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中編 心霊

怒りのエンジェル様

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ある日のこと。教会の電話に、面識のない中学生からの電話があったらしい。

630 :神父の子 ◆/TT.ge0EVs :2007/11/07(水) 22:41:41 ID:a6IF0eir0

どうやら、複数人のグループで電話をかけてきたらしく、電話を受けた親父も内容の把握に困惑していた。

内容を簡潔に言えば、『エンジェル様を怒らせてしまったので、謝り方を教えてほしい』との事。

さすがの親父も、『エンジェル様を怒らせた』の意味がわからなかったが、俺がこっくりさんの別名だと説明すると、「なるほどなるほど」と電話全体の意味を理解したようで、次の日曜に、説教もかねて子供達を教会に呼び出した。

多少の興味もあり、日曜に俺も教会で待っていると、おどろいたことに先生と生徒四人の計五人でやってきた。

正直、この手の話に大人が噛んでくるとは思わなかったので、逆に先生に親父が怒られるのかも?と心配したが、どうやらそうではないらしい。

話を聞くと、先生もエンジェル様の被害者だというのだ。

若い女性の先生と四人の女生徒。

神妙な面持ちの先生を後ろに、女生徒の一人がエンジェル様を怒らせた理由を話し始めた。

放課後、教室でエンジェル様を四人でしていたところ、教室の見回りをしていた先生にみつかった。

急いでエンジェル様にお帰り願って終了しようとしたが、エンジェル様が思うように帰らない。

しびれを切らした先生が、強引に紙を奪って破いてエンジェル様を終了させてしまった。

それが一ヵ月ほど前の話で、それからずーっと、エンジェル様の呪いに四人は悩まされているという。

具体的には、風邪で高熱を出したり、車に轢かれそうになったり、夜に謎の気配を感じたりと、数え出したらきりがないほどの不幸な目にあっているそうだ。

親父は「エンジェルは神の意思を伝える神の子供だから、教会で心から謝れば怒りは必ず収まる」と話した。

少し聖書を読んで聞かせた後、女生徒たちは神に懺悔してエンジェルの怒りから解放された。

念のため先生の連絡先だけを教えてもらって、二時間ほどで帰っていった。

帰り際に女生徒たちは「体が軽くなった!」と、一ヵ月におよぶ永い呪いからあっという間に開放された。

教会の日曜日は忙しい。今日は異例のお客様もあったことで、かなり遅めの昼食になった。

俺は親父に、今日のエンジェル事件の真相を聞いてみた。

答えはわかっていたが、一応確認がしたかった。

答えは予想外のものだった。

「先生はかなりつらい状態だな……なんともならないかもしれない」

いったいあの先生になにが憑いているというのか?気になった俺は親父に詳しく聞いてみた。

キリスト教の考え方とは全く異質の考え方だが、親父いわく。

霊というのは単体で動いていることはほとんどなく、強い意志を持った霊を中心に、無数の霊で構成されていることが多い。

強い意志=霊長類なので、動物霊や虫などの霊を、単体で見ることはほとんどないのではないか、と言っていた。

人間同士の霊がくっつく時は、同じ意思を持った霊が合体することが多く、個人的な恨みを残して霊になったとしても、いくつも合体することで漠然とした恨みの塊になり、いわゆる成仏への道が完全に絶たれてしまうわけらしい。(個々が原初の恨みを解消できない)

脳を持たない霊魂は、霊になってまで達成したかった目的をいつまでも記憶できないので、どうしても漠然とした悪霊になってしまう。

神父がいうのも変な話だが、ほとんどの人間は死んですぐにお経などを聞かせたりすることで、この世そのものとの未練を断ち、成仏していくことが多いらしい。

生前に、『死んだら無になる』『死んだ人間はなにもできない』『幽霊などいない』という考え方の人も、幽霊になることは少ないと言っていた。

 

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先生には一つの強力な悪霊がついている。

その霊に吸い付けられる様に、様々な人間や動物や謎なものの霊が集まっているのだという。

「その強力な悪霊は、先生を不幸に貶めるだけの力も十分に持っている」

と親父は言っていた。

親父は後日、先生に電話で連絡して、教会に遊びに来るように自然に呼びかけた。

先生はやはりエンジェル様事件から、身近にポルターガイスト現象のようなものが起こり始め、悩んでいると打ち明けてくれた。

それは前回生徒たち来た後も、変わらず続いているらしい。

一番相談したかったのは先生だったのだ。

親父は先生に、「この世に幽霊など存在しない」と説教をはじめ、まさしくキリスト教の司祭としての説教を始めた。

これには正直驚いた。

親父の口から『幽霊が存在しない』などという言葉は、聞いたことがなかったからだ。

その後も先生は仕事終わりに何度も教会に顔を出すようになり、親父の説教を熱心に聞いていた。

だが、「ポルターガイスト現象は一向に収まらない」と、悲痛な面持ちで泣きながら話していた。

先生が通い始めて一ヵ月。シビれを切らした俺は、親父になぜ先生を除霊してやらないのか聞いてみた。(わかりやすく伝えるために、除霊と書きます)

親父はやれやれといった顔をしながら、「先生に憑いているのは、自分本人の生霊だ」と答えた。

親父いわく、「生霊はもっともタチが悪く、払うことはほぼ不可能」

しかも、自分自身の生霊をまとってしまうと、最悪自殺してしまうことが多いらしい。

生霊も霊なので、ほかの霊を吸収する。

しかし、原初の意思をいつまでも持ち続けることが多いので、(意思の発信源が生存しているため)その霊の大きさ(物理的ではない)は、死者の霊とは比べ物にならない。

先生は、極度のマイナス思考、自虐体質、もしくは、人に言えない悩みを抱えている、自分に嫌悪を抱いている、可能性があるらしい。

それが『エンジェル様の呪い』という暗示をきっかけに、自らの力でポルターガイスト現象を引き起こしてしまっている。

若い子供などに多い現象だが、(自分の顔が嫌いだとかが原因)恋をしたりすることで改善する、よくある現象だと教えられた。

「霊の存在は真実だが、それを誰もが認識する必要はない」と言っていた。

神父が説く、『知らぬが仏』というやつである。

最後に親父は、「正直、先生を救うのは難しいかもしれない」と言った。

それから先生は何度も教会に足を運んでくれたが、ポルターガイストは収まることはなかった。

先生は病院で重度の鬱病と診断され、「学校を辞めて実家の田舎で養生する」と言って、それきり来なくなった。

何度か手紙が来たが、『ポルターガイスト現象は実家でも起こる』と書いてあった。

その後、音信不通になってわずか半年で、先生は自殺してしまった。

自殺した場所は、勤務していた中学校。

都会で教師になることに憧れて夢が叶ったのに、田舎に帰ったのがさらに追い詰めてしまったのだろうか?
と、俺は想像したが時すでに遅し。

自殺の一報を聞いた親父は、自分の無力さに朝の懺悔を昼までしていた。

 

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