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短編 怪談

這い上がる手

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それじゃぁ…これは夢の話なのですが、俺が今まで見た怖い夢ベスト10に入る程怖かったので。

745 名前:由美(ネカマ1号機) 投稿日:03/03/06 13:44

この夢を見たのは去年。

俺はその時ある寮に住んでいたんです。

そしてその夜見た夢は自分が住んでいるその部屋そのものでした。

部屋の配置など全て現実と同じ。家具もなにもかも同じ。

そこで何をしていたのかというと、ベッドで寝ていたのです。

これでは夢と気付くはずもありません。

以下、その夢の中の出来事です。

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俺はふと目が覚めました。

まだ目は開きません。

それでも瞼に当たる光が感じられないことから、まだ夜中であると思いました。

寮の前の外灯の光が部屋の中に入ってきているだけ。

それはいつものことで特に気にもとめませんでした。

ただ、何かいやな予感がする。

すぐ側まで何か得体の知れないものが近づいてきている…そんな感じです。

それでも俺は気にせず眠ろうとしました。

746 名前:由美(ネカマ1号機) 投稿日:03/03/06 13:44
寝返りを打ってじっとしていると、ベッドの脇の下に何か気配を感じます。

「部屋の中に何かいるのか…??」

そう思いましたが、鍵をきっちりかけて寝ている俺は気のせいだと思いました。

気配を感じながらも段々と眠りに落ちていく俺、しかし、完全に眠る間もなく、布団の上から足に何かが触れたのです。

決して大きな力ではないのですが、はっきりと分かりました。

「あァ!?」

いるはずのない侵入者に眠りを妨げられ、俺は反射的にキレました。

布団をバっと払って起き上がると、その感触のしたほうを見ました。

「何か…いる…」

ベッドが少し高かったからか、ベッドの上からでは微妙にそれは見えません。

ただ何かが這っている音がする…。

覗けばそれで済むのでしょうが、三面が壁に密着しているベッドでは逃げ場がないため、覗く勇気がありません。

ただそれが自ら正体を現すのを待つだけです。

蠢いているものはさほど速度は速くなさそうで、イレギュラーな動きをしているようです。

俺は、「ベッドの脇から動かないのはこのベッド上に用があるからに違いない。」と本能的に思いました。

かたずを飲んでそれを待っていると、何やらちらちらと見えだしました。

ただでさへ薄暗い部屋の中。外からの外灯もそこにはギリギリ届いていません。

外灯はちょうどベッドの端から上にかけて入ってきているのです。

それでもちらちらと見え出したものをじっと見てみると、毛は生えていない生き物のようでした。

「何にせよ、こんな夜中に現れる意味不明の物体が人間であるはずがない…現れた瞬間仕留めるか…」

そう思って待っていると、とうとうそれの一部がはっきりと分かるように見えたのです。

その瞬間、仕留めようとしていた俺は硬直しました。

それが赤ん坊の手のように見えたのです。

ベッドの上に這い上がろうとしているように、ベッドに手をかけたように見えました。

ベッドの上は外灯の光が差込み、例外なくその手を照らしています。

その手は赤黒く、何やら粘液のようなものがまとわり着いているようです。

俺は触れたくありませんでしたが、本体がベッドに上がってこられたら困るので、その手を蹴りました。

でもたったそれだけでその生き物が諦めるはずもなく、まだ蠢いています。

そして間もなく、再び手がベッドの上に出てきました。

どうやらこのベッドに上ろうとしているのは間違いないようです。

そして再び手を蹴り落とす俺、そしてまた現れる手…。

そんなことを繰り返しているうちに、その本体は学習能力があるようで、手を払われてもすぐにベッドに上ろうとしてきます。

「ほ…本体は…」

やはり本体を叩かねばだめかと思い、本体が姿を現すの待ちます。

片手だけだった手が両手になり、何やら薄黒いものが上ろうとしてきます。

その形は明らかに赤ん坊でした、しかし、やはり体にも粘液をまとっているようです。

その本体が体半分ほど上ってきたところで、俺はベッドの上で立ち上がり、思いっきり蹴り飛ばしました。

ゴミ箱のところまで吹っ飛ぶそれ。

どうするかと見ていると、体勢を立て直して、再びゆっくりとこちらに這ってきます。

顔は分かりません。

ただ…その色と粘液から、どことなく腐っているような感じをうけました。

そのときの俺には「腐った赤ん坊が俺に何かをしようとしている!」という恐怖しかありません。

再びベッドに近寄ってきたそれを今度は玄関のほうに蹴り飛ばします。

ベッドの上という不安定さと、素足で蹴る気持ち悪さとでなかなか全力で追い払えません。

困っていると、部屋の中に持ち込んでいた靴を思い出しました。

「そうだ…」

その赤ん坊がベッドまで戻ってくる前に、俺は素早くその靴を持ってベッドの上に上がり、その靴をはきました。

紐をしめその赤ん坊に立ち向かいます。

ベッドに上がろうとしたそれを蹴り落とし、さらにベッドから降りて玄関へと全力で蹴り飛ばしました。

何とも言えない…水を吸った布を蹴るような感覚…。

それは廊下をすっ飛んでいき、玄関のドアに直撃。

「ふぅ…怖かった…」

と思っていると、それは再び体勢を立て直してこちらへと向かってきます。

決して早くもないし、力強くもない…だがそれに似合わないタフさがさらなる恐怖心をかきたてます。

「今のが…効いてない…!?」

さらに全力で蹴り飛ばす俺、それでも効かない。

どれだけ全力で吹っ飛ばそうとも、必ずこちらに向かって這ってくる。

近くに蛍光灯のスイッチがあったのを思い出し、蛍光灯をつける。

そうするとそれの形をはっきりと見ることになった。

それは一歳くらいの赤ん坊の形をしていて、髪などはなく、全身は赤黒くその色には少しムラがあり、俺の攻撃のせいか手や足が少し曲がっていました。

「……!!」

何にしてもそいつの動きを止めたかった俺は、すぐ横のキッチンに置いてあった長めの包丁を取り、

その生き物を掴みあげると壁に叩きつけて心臓の辺りに突き刺しました。

包丁はその生き物を貫通し、後ろの壁に刺さります。

これでこいつは生きていてもここから動けない。

自分のしたことに気味の悪さを覚えましたが、そうしてよかったようです。

その状態であってもそれは弱ることなく動き続けていたのです。

「…さて…どうしたもんかね。」

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ここで夢から目が覚めました。

目が覚めたとき、言いようのない後味の悪さを感じました。

蹴ったときの感触や掴んだときの感触が生々しく残っていたのです。

そしてその日、俺の足は筋肉痛になってました。

…これ、夢ですよね?

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