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中編 洒落にならない怖い話

闇の中【ゆっくり朗読】2500

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高校二年の頃、俺は荒れていた。

2004/03/01 22:49

楽勝と思われた県立高校の受験に失敗し、低レベルな私立校に通うはめになったからだ。

地方の小都市でのその種の挫折は、都会では想像がつかないほどの敗北感をもたらすものだった。

立ち直れないまま入学したDQN高には、やはり各種DQNが集い、俺も朱に交わって、立派なDQNになっていった。

夏休み、俺はDQN仲間三人と真夜中のドライブに出かけた。

勿論、免許を取れる年齢ではなかったが、一応運転はできたので、親が田舎に行った留守を狙って、家の車を持ち出したのだった。

顔見知りに見られたらまずいので、用心して人のいない方へいない方へと車を走らせていくと、やがて町はずれの寂しい場所に出た。

街灯もろくになく、暗く細い道を適当に流しているうちに、古びた神社の跡を発見した。

ライトで照らすと、鳥居も小さな本殿もボロボロで、石段には苔が生え、見るからに薄気味悪かった。

しかし、そこはDQNの見栄で、「心霊スポットかも。おもしろそーじゃん」と、わざとはしゃいで探索し、境内を走り回ったり、建物の隙間をバキバキ広げたりした。

やがて田中(仮名)が、裏手の木立で一本の剣を見つけた。

幹に刺さっていたという。

剣と言っても、柄は腐ったのか一部しか残っておらず、一枚の刃といった方が正しいような代物だった。

しかし、手に持つとずしっとくる質感に、阿呆の田中は、「お宝鑑定団に出したら、案外値打ち物かも」とか言い出し、その剣を自分のリュックにしまい込んだ。

俺はいくらDQNに成り果てたとは言え、信心深いおばあちゃんに育てられたので、

「こういう場所から、物を持ち出すのはやばくねえか?」と一応言ってみたが、

「おまえ、なにびびってんの?」と半笑いで言い返され、それ以上は言えなかった。

そのうちに探索にも飽き、俺達は神社跡を出た。

ところが、十分ほど車を走らせた頃、突然車がガタガタ揺れ始めた。

まるでオフロードを走るような激しい揺れ。

いくら田舎でも道は舗装されていたので、もしや故障かと車を停めた。

すると後部座席のヤツらが「わぁーーー!!」とわめき始めた。

ガタガタ震えながら横の窓を指さしているので、見るとそこには、真っ白な無表情な顔をした人間が、数人立っていた。

いや……人間というより、亡者といった方がふさわしいのだろう。

全員白装束で、その目つきは、とてもこの世のものとは思えない。

やつらはガラスに掌をぺたっとくっつけて、車を揺すっていた。

俺達が固まっているうちに、亡者はどんどん増えていく。

やがて車は亡者たちに囲まれてしまった。

車の揺れはますます激しくなっていく。

「なんだよーこれー」

助手席の田中が泣き出した。他のヤツらもべそをかいている。勿論俺も。

真っ暗闇の中、白く浮かぶ無数の亡者たちが、そんな俺達を見つめている。

そして信じられないことに、車の揺れに合わせて、四つのドアのロックがずり上がり始めた。

このままだとドアを開けられてしまう。

いや、亡者ならば次の瞬間、ドアをすり抜けて入ってくるかもしれない。

物凄い恐怖に心臓が止まりそうだった。

その時、地の底からのような低い声が聞こえた。

「かえせーかえせー……」

返せ?何を?決まってる。田中が持ち出したあの剣だろう。

「田中!さっきの剣、返してやれっ」

俺は叫んだ。

田中はガクブルしながらも、リュックから件の剣を取出した。

その途端、それまで無表情だった亡者たちは、いっせいにニヤっと笑った。

そして、田中のそばのドアがバンッと物凄い勢いで開き、剣をつかんだ田中の手を、亡者たちがぐいぐい引っ張り始めた。

「あーーーー」

田中が悲鳴を上げた。

もう「助けて」という言葉さえうまく発音できないようで、首を俺の方に巡らし、必死なまなざしを向けてくる。

助けなければ……とは思っても、田中に触れたら俺も一緒に引っ張られてしまうと思うと、どうしても身体が動かなかった。

そして田中は、闇の中に飲み込まれていった……

バンッと、ドアが開いた時と同じく、勢いよく閉まった。

俺達はしばらく動けなかった。

何も言えなかった。

「……田中は?どこに行った?」

その声に我にかえって、あわてて窓の外を見たが、亡者も田中もかき消すように消えていた。

外は相変わらずの暗闇。何もなかったかのような静寂。

「どうするよー」

俺は残る二人に問いかけたが、あの神社に戻ってみようとか、田中を捜しにいこうとか、そんなまともなことは言えなかった。

怖くて怖くて、一刻も早く、生きた人間たちのいる町に帰りたかった。

そして俺達は逃げたのだ。その場所から。

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その後、田中の行方はわからない。

田中が家に戻らないということで、担任から電話があっていろいろ聞かれたが、俺達は口裏を合わせて、「夏休みに入ってから会っていない」とシラを切り通した。

すべて話しても信じてもらえる自信はなかったし、無免許運転がばれ、処分を受けるおそれもあった。

もう何も思い出したくないという怯えもあった。

俺達はそれ以上は追及されなかった。

もともと田中は継母との折り合いが悪く、リア厨の頃から家出まがいのことを繰り返していたので、また家出だろうという結論になったらしい。

何より、継母も担任も熱心に捜す気がなかったのだろう。

形ばかりの捜索願が出されただけに終わった。

それ以降、残った俺達はつるむことをやめた。

共通の秘密と罪悪感は、かえって俺達の間に距離を生んだ。

目を合わすことさえ、避けるようになっていった。

俺はそれから必死で勉強した。

その町から離れたかったのだ。

念願かない、東京の大学に合格した俺は、その後一度も帰っていない。

しかし、忘れてはいない。忘れようとしても忘れられない。

あの日、田中が引きずり込まれていった暗闇。

そして、その暗闇よりもっと暗い人の心……

田中を見殺しにした俺と、心配するふりはしても結局は田中を見捨てた、継母や担任の心の闇……

(了)

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