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帰らないコックリさん|大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談16

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第16話:帰らないコックリさん

私は中学1年生の女子です。

これから、私達のグループが数ヶ月前に体験した、恐ろしい事件のことをお話します。

私のクラスでは、特に女子生徒を中心として、”コックリさん”とか”キューピットさん”等が流行していました。

やるのは放課後が多かったけれど、休み時間や、とにかく暇があればそれをして遊んでました。

コックリさん遊びの方法は簡単です。

一枚の紙に五十音の平仮名や神社の鳥居のマーク、それに”はい””いいえ”なんかを決められた場所に書くんです。

そして必要なのは一枚の”十円玉”。

この上にみんなの指を置くの。

十円玉は、みんなが聞きたいことを質問すると勝手に動きはじめるんです。

そして紙に書いた文字に順番に止まり、答えが文章になって返ってきます。

その答えは本当に当たっちゃったりなんかして、不思議でした。

だから余計に止めれなくなっちゃったのかなぁ。

私達がコックリさんに尋ねる内容は、いろいろありました。

時には、「S子さんが好きなのは誰?」とか聞いたりなんかもしました。

それで、その子の本当に好きな男の子の名前なんかでてきたら、もう大変です。

まわりの人たちがはやし立てたりしちゃうから。

まー、そんなふうに結構盛り上がる事もあるから、面白い遊びだったとは思うんだけど……私はもうやりたくないなぁ。

だって、もうあんな恐い思いはしたくないから……

いつもコックリさんを始めようと言うのは私の友人のT子とS美でした。

彼女たちは勉強はあまり得意じゃないんだけど、いつもクラスで行事なんかがあると積極的に動く子たち。

そんな明るい、人気のある女の子なんです。

私たちのグループはその子たちを含めた四人で構成されていました。

だけど一人だけ、みんなでコックリさんをやってても、決して仲間に入らない子がいたんです。

それはE子ちゃん。

彼女は勉強がよく出来る子でした。

彼女は、絶対にコックリさんとか、お化けの話には興味を示さないんです。

別に彼女だけがそうだっていうわけじゃないんです。

私だって、以前はコックリさんなんて信じてなかったんですから。

なぜって十円玉の上にはたくさんの人の指が置いてあるでしょう。

誰かが、故意に動かしたければ、動かせるじゃない。

はじめはそんなふうにその遊びを見てただけだった。

E子ちゃんも同じような事を言って、私がそれに参加する事を止めようとした。

でも、私の考えはあの日から変わったんです。

ある日突然、私の縦笛が学校でなくなったので、コックリさんに探してもらおうという事になったんです。

いつものように、コックリさんを呼びました。

すると、

「ニクミ……クリタ……ノ……ツクエ……アル」

って、出てきたんです。

ええーっ?と思いました。

だって、私は五組です。

どう考えても、他のクラスの人の所になんて……

でも、半信半疑に2組の”クリタ”という子の所に行ったら……

「さっき、音楽室の前で拾ったんで、後で職員室に届けようと思ってたところだったんだ」

というのです。

そうです、私の縦笛は本当に出てきたのです。

もう、私は信じるしかなかった。

つけ加えると、そのクリタという子、うちのグループでは誰一人面識はなし。

不思議だと思わない?

