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短編 n+ 事故・事件

■レッサーパンダ殺人事件犯人・Yの家庭

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レッサーパンダ事件の犯人、Yの家庭には深い闇があった。

山本譲司著:累犯障害者より累犯障害者 (新潮文庫)

彼の父親は知的障害を持っていたが、軽度のためYが逮捕されるまで公的に認識されることはなかった。60歳を過ぎて初めて正式に認定されたが、その間、保険や福祉の助けを受けることは一切なかった。父親はパチンコに明け暮れ、子供たちに凄まじい虐待を加えていた。

母親は子供が幼い頃に病死し、Yと妹はその後、地獄のような生活を送ることとなった。Yは父親よりも重度の知的障害を持ち、中卒後は養護学校に通ったが、そこでひどいいじめに遭い、その後の就職先でも前歯をすべて折られるなどして、最終的にはホームレス同然の生活を送ることになった。父親のもとに連れ戻されるも、すぐに脱走を繰り返した。

Yは軽い罪を犯すことが多かったが、警察に捕まっても逃げることはなく、むしろ警察を父親よりも好んでいた。ある時、被害者にナイフを向けた理由を聞かれ、「仲良くなりたかったから」と真顔で答えた。この言葉は常人には理解できないが、Yにとっては本音だったようだ。報道では「自分のものにしたかった」と供述したとされているが、Yはそのように言ってはいない。

Yの妹は知的障害を持っていなかったが、母親の死後、父親と兄を支える母親代わりとして過ごした。経済的な困難から高校には進学できず、中卒後は働き詰めの日々を送り、家庭を支えた。しかし、その無理がたたって癌を発病。それでも働き続けた。

公的な福祉サービスの存在を家族全員が知らず、役所の手助けを一切受けることはなかった。Yが逮捕されたことで、この状況が明るみに出て、死期の近い妹を民間の福祉関係者が助け、「最後に楽しい思いをさせたい」と、車イスや点滴などを完備してディズニーランドなどに連れて行った。妹は、この楽しみが被害者の犠牲の上に成り立っていることに悩みながらも、一年間ほどまともな生活を送り、やがて亡くなった。

事件の詳細

2001年4月30日午前10時35分頃、短大生のAさん(当時19歳)は友人のブラジリアン柔術大会を応援するために台東リバーサイドスポーツセンターに向かっていた。Aさんの後を追うように、毛皮のコートを着てレッサーパンダの帽子を被ったYが同じ道を進んでいた。交差点でAさんがYを確認し驚いた表情を見せたため、Yは自分が馬鹿にされたと思い込み、Aさんを狭い路地に引き込み、胸や腹、背中を包丁で刺して失血死させた。

現場近くで「動物のぬいぐるみを頭に載せた男」「レッサーパンダのような帽子を被った男」が何度も目撃されており、捜査機関はこの男を容疑者と見て捜査を開始。
5月10日、東京都代々木でY(当時29歳)が逮捕された。事件直後から「レッサーパンダのぬいぐるみ帽子を被った成人男性による犯行」という異様さに注目したマスコミ、特に週刊誌は、この事件を大々的に取り上げようとしていたが、Yが養護学校卒で軽中度の知的障害者と判明した後は事件を取り上げることをしなかった。

Yは17歳の時に母親が病死し、それ以降家出や放浪を繰り返していた。窃盗など4件の前科があり、レッサーパンダのぬいぐるみ帽子は函館市で購入したものだった。警察の取り調べに対して、Yはこの帽子を「犬の顔だと思っていた」と答えている。また、「なぜその帽子を被って歩いていたのか」という質問に対しては、「大切なもので、毎日抱いて寝ている」と答えた。

裁判ではYに知的障害があったため、検察側と弁護側が責任能力で対立。2004年11月26日、東京地裁は「弁護側が主張するように、被告が広汎性発達障害に当たるとしても、完全な責任能力を有していたことは明らか」としてYに無期懲役を言い渡した。2005年4月1日、Yは控訴を取り下げ、無期懲役が確定した。

Yの家庭環境と事件の背景を知ることで、彼の行動がどのように形作られたのかが見えてくる。この悲惨な家族の物語は、社会の支援の欠如とその影響について深く考えさせられるものである。

累犯障害者 (新潮文庫)

■殺人、売春、放火、監禁、偽装結婚……。彼らはなぜ、罪を重ねなければならなかったのか。障害者の犯罪をめぐる社会の闇に迫る。
刑務所だけが、安住の地だった――
何度も服役を繰り返す老年の下関駅放火犯。家族のほとんどが障害者だった、浅草通り魔殺人の犯人。悪びれもせず売春を繰り返す知的障害女性たち。仲間内で犯罪組織を作るろうあ者たちのコミュニティ。彼らはなぜ罪を重ねるのか?
障害者による事件を取材して見えてきた、刑務所や裁判所、そして福祉が抱える問題点を鋭く追究するルポルタージュ。
本書より
栃木県の黒羽刑務所に入所した私を待っていたのは、一般受刑者たちに「塀の中の掃き溜め」と言われているところでの懲役作業だった。そこは、精神障害者、知的障害者、認知症老人、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者など、一般懲役工場での作業はとてもこなせない受刑者たちを隔離しておく、「寮内工場」と呼ばれる場所。この寮内工場での私は、刑務官の仕事をサポートする指導補助という役目を命じられていた。障害を抱える受刑者たちに作業を割り振り、日常生活においても、その介助をするという仕事だ。(序章「安住の地は刑務所だった」)
目次
序章 安住の地は刑務所だった―下関駅放火事件
第1章 レッサーパンダ帽の男―浅草・女子短大生刺殺事件
第2章 障害者を食い物にする人々―宇都宮・誤認逮捕事件
第3章 生きがいはセックス―売春する知的障害女性たち
第4章 ある知的障害女性の青春―障害者を利用する偽装結婚の実態
第5章 多重人格という檻―性的虐待が生む情緒障害者たち
第6章 閉鎖社会の犯罪―浜松・ろうあ者不倫殺人事件
第7章 ろうあ者暴力団―「仲間」を狙いうちする障害者たち
終章 行き着く先はどこに―福祉・刑務所・裁判所の問題点
解説・江川紹子

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