供だろ!」と叫ばれました。

まだ何か言われていましたが無視して歩き出し、振り返るともう見えませんでした。

ドキドキして急いで友達に会いに行きましたが、その事は言いませんでした。

しばらくして夜歩きが親にバレ、みっちりお仕置きされて、中学三年生になり受験勉強もあり、夜歩きは無くなりました。

そして月日は流れ実家を出て私は二十歳になり、姉の結婚式のために実家に戻った時のことです。

姉のアルバムを姉と一緒に見ていると、あの特攻服のヤンキーが写っていました。

「この人知ってる!この人誰?」

と姉に聞くと、驚いた顔でこちらを見た後、少し寂しそうに話してくれました。

彼は姉の先輩でバイクチームの一員だったという事、

バイクが大好きで通勤もバイクだったという事、

バイクの為に昼は建設業夜は繁華街で黒服をしていたという事、

十八歳の時に夜の仕事に遅れそうになってバイクを飛ばし事故で死んでしまった事。

なぜ知っているの?と聞かれて、あの夜の事を話すと姉はそんなはずはないと言い切りました。

私が小学六年生の時に彼はバイクで亡くなっていたのです。

当時小さく県内ニュースにもなっていました。

事故の場所はあの夜声をかけられた場所でした。

でも一つ違うところがあり、写真の特攻服は紫でした。

やっぱり人違いかもと姉に言うと、あの人の一番は白い短ランボンタンだからきっと本人だよと言われました。

六年も経ってあの一瞬の出会いを忘れなかったのには訳があって、覗き込まれた時、私もまた覗き込んだわけですが、

彼はTOKIOの長瀬智也をもう少し細くして鋭くキツくさせたような、とにかく綺麗な顔立ちでした。

ふっと笑いかけられた時、一目惚れのような感覚に陥ったのです。

中学生の私は忘れる事ができず、もう一度会いたくて仕方なかったのを覚えています。

だから写真を見てすぐに分かりました。

あの時中学生だった私には大人のお兄さんでしたが、二十歳を過ぎて見返すと幼い綺麗な顔の男の子でした。

二十六歳になった今でも、里帰りしてあの道の近くを通るたびに幼い初恋を思い出します。

不思議な気持ちになると同時に、もう彼にとってはオバさんなんだろなーと笑ってしまいます。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1462449054/]

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