そしてコックリさんの回を重ねていくうちに、本当に自分の指が勝手に動くことが、何度もありました。

でも、「誰か、動かしてるんじゃない?」

と、まだ私たちを疑う人も周囲にはいました。

それでとうとう、リーダーのS美が怒り出しちゃったんです。

「そんならみんな、字が見えないように目をつぶればいいじゃん」

そういう事になってコックリさんをやっているみんなは目をつぶり、周りにいる回りで見てる人に字を読み取ってもらう事になりました。

そしたら、どうでしょう。

ちゃんと答えが返ってきて、驚く程いろんな事が当たったの。

周りの人間も、あっけに取られるしかありません。

それからというもの、私たちのグループだけにとどまってた”コックリさん”は有名になって、クラスのみんながやるようになっちゃったんです。

もう、大ブームでした。

果ては先生が注意するくらいになってしまいました。

そんなある日の放課後、私達はまたコックリさんを呼んでいました。

そもそもYという子のノートが見当たらないというので始めたのです。

その日はコックリさんを見るのが初めてという別のグループの女の子も一緒でした。

半信半疑の表情で、私たちの行動をじっと見つめていました。

そして、私たちのコックリさんは、

「ロッカー……ノ……ナカ……」

と示します。

すぐにYは掃除用具のロッカーを探しました。

すると、彼女のノートが見つかったのです。

「ね、すごいでしょう?」

S美が得意げに、そのグループの子たちに言ったんです。

でも、そのグループの一人が、

「インチキよぉ。ミエミエじゃん。

どうせこっそりYと言い合わせてやったんでしょ?そんなのありっこないよ」

と、口を尖らせて返しました。

そしたらT子とS美は口をそろえて、

「そんなこといったら、コックリさんが怒るじゃん!!」

と怒鳴りました。

これはコックリさんを降ろす者のルールなんですが、儀式が終わると必ずコックリさんを返さなければいけないのです。

もし、コックリさんを怒らしたり返さないでいると、そのまま、霊を家に連れて帰っちゃうのです。

最悪の場合、一生コックリさんが離れないときもあるらしいし。

それを怖れて、S美とT子は怒っているのです。

ともかく私達はコックリさんに帰ってもらおうとしました。

「コックリさん、ありがとうございました。おかえりください……」

するとコックリさんが”いいえ”を指し示すの……

もう一度、私たちは言いました。

「コックリさん、おかえりください……ありがとう……」

でも、どうしても私たちの指を置いた十円玉は、ズルズルと”いいえ”に行ってしまいます……

T子とS美は、血相を変えて、

「ほら、あんたたちのせいでコックリさんが怒っちゃったじゃん。早くあやまりなさいよ!!」

と怒鳴り散らす始末。

その場は険悪なムードになり、周りの連中が、ガヤガヤ騒ぎはじめました。

「コックリさん、ごめんなさい。どうぞおかえりください!」

何回も言いました。

でも、まだ「いいえ」というんです……

私は急に気分が悪くなりました。

そして最終手段。

みんなで周りを囲みました。

そして、悪口を言った子も含めて、一所懸命頼んだの。

「ごめんなさい。どうぞ、おかえりください!」

すると、とうとう帰ってくれたんです!

