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短編 家系にまつわる怖い話

戦国城主の子孫

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俺の家には何もないが、趣味で郷土史研究やってので、聞き取り調査などで旧家、豪族や地侍の子孫を訪ねることもよくある。

547 :本当にあった怖い名無し:2013/09/05(木) 23:31:26.31 ID:dfFCqSc20

オカルトかどうかはわからないが、『不思議な話』は結構耳にする。

ある戦国期の城主の子孫を訪ねたときのお話。

御当主は亡くなっていて、六〇代の奥さんが迎えてくれた。

いろいろ古文書を見せてもらったが、女性だからかあまり自家の歴史に詳しくはなく、こちらにいろいろ聞いてきた。

ご主人も特にあまり話さなかったそう。

奥さんが、「だいぶ昔の話になりますが、こんな事があったんですが……」と話し始めた。

まだ子供がいない時に離婚の危機があったらしい。

するとある夜、夢を見た。

甲冑を着た武者と赤子を抱えた身分がありそうな女性が立っていて、こちらをじっと見つめていたそうだ。

そしてすべては聞き取れなかったが、

「……絶やさんでくれまいか……」

「……願い申さん……」

この二言は何度も言っていたので覚えていたそうだ。

まわりは明らかに時代が違う建物の部屋で、外からは時代劇の合戦シーンのような、鬨の声や音が聞こえていたらしい。

目が覚めると、あまりにリアルな夢だったのでかなり怖かったそうだ。

離婚も考えてる精神不安からあんな夢を見たのかな、と思ったそうだが、御主人にも言えずに毎日が続いた。

御主人とのギクシャクはすぐにはなくならなかったが、なぜか夢のことが気になりだしていた。

寂しそうな武者の時折強く懇願するような視線、奥方らしき人は赤子と奥さんをゆっくりと交互に見ながら優しく微笑んでいた。

「なんだったのだろう、あれは……?」

いつしかギクシャクも薄まり、夢のせいかはわからないが、奥さんは自分の子供が欲しいと思い始めたらしい。

そのうち長男出産、二年後には次男出産……そして退院した産後間もない頃、再びあの夢を見たのだ。

以前と変わらない景色。しかし今度は静かだったそうだ。

武者と女性は何も言わずただただ嬉しそうに微笑んで。

俺は話を聞いていて途中から鳥肌が立っていた。

奥さんの話が終わると、少し落ち着いてから俺は説明しはじめた。

○○家の先祖は、敵に攻められ落城する前に一子を家臣数人に託し落ち延びさせていた事。

そして土着したのが、現在の奥さんが住んでいる所から近い場所で御主人はその直系である事。

その二人はもしかして、落城で自害したといわれる城主の○○と奥方ではないか?

奥方が抱いていたのが、落ち延びさせた御主人の先祖ではないか?

女性には奥手だったらしい御主人が再婚できない事も考え、子孫が絶えないように、奥さんに離婚を考え改めるように訴えに来たのでは?と。

先祖に起こった出来事を初めて詳しく知った奥さんは、少し困惑しながら

「……そうかもしれませんね。いや、きっとそうだと思います」と言った。

二人のお子さんは、今ではそれぞれ家庭を持ち、お孫さんもいらっしゃるとか。

俺が聞いた歴史にまつわる不思議な話。

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