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中編 集落・田舎の怖い話

歪んだ面【ゆっくり朗読】2400

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半年ほど前から、二、三日に一回の頻度で怖い夢を見る。

夢の中では自分は五歳ぐらいの年齢で、今住んでいる家ではなくその歳に住んでいた家での話。

家の神棚の様な所にお面が飾ってあり、父親が

「なぜ神棚にお面があるのだ?」

という内容の話をして、そのお面を取り払ってしまう。

だが何故か父親の手からお面が放れず、パニック状態になる。

そのお面をよくみると、左半分が奇妙にねじれている。

そこであまりの恐ろしさに目が覚める、というもの。

怖い映画などを見た後などはゾンビが出てくる夢なども見ていたから、自分の想像力が生み出した新たな夢だと最初は思っていた。

だが、同じ内容の夢を何度も見るうちに気になり始めて、それとなく母親に話してみた。

すると意外な答えが返ってきた。

「よく覚えてるね」

母親の話では、五歳ぐらいの頃、家族で社宅に住んでいて、引っ越してくる前からその神棚は在ったらしい。

神棚には不気味なお面が飾ってあり、

「神棚なのにこんな不気味なお面があるのはおかしい」

と父親は怒ってお面を取り払った。

その時お面の裏側が何かでベトベトしていたらしく、一瞬、手から剥がれなかったらしい。

その気味の悪いお面はその日のうちに燃やしてしまったとの事だった。

その話を聞いてから、気になってしょうがなくなってきた。

あいも変わらず定期的にその内容の夢を見るのだから尚更だ。

それから色々と調べた結果、少しだが五歳当時の事が解った。

まず、社宅っていうのは地元では結構有名な会社が、空き家を買い取り、社員に社宅として提供していたということ。

一軒家なので実際に住んでいた家に行ったが、家族三人で住んでいたにしては広すぎる、社宅としては豪勢な家だった。

今は誰も住んではおらず、公民館?として使われているみたいだ。

中には案の定、神棚は残っているようで夢で見たものと同一だった。

それとなく近くに住んでいる人に、公民館の神棚にあったであろうお面の事を聞いた。

神棚にお面があったという話を聞いてもあまりピンと来なかったみたいだが、お面というのはそこらの地区で昔、毎年二月~三月のどれかの日に行われるお祭りに使われた物ではないか?とのことだった。

そういえば自分が小学生の頃に、冬に御餅を持ち寄って焼いて食べるようなお祭りがあった気がする。

それを聞くと、そのお祭りは本来は踊り役がいて、お面をかぶって踊るらしい。

今は廃れてそんな行事は無くなった、とそのおじいさんは言っていた。

それから三ヶ月ぐらいが過ぎた。

結局、お祭りでお面が使われたのではないか?っていう事ぐらいしか解らず、解ったところで夢はあいも変わらず見る。

毎回見慣れているはずなのに恐怖感は消えず、あの捻じ曲がった顔半分を見たところで叫んで起きた事もあった。

親戚一同が集まる正月の時、それとなくその話をしてみた。

ある程度知識ある古い人達ならお面の事を知ってると思ったのだ。

だが、そもそも自分達家族三人がその地区に引っ越してきたので、面の事は誰も知らなかった。

正月が過ぎて二月になろうかって時に、突然知らない人から電話が掛かってきた。

どうも親戚の中に、この地区に昔から住んでる人と知り合いなのがいたらしく、お面の話をしてくれていたみたいだ。

自分の小さい頃の事も知っている「マーくん」と当時の呼び方で三十路近い男を呼ぶので奇妙な感覚だった。

そのお婆さんの話では、確かにそのお面は今はやっていない昔のお祭りで使われていた物だという事。

何故そのお面がお祭りで使われていたものだというかは、神棚に飾ってあったからだそう。

お祭りでは集落の各家の長男が毎年踊り役を務める。

その年も、神山さん(仮名)の家の長男がその役となり、はりきっていたそうだった。

だが祭りの一ヶ月ぐらい前、神山さんの長男は高熱で倒れた。

その熱は引いたのだが、踊り役からは降ろされてしまった。

このあたりの理由はお婆さん曰く、多分その病気が感染するといけないからだそうだ。

神山さんの家の長男は、結局再び高熱が出て死んだらしい。

それから毎年、お祭りで踊り役を務める事になった人が何故か神山さんの家の長男と同じ病状となり、祭りはそのまま無期限停止となった。

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そしてある日、祭りで使われていた面を倉庫から出したところ、面の顔半分が変形していた。