あの時の恐怖と言ったら、言葉で表現できるものじゃありませんでした。

やっぱり、いままで何回も奇跡のような事を起こしていた霊が、マジに怒って帰らなくなったらどうしようとか思ったから……

ところが、その事件をきっかけにして、コックリさんブームは、ますますはげしくなりました。

紛失物、帰り道選び、お天気、テスト、恋愛、なんでもコックリさんに聞いていました。

だけど優等生のE子ちゃんは相変わらずのってこないのよね。

私達のグループの中で、それがとても不自然に思えてきた頃……

「やっぱ親友ってさぁ、同じもの追いかけなきゃ、親友じゃないよね」

S美がE子ちゃんに、はっきりと言ってしまったの。

それをきっかけにして、E子ちゃんは私達のグループから離れていってしまいました。

始めはみんな、あんな奴って感じだったんです。

でも、やっぱり私達のグループにE子がいないと寂しかった。

彼女はおとなしいけど、要所要所で、大事な働きをしてくれる大切な存在だったから。

そしてある日、T子がこんな事を言い出したんです。

「ねえ、E子を私たちのグループに戻すにはさあ、やっぱコックリさんしかないよ」

そのアイデアは強引なものでしたが、E子がまた機嫌を直して帰ってきてくれるなら、それでいいと思ったんです。

彼女のアイデアはこうでした。

まず、S美が大切にしていたCDがなくなった事をE子ちゃんに伝える。

そして、私たちはE子ちゃんを疑っているそぶりを見せる。

というのも、そのCDはE子ちゃんも大ファンの歌手のCDですから。

それからE子ちゃんを誘い、コックリさんを始めるのだが、本当にコックリさんは呼ばない。

適当に儀式をしているようにするだけ。

最後に、あらかじめ用意しておいたCDをE子ちゃんにプレゼントするというものでした。

その放課後、T子が、帰ろうとするE子ちゃんを呼び止めた。

「E子ちゃん、やらないと、ホント犯人と思われるよ」

ほとんど無理矢理だったが、E子ちゃんを交えてコックリさんはスタートしました。

気持ちのこもらない声で、コックリさんを呼び、早速CDのあり場所を尋ねたんです。

すると、E子ちゃん、T子、S美、そして私の指を預けている十円玉が、ササッと動き、

「ウソダ!……ウソヲツクナ……!」

と示すの。

あまりに突飛な答えだったので、みんなしばらくア然としてた。

「まさか……ほんとに降りちゃってないよネ……」

そう小さな声で私が言った。

「え?」

E子はまるで状況を把握していないようでした。

あせったT子は話題を変えました。

「E子ちゃんはだれが好きなの?教えて?」

すると、

「オマエラ、ウソツキ!オレサマ、ウソ、キライ……」

と、私達の指が、いつもより数倍も早く紙の上を動くのです。

E子ちゃん以外はみんな、ガタガタ震えてました。

そして、私のひじから指先までの感覚がなくなっていったの!

まるで何者かに支配されているみたい。

みんなもそうだったのでしょう。

だって私と同じように顔が青くなっていたもの。

「ミンナキライダ。コロス……!」

どんどん指先の十円のスピードは増していきます。

「コロス!コロス!オレサマ、オマエラミナゴロシ!」

私たちは、もう半泣き状態でした。

そして、必死に

「おかえりください!おかえりください!!」

と頼むんだけど、十円は狂ったように、

「イイヤ!コロス!!」を何回も指すの!!

そしたら、急にT子が真っ青になって、バタンと床に倒れてしまったんです。

私たちはもう、泣くしかありませんでした。

そして、心の底からみんなでお願いするしかなかったんです。

「ごめんなさい、コックリさん。私たちが悪かったです。ごめんなさい」

すると、ピタッと急に十円が動くのを止めたの。

すると、ゆっくりと十円がまた動き、

”はい”の返事が……

私たちは胸をなで下ろすと同時にT子の事が心配になったんです。

「T子!!大丈夫なのぉ?!T子!!」

そしたら、T子は床からフッと起きたんです。

T子の目は焦点が定まってないようでした。

しばらく間を置いて、彼女はこう言ったの。

「モウ、オレサマ、ヨブナ……」

そう言ったかと思うと、彼女は正気を取り戻したんです。

そしてT子は私達を見て抱きついてきたの。

「夢みてるみたいだった。そこには大きな川が流れてて……その川の向こう岸には、キツネ目のおじいさんがぼーっと立ってたの。そのおじいさん、”おいでおいで”をするの。そしたらアタシ、とってもいい気分になって……それでね、川に入って行こうと思ったら後ろからみんなの声が聞こえてさ……パッと振り向いたら、目が覚めたの」

とT子は私たちに言いました。

ゾーっとしました。

やっぱり私たちの声がT子を振り向かせたのかな。

じゃあ、もし私達が声を出してなかったら、彼女、どうなってたんだろう……

嫌な事件だったけど、E子ちゃんとは仲直りできました。CDもとても喜んでくれたし。

それに、E子ちゃんはとても怖がりで、信心深い子だって事も分かった。

信じられない程、怖い体験だったけど、私たちのグループにはとてもプラスになったと思う。

もちろん、私たちあれから二度とコックリさんはやってないよ。こりたもん。

でもね、昨夜から、ほかのクラスのコックリさん好きの子が一人、帰らないって聞いたけど……

[出典:大幽霊屋敷~浜村淳の実話怪談~]

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