十年前、当時付き合ってた彼女(ケイコ)と別れて一週間くらい経った頃の話
108 本当にあった怖い名無し sage 2012/08/09(木) 02:47:52.21 ID:wBTqPq7F0
知らないアドレスからメールが来たのが始まりだった。
かいつまんでいうと、
突然のメール申し訳ございません。僕はケイコさんとバイト先が一緒の田辺と申します。
実はケイコさんのことが好きになってしまいました。
彼氏だった池内さんに相談したくてメールしました
まずお前誰だと。いきなり知らない人にメール?
しかもオレがケイコの元彼ってなぜ知ってんのか、と。
知ってんのはまだしも、なんでオレのメアド知ってんのか、と。
ふつうに気味悪さに寒気がした。
とにかくメールは長文で、田辺がケイコをどんだけ好きなのかがびっしり書いてある。
で、最後に
「ケイコさんをどうやったら振り向かせられるか教えてください」と。
しらねえし、お前こええよ。
で、シカトしようかとも思ったんだけど、逆恨みされるのもイヤだから、返信。
今はケイコと別れて連絡もとっていません←実際連絡とってない。
そんなに好きならしっかり想いを伝えてしまえばいいと思いますよ。
頑張ってください
それから数時間後、返信が。
ありがとうございます。全力で頑張ろうと思います。池内さんに相談して勇気が湧きました。よかったです
さすがにキモかったので返信せず。
それからほぼ毎日田辺からメールが来る。
「今日は一度ケイコさんと話せました」
「今日はケイコさんと一緒に発注についてやりとりできました」
「今日は出勤時間が一緒で偶然会え、バイト先までいろいろ話せました」
こんな感じの報告メールが一日一回のペースでくる。
キモいし関わりたくなかったので一切返信しなかった。
それでも毎日こんな感じのメールがきた。
一週間ほどしてからメールの内容が変わってくる。
「なんでケイコさんは僕の気持ちに気づいてくれないんでしょうか」
「ケイコさんはいろんな男に愛想がよすぎる。男に話しかけられると皆に笑顔です。八方美人は嫌いです」
「僕のことをケイコさんは馬鹿にしているんでしょうか」
明らかに報告からケイコへの嫉妬むき出しの内容に変わった。
それでも無視を続けていたら、とうとうすごいメールが届いた。
件名:良い事を思いつきました
「今日、ケイコさんの夕勤帰りに僕の友達を使って襲わせます。そこに僕がたまたま通りかかったことにして助ければケイコさんも好きになってくれるはずです」
さすがにヤバイと思ったオレは、そのとき初めてケイコにメールをする。
ケイコと同じバイト先の田辺ってやつがヤバイ、今日襲うとかいってるから帰りは皆で一緒に明るい道で帰れ、と。
ケイコからメールが来る。
- 田辺なんてバイト先にいない。ってか男自体がオーナー以外今は勤務先にいない。
- 確かに今日は夕勤で二十三時あがり。
- 友達と帰るから大丈夫。ヤバけりゃ交番近くにあるから大丈夫。
……こんな内容だった。
田辺が実際にいない人物と分かって鳥肌がたったのを覚えてる。
気味悪かったが、ケイコにも連絡できたことで少しだけ安心する。
同時に田辺へ返信。
「ケイコに伝えました。変なことはしないほうがいいですよ」
……田辺から返信はなかった。
夜になり、オレはやることもなく家でゴロゴロしてた。
二十三時過ぎても田辺からの返信はなく、ケイコからも特に連絡なし。
ホッとしてるといきなり着信音がなる。
ケイコからだった。
電話に出ると半べそでパニック状態のケイコの声がした。
「どうしよう、駅、ついてから変な人がずっとついてくる」
「!?どんなやつだ!?」
「怖くて見れない。けどずっとついてきてる」
「とりあえず交番いけ!」
いきなり家のチャイムがなる。
心臓が止まりそうになる。
おそるおそるドアを覗くと……ケイコだった。
オレの家とケイコの家はすぐ近所。
一人暮らしのケイコはあまりの怖さでうちに来てしまったらしい。
開けるとケイコはものすごい真っ青な顔で泣きまくってる。
すぐに家にいれて鍵をしめる。
「オレの部屋に入るのは見られたか!?」
「わかんない。でも近くまでずっと付けられてたのは確か」
勇気を出してベランダから外を見るも人の気配はない。
正直オレ自身もものすごいパニックになっていて、田辺にメールをする。
「警察に今連絡をしました。今までのメールも全て残してあるので証拠になります。もうすぐ警察が来ますのでこれ以上のことはしないほうがいいですよ」
ちなみに今考えれば警察に本当に連絡すればよかったものの、なぜか連絡しなかった。
ガキだったこともあって警察に巻き込まれるのがなんとなく嫌だったんだと思う。
どう考えても警察にいっていい内容だったと思うが。
ケイコにはバイトを次の日休ませ、なにかあったら本当に警察に行こうという話をした。
チャイムが鳴るんじゃないかと相当ビビりながらすごしたが、結局その日は何も起こらなかった。
翌日、田辺からオレにメールが来た。
最初のメールのときのように敬語で長文。
内容としてはこんな感じだった。
- どうかしてました。本当にごめんなさい。
- 実は僕は田辺という名前ではありませんし、ケイコさんと同じバイト先というのも嘘。
- ケイコさんのバイト先にたまたま買い物をし、一目ぼれをしてしまった。
- ある日、近くの居酒屋で飲んでいるときに偶然ケイコが何人かと飲みにきて横のテーブルにきた。
- ケイコ達はオレと別れたドンマイ飲み会できていたらしく、ベロベロに酔っ払ってオレの名前をいっていた。
- 友人にケイコがトイレへつれてかれる。テーブルに誰もいなくなったとこでケイコの携帯を見てオレのアドレスをメモ。その後オレにメールした。
- もうしません。本当にすみませんでした。
それからオレにもケイコにも何も起こらなかったこともあり、結局犯人が誰だったのかは、いまだにわかっていない……
(了)