何かに祟られたのでは?という話になり、面を神棚へと飾ったらしい。

ただ、飾ったのは神社であり、そんな家の神棚ではないらしいのだが……

そのお婆さんは、面がもし手元にあるのなら神棚に戻したほうがいいと心配してくれた。

だが残念な事に、本当に面は親父が燃やしてしまったのだ。

戻そうにも、もう戻せなかった。

とてつもない絶望感が身体を襲い、それから神山さんの長男の事がふと頭に浮かんだ。

もしかして、その病気で顔の半分が変形したのでは?と。

それから何度か鏡を見たりした。

人の顔は右と左では異なるとは言うけど、ここ最近、半分が随分と変形したような気もしている。

ある日、ふと図書館にCDを借りに行ったとき郷土資料の棚が目に留まった。

お祭りの事が載っているかもしれないと、幾つかの本を漁っていると、確かにお祭りの事が載っていた。

お婆さんが話してくれた事とほぼ合っている。

だがそのお祭りが今はなぜ無いのかまでは書かれてはいない。

ページの一番最後にはお祭りに関しての情報を提供してくれた方々の名前が連なっている。

その中で一番大きく書かれていた名前に見覚えがあったので、もしや?と思い、その小山田さん(仮名)の家に電話をしてみた。

そしてお婆さんから得た情報以上の事を知る事ができた。

お祭りは、来年の豊作を願って二月から三月に掛けて行う祭りで、お面を被った踊り子に神おろしが行われる。

なのでお面はとても神聖なもので、普段は祠に収まっている。

お婆さんが神社と言っていたのは正確には神社ではなく、田んぼの隅っこにある祠の事。

小山田さんの憶測も混じるが、神山さんの息子さんが熱病で亡くなった年は、ちょうど某企業のT社が工場を建てた年。

それに伴って田んぼを手放す人も多く、それら田んぼのあった場所は新興住宅地となった。

住宅となった田んぼの中に祠があったらしく、面は祭りで使うので別の場所へと移動し、祠は壊されたらしい。

それが引き金か、毎年の様に踊り子が熱病で亡くなった。

それで別の田んぼに新たに祠を建てると、それは収まったらしい。

祭りが中止になったから収まったという話もあるが……

小山田さんが知る限りは新たに建てた祠は健在だと、その位置も教えてもらった。

仕事帰りにその祠のあった位置へと立ち寄ったのだが、そこは住宅街のど真ん中。

つい最近、田んぼだった所だった。

帰ってから親に祠があったとされる田んぼが住宅街に変わったのがいつか聞いてみたのだ。

それが丁度半年ほど前だった。

自分が嫌な夢にうなされるようになった時期と重なった。

ただ、それが解ったからといって何も解決しなかった。

面もないし祭りもないし、祠を建てる場所もない。

あいかわらず嫌な夢で目が覚めるし、顔の半分が赤く腫れ上がっている時もある。

医者にも行ったが、デキモノだと言われただけだ。

毎日、会社から帰る時、以前祠のあった新興住宅街が目に入る。

その都度、『呪われればいいのに』と恨みの言葉を吐いたこともあった。

今は飽食の時代だから食べる事にはそれほど執着は無いだろう。

だが、祭りが機能していた時代は面も踊りも、それらは生きて行く事そのものだったと思う。

その思いの上に、どこからきたかわからぬ余所者が、家をどっしりとおろしている。

あの捻じ曲がった面は、その思いを踏みにじった連中への恨みではないかと思っている。

それと、これを書いてる間に解ったこととして、祠以外にも豊作を願って建てられるっぽい石碑みたいなのもみかけた。

だからといって腫れは引かないままだけど……

(了)

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