-
【小酒井不木 傑作選】死体蝋燭【ゆっくり朗読】
死体蝋燭(したいろうそく) 宵(よい)から勢いを増した風は、海獣の飢えに吠ゆるような音をたてて、庫裡(くり)、本堂の棟(むね)をかすめ、大地を崩さんばかりの雨は、時々砂礫(すなつぶて)を投げつけるよう ...
-
【小酒井不木 傑作選】卑怯な毒殺【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】卑怯な毒殺 病室の一隅には、白いベッドの掛蒲団の中から、柳の根のように乱れた毛の、蒼い男の顔が、のぞいていた。その顔の下半分には、口だけが孔あなとなって、厚い繃帯ほうたいがかけら ...
-
【小酒井不木 傑作選】愚人の毒【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】愚人の毒 1 ここは××署の訊問室じんもんしつである。 生ぬるい風が思い出したように、街路の塵埃ほこりを運び込むほかには、開け放たれた窓の効能の少しもあらわれぬ真夏の午後である。 ...
-
【小酒井不木 傑作選】闘争【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】闘争 K君。 親切な御見舞の手紙うれしく拝見した。僕は全く途方に暮れてしまった。御葬式やら何やら彼かやらで、随分忙せわしかったが、やっと二三日手がすいて、がっかりした気持になって ...
-
【小酒井不木 傑作選】ある自殺者の手記【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】ある自殺者の手記 加藤君、 僕はいよいよ自殺することにした。この場合自殺が僕にとって唯一の道であるからである。 断って置くが、僕は決して、最近死んだ某文士を模倣するのではない。世 ...
-
【小酒井不木 傑作選】死の接吻【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】死の接吻 一 その年の暑さは格別であった。ある者は六十年来の暑さだといい、ある者は六百年来の暑さだと言った。でも、誰も六万年来の暑さだとは言わなかった。中央気象台の報告によると、 ...
-
【小酒井不木 傑作選】ジェンナー伝【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】ジェンナー伝 一 いまからおよそ百五十年前のことです。英国南部のバスという市まちで、ある夜盛大せいだいな晩餐会ばんさんかいが開かれました。 集まったものは、政治家、実業家、医師、 ...
-
【小酒井不木 傑作選】痴人の復讐(ちじんのふくしゅう)【ゆっくり朗読】
痴人の復讐(ちじんのふくしゅう) 痴人の復讐 小酒井不木 異常な怪奇と戦慄とを求めるために組織された「殺人倶楽部」の例会で、今夕は主として、「殺人方法」が話題となった。 会員は男子十三人。名は「殺人倶 ...
-
【小酒井不木 傑作選】犬神【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】犬神 私に若もしポオの文才があったならば、これから述べる話も、彼の「黒猫」の十分の一ぐらいの興味を読者に与えることが出来るかもしれない。然しかし、残念ながら、私はこれ迄、会社員を ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(6)~紫外線【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(6)~紫外線 水銀石英灯 読者諸君は、塚原俊夫君の取り扱った「紅色べにいろダイヤ」事件というのを記憶していてくださるだろうと思います。その事件を紹介する際、私は俊夫 ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(5)~白痴の知恵【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(5)~白痴の知恵 魚釣り 塚原俊夫君が、魚釣りを好むことは、これまでまだ一度も皆さんに紹介しませんでしたが、俊夫君は、かつて動物学を修めたとき、ことに魚類の解剖と生 ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(4)~頭蓋骨の秘密【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(4)~頭蓋骨の秘密 山中の骸骨 実験室の前の庭にある桐の若葉が、ようやく出そろった五月なかばのある朝。塚原俊夫君が「Pのおじさん」と呼ぶ警視庁の小田刑事は、珍しくも ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(3)~髭の謎【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(3)~髭の謎 博士の死 それは寒い寒い一月十七日の朝のことです。四五日前に、近年にない大雪が降ってから、毎日曇り空が続き、今日もまた、ちらちら白いものが降っておりま ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(2)~暗夜の格闘【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(2)~暗夜の格闘 白金塊はっきんかいの紛失 紅色ダイヤ事件の犯人は、意外にも塚原俊夫君の叔父さんでしたから、悪漢の捕縛を希望しておられた読者諸君は、あるいは失望され ...
-
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(1)~紅色ダイヤ【ゆっくり朗読】
【小酒井不木 傑作選】少年科学探偵(1)~紅色ダイヤ 謎の手紙 これから皆さんに少年科学探偵塚原俊夫つかはらとしお君を紹介します。俊夫君は今年十二ですけれど、大人も及ばぬ賢い子です。六歳の時、三角形の ...
-
【小酒井不木 傑作選】国際射的大競技【ゆっくり朗読】
国際射的大競技 昨年オランダに開かれたオリンピック大会で、わが日本選手が三段だんとびの第一等に入選したとき、私わたしたち内地の日本人がどんなに喜んだかは、おそらくまだ皆みなさんの記憶きおくにあらたなる ...
-
【小酒井不木 傑作選】恋愛曲線【ゆっくり朗読】
恋愛曲線【ゆっくり怪談】 江戸川乱歩の才能を早くから見出した探偵小説の先駆けであり、自身の医者としての知識経験、医学的見地から多くの作品を手がけている。 『恋愛曲線』は1926(大正15年)1月号の新 